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農業経験の浅い生産者でも適切な潅水管理が可能に!
少子高齢化の影響などにより、農業就業人口は年々減少しています。このままでは食料生産力が維持できなくなると危惧されており、新規就農を促し、農業従事者の維持・拡大が喫緊の課題です。そのためには、農業経験の浅い生産者でも一定の品質・収量の農作物を確実に生産できる技術が求められています。
ヤンマーグリーンシステム株式会社では、新規就農者でもトマトの潅水管理が適切に行えるよう、トマト任せで潅水ができる、『自然給水栽培装置(以下、NSP)』 の販売を開始しました。
施設園芸での一般的なトマトの潅水は、培地にはわせた点滴チューブなどを使用しますが、天候や季節、トマトの成長段階などで、都度必要な潅水量は異なり、熟練した生産者でもトマトの潅水は難しいと言われてきました。ハウス内の環境データから潅水量を自動で設定できるシステムなどもありますが、最適な潅水管理を実現できているわけではありません。
「例えば、晴天が続いてトマトが活発に光合成を行うと、より多くの水を必要とするため、環境データから潅水量を決めることは間違いではありません。しかし、トマトが環境に反応するスピードに従来の潅水装置が追いつかなかったり、逆に必要以上の潅水を施してしまうこともあります。その点、『NSP』はトマトが水を吸い上げるのに応じて自動で給水するので、常に適切なタイミングと量で潅水ができるようになっています」と説明するのは同社園芸施設部の大川さん。
近年、天候が安定せず潅水管理が難しくなっています。『NSP』では、トマトが培地から水を吸い上げると揚水シートに生じる毛管現象で給液トレイから水が吸い上げられるため、生産者や機械が判断せずともトマト任せで潅水されるようになっています。
また、給液トレイには水位センサーが付いており、減った分だけ水が自動で足される仕組みなので、排水が一切なく、水や液肥の量も大幅に減らすことが可能です。
手元に栽培ベンチが移動。歩き回る作業負担を解消
ヤンマーグリーンシステムでは、新規就農者でも安定して生産できる施設園芸の技術だけでなく、農作業の省力化や自動化の技術開発にも取り組んでいます。
「イチゴは安定して収入が得られる作物ですが、果菜類の中でも労働時間が長いことで知られています。その労働負荷を少しでも軽減するため、栽培ベンチ自体が動くことで、生産者が定位置に留まって農作業が行えるシステムである『イチゴ移動栽培装置』を開発しました」と、動画を交えて解説するのは同社園芸施設部の大谷さん。
従来のイチゴ栽培では、土耕にしろ、高設にしろ、生産者がほ場を動き回って葉かきや収穫などの作業を行います。また、ほ場内を行き来する農薬散布も負担の大きい作業なのですが、この装置ではレールに乗った栽培ベンチが縦や横に移動してほ場内を循環するため、その経路に農薬を散布する装置を設置することで、農薬が噴霧される中をベンチが動いて防除作業を自動で行えます。
「導入いただくと生産者自身が動き回る必要はなくなりますが、イチゴの生産で時間のかかる栽培管理、収穫、パック詰めなどの作業がなくなるわけではありません。それでも定位置で動かずに作業ができることや農薬散布・潅水を自動化することで、労働負荷は確実に軽減します。また通路が不要になる分、同じ面積でも植付株数が約1.5倍になります」と大谷さん。
既存の施設にも導入が可能で、高齢化が進む産地や高効率な農業を目指す企業などから注目を集めています。
株元への直接送風で効率的な温度管理を実現
さらにイチゴに関しては、株元に温風や冷風をダイレクトに送り届けられる『断熱送風栽培槽』の開発を進めています。暖房の省エネ効果はもちろん、暑さに弱いイチゴの新しい栽培技術として期待されています。
『断熱送風栽培槽』は発泡スチロールでできた二層構造の高設栽培ベンチで、下部の通風ダクトから通風孔を通じて温風や冷風を株元に送り届けることが可能です。イチゴはクラウン付近の温度変化に敏感に反応すると言われているので、まさにエネルギー消費を抑えつつ、温度制御の効果を最大限得られる仕組みです。またCO2発生装置を接続することで、CO2の局所施用も同時に行えます。
「温風や冷風をうまく活用することで、例えば、これまで出荷ができなかった端境期にイチゴを収穫できるようになると考え、現在、実証試験を進めています。『断熱送風栽培槽』の機能を存分に生かせる作型を確立し、生産者の皆さんにお届けしたいですね」とテストを担う大川さんが笑顔で話します。
イチゴの出荷が極端に少なくなる夏季に出荷ができるようになれば収益アップが期待できますが、設備費が増大しては逆に経営を圧迫することにもなりかねません。そのため、『断熱送風栽培槽』は一般的な高設栽培の架台に設置できるように設計されています。
先に紹介した『NSP』や『断熱送風栽培槽』は、経験の浅い新規就農者はもちろん、既存農家にも無理なく取り入れられる栽培システムとして開発しています。産地の活性化や課題解決への取り組みに、施設園芸での新しい栽培システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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