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栽培方法にこだわり、おいしさをとことん追求
現在、温州みかんの収穫量は国内で年間約80万tといわれ、その1割にあたる8万tが和歌山県の有田(ありだ)地方で作られています。
今回、お話を伺った株式会社早和果樹園(そうわかじゅえん)は、そんな日本最大の生産地・有田の中で、ひときわ注目を集める存在。40カ所超、延べ8haのほ場を有する生産者(1次産業)であると同時に、加工(2次産業)や販売(3次産業)にも取り組む「6次産業化」で成長を続けています。
「昭和54年に7戸のみかん農家で立ち上げた『早和共撰組合』が『早和果樹園』の前身です。平成12年に有限会社として法人化を果たし、平成17年には株式会社に。現在は、自社園地で栽培した温州みかんと地域の農家のみかんも集荷して、ネット通販をはじめ、豊洲市場や新潟の青果市場にも出荷しています。また、加工用でも、自社生産と有田地域から集荷したみかんを使用し、年間で約1200tを加工しています」と話すのは秋竹社長です。
昭和40年代にみかんの価格が暴落した時期があり、それを機に改めて「おいしいみかん作り」について考え始めたことが起点になったといいます。
「平成14年にはおいしさを分かりやすく数値化するために糖度や酸度を測る光センサー選果機を導入しました。それと並行して地面をシートで覆うマルチ栽培に取り組み、みかんの水分管理に注力します。その後は、ドリップ潅水で適切な水分や肥培管理が可能な『マルドリ方式※』を導入し、試行錯誤を繰り返す中で天候に左右されにくい栽培技術を確立し、大幅な品質アップと甘くておいしい『まるどりみかん』のブランド化に成功しました」と笑顔で話す秋竹社長。
さらに「おいしいみかん作り」を追求し、平成23年にはICTを活用した農業にも着手します。収穫記録や作業情報などをシステム管理することで、熟練者の経験やノウハウが可視化され、栽培技術や経営計画が飛躍的に進化したと話します。
※『マルドリ方式』は、近畿中国四国農業研究センターが開発した技術です
経営の安定化を目指し、6次産業化を決断
市場では同社のみかんのおいしさが評判に。しかし、早和果樹園の挑戦はとどまることを知らず、当時社長だった秋竹会長の英断で生産・加工・販売を手掛ける「6次産業化」へと舵を切ります。
「天候に影響を受けるみかんの販売だけでは、どうしても経営は安定しません。そこで加工部門を立ち上げて『みかんのおいしさをそのまま生かす商品を開発しよう』と決めました。しかし、私たちはみかん作りのプロであっても、加工は素人。そこで最初からご指導いただいたのが、包装容器や充填装置などを販売する日硝実業株式会社さんです」と、秋竹会長は振り返ります。
ジュース作りで特にこだわったのが「みかんを食べているかのような味わい」の追求でした。一般的な皮ごと搾ったみかんジュースとは一線を画す「チョッパー・パルパー方式」を採用。人の手で皮をむいてから薄皮ごと裏ごしするように搾る製法で、まさにみかんそのものの味わいを実現します。
「ガラス瓶やラベルといった包装容器をジュースに採用いただいたのが、ご縁の始まりです。お客様の事業が成長するのに合わせ、ボトルへの充填設備や熱殺菌設備などを納入しています。さらに、選果したみかんを自社で搾汁するための加工施設の立ち上げでは、次の収穫までの限られた期間に設備を導入する必要がありました。そこで、機械メーカーとお客様の間を取り持ち、納期コントロールに尽力しました。当社にとって初めての挑戦も多く、まさに早和果樹園様との二人三脚での開発になりました」と語るのは、日硝実業の営業担当である廣瀬さんです。
平成16年に糖度12度以上のみかんをこだわりの製法で搾った『味一しぼり』が誕生します。「大切に育てたみかんそのままをパッケージでも表現したい」という要望に対し、日硝実業は徳利のようなデザインの丸型ガラス瓶を提案。色鮮やかなジュースを詰めたボトルと手作り感のあるラベルというパッケージは、早和果樹園のブランド作りに大きく貢献しました。
みかん作りへの思いやこだわりを伝える地道な試飲販売を通して、「有田みかんを凝縮したような、濃厚なのにすっきりした味わい」と「特徴的なかわいいボトル」が徐々に消費者の心をつかみ、『味こいしぼり』へとその名を変えた今もみかんジュース界の革命児として多くのファンを獲得しています。
売れるパッケージから加工設備までプロに相談
『味こいしぼり』の成功を受け、糖度11度以上の『味まろしぼり』や気軽に飲んでほしいと開発した『飲むみかん』など、ラインナップを広げた早和果樹園のみかんジュースはお土産や贈答品として人気があり、年間数百万本を出荷するまでに。
「昨年は消費税率の変更や食品表示法の改正への対応もあり、秋竹社長とともにパッケージの刷新を急ピッチで行いました。また、通販の拡大を受けた輸送コストの圧縮や、環境面での貢献のためにボトルの軽量化も進めました」と日硝実業の廣瀬さん。
和歌山県などの小売店や観光地での試飲から始まった早和果樹園の加工品販売は、今や大都市圏の百貨店や全国のスーパーへと拡大。航空機内や高級ホテルでの提供など、BtoBの販路も開拓しています。現在、そのような新しい販路に合わせた「ブランドの再構築」にも力を注いでいます。
さらに、みかんという「資源」を、余すことなく使い切るために“ふくろ(じょうのう)”を使った『おふくろスムージー』や、乾燥させた皮を活用した『みかん七味』など、新商品の開発にも取り組んでいます。
「加工用みかんの価値を高めれば、産地内のみかん農家さんとの共存共栄が可能です。それがみかん農家の生産意欲に火を付け、刺激を受けた若者が新規参入してくるような産地全体の活性化を私達は目指しています。そのためには加工品の“売れるブランド作り”が不可欠です。今後も日硝実業さんにはパッケージや製造設備の専門家として、客観的な視点でディスカッションやアドバイスをどんどんしてもらいたいですね」と秋竹社長が取材を締めくくってくれました。
取材にご協力いただいた秋竹会長が2020年に出版した『日本のおいしいみかんの秘密 農業6次産業化による奇跡の復活』(出版社・PHP研究所)を抽選で20名様にプレゼント!
当社のウリはココ! |
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[問い合わせ先]
日硝実業株式会社
〒532-0003
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