従事時間7割・動員人数9割減を実現
経営所得安定対策の一環として、毎年全国で行われている作付調査。申請された作物と実際に栽培されている作物が一致するかは、行政職員が直接現地に出向いて確認しており、現場では大変な労力が割かれています。
新潟市西区の場合、これまで確認作業に約2週間をかけて延べ約180人を動員して調査が行われてきました。そこで2019年度の調査では、株式会社スカイマティクスが開発した作付け確認システム『いろはMapper』を全国で初めて導入。水田の転作として枝豆やそら豆の栽培が盛んな地区約1200haの農地を高度120mの位置から1.7cm以下の解像度で撮影し、調査に活用したところ、従事時間は7割削減に成功。関わる人員は9割も削減することができ、システムの有用性が実証されました。
「これまでの調査では、市やJA職員が案内役の農家が運転する車に同乗して1カ所ずつ確認していました。事前に転作情報等が記載された紙を各農家に配布し、農地に立て札として立ててもらうのですが、配布枚数は6500枚にも及びます。また、集落との日程調整も必要なため、調査前の準備だけで一苦労。とても負担の大きい仕事でした」。
そう振り返るのは、新潟市西区役所 農政商工課 農業振興係主査の荒川俊也さん。『いろはMapper』ではドローンで撮影された画像が位置情報に応じてマッピングされるため、担当者がパソコン上で画像を確認するだけで作業は完了します。「集落説明会で『いろはMapper』による調査を説明したところ、農家自身の負担もなくなるので、実施に賛同していただくことができました」(荒川さん)と、『いろはMapper』は行政職員、農家双方にメリットのあるツールになっています。
さらに効率化した2年目。AIの活用にも挑戦
初年度で生まれた手応えをもとに、西区は2020年度も導入を継続。前年度よりも撮影時間が短縮する結果となりました。「1年目の経験を生かして事前に飛行プランを作成し、補助員を1名増やしたところ、天候に恵まれたこともあり、10日間予定していた撮影が3日間で完了しました」と語るのは、ドローン撮影を担当する森山環境科学研究所の森山誠検査技術部長。撮影した画像をリアルタイムで地図上に表示させることにより、逐一撮影の進捗を確認できるようになるなど、技術的な進化にも目覚ましいものがあります。
さらに同年度、西区ではドローンで撮影した画像から作付けされている作物の品目をAIで判別する新たな試みを行っています。将来的には申請作物と異なる作物が植えられている農地を自動で抽出したり、耕作放棄地を特定してアラートするなど、作付調査をより有益にするような解析技術の開発に期待が寄せられています。
全国の農政を助けるシステムに
メディアにも取り上げられるなど注目を集めている『いろはMapper』。関心を寄せる自治体も多く、今年は東北の自治体でも試験導入が決まっています。荒川さんによると「時間や人手を減らせたことで、残業時間が大幅に減り、他の事業をサポートする余裕が生まれました」と、業務効率化への貢献の大きさを実感しているそうです。
システムを開発している株式会社スカイマティクス 執行役員セールスディレクター伊達卓馬さんは、「作付調査は経営所得安定対策に取り組む地域において実施される業務です。地域によって事情が異なる点は留意しています。『いろはMapper』では農地ごとの作付情報をShapeファイル等のデータでご提供頂くのですが、GISの導入状況は自治体によりさまざまです。現在、全国自治体へのヒアリングを実施しておりますが、各地のさまざまな事情に対応できることを念頭にサービスの開発に取り組んでいきます」と話します。
農地の見回りを効率化するツールとしても使えるなど、たくさんの可能性を秘めている『いろはMapper』。行政職員から農家まで、農業に携わるすべての人にとって頼もしい援軍になるはずです。
【問い合わせ先】
株式会社スカイマティクス
〒103-0021 東京都中央区日本橋本石町4-2-16 Daiwa日本橋本石町ビル6F
MAIL:info@skymatix.co.jp
【事業内容】
産業用リモートセンシングサービスの企画・開発・販売を行う。『いろはMapper』のほか、葉色解析サービス「いろは」やドローン計測サービス「くみき」、AI礫判読システム「グラッチェ」などのクラウドサービス、AI米粒等級解析アプリ「らいす」を展開。
【ご検討のお客様へ】
作付面積や農地に関するデータの整備状況などをヒアリングした上で、状況に即した導入プランをご提案します。まずはお気軽に上記よりお問い合わせください。