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農家が教えるアスパラガスの育て方 1年目の正しい管理や収穫のタイミングは?

鶴田 祐一郎

ライター:

連載企画:農家が教える栽培方法

農家が教えるアスパラガスの育て方 1年目の正しい管理や収穫のタイミングは?

アスパラガスは新芽を収穫するので比較的病害虫の被害が作物へ響きにくく、一度植え付けると何年も収穫することができる特殊な作物です。植え付ける場所は、その後10年近くアスパラガスに専有されることを念頭に、畑の隅を選んでおき、毎年収穫できる新芽を楽しみましょう。

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以下の栽培カレンダーに沿って解説していきます。

アスパラガスの土づくり

アスパラガスは、一度植え付けたら10年間ほどその場所で成長し、毎年収穫することができます。つまり、堆肥(たいひ)を畑に散布して耕すなどの土づくりは10年間あまりできないことになるので、10年分の土づくりと思って植え付けの1カ月前には気合を入れて終わらせましょう。
1平方メートルあたり、苦土石灰200~300グラム、堆肥10キロ、ようりん(ようせいリン肥)200グラムを深さ20~30センチくらいまで掘り上げてよく混ぜておきます。
植え付けの1週間前に、化成肥料を100グラム混ぜましょう。

アスパラガスの植え付け

アスパラガスは種から育てることも可能ですが、家庭菜園の場合は、園芸店で根株を購入し植え付けるようにしましょう。これだと2年目からの収穫が可能です。
また、土壌水分には非常に敏感で過湿に弱いため、露地栽培ではできる限りの高畝をおすすめします。
図のように20〜30センチほど穴を開けて真ん中を高くしておき、根株の根を四方に張り巡らせて植え付けます。根株の上に10センチ程度の覆土ができるようにしっかりと埋め込めば完成です。10年間栽培するのですから、丁寧に植え付けましょう。
畝幅は150センチあることが望ましく、2株以上植え付ける場合、株間は30センチ以上空くようにしましょう。

アスパラガスの1年目の管理

雑草管理

植え付け1年目は収穫がありません。しかし、放置していると次年度以降の収量が減っていきますのでしっかり管理しましょう。最も大切なのは草取りです。
暑い時期の草取りは大変なので、除草剤を利用することも考えましょう。トレファノサイドやナブなどの選択性除草剤(作物には影響を与えない除草剤)を利用することで雑草管理は大変楽になります。使わない場合は、敷きわらやもみがらを敷くなどし、草が生えないように心がけます。長期栽培なのにビニールマルチが使いにくいため、雑草管理が作業のほとんどになるでしょう。

立茎管理

春になり暖かくなると、地面からアスパラガスが生えてきます。1年目はこれを収穫するのではなく、しっかり太らせて来年以降の養分を蓄えてもらいます。
一株あたり10本をこえるようなら、できるだけ間隔が空くように10本以内に収まる本数まで間引いてしまいましょう。
また、茎は1.5メートルくらいの高さにまで成長するため、風で倒れてしまわないように支えておくことも大切です。支柱を約1メートル間隔くらいで立てておき、ひもで囲って倒れないようにしましょう。

追肥

アスパラガスの追肥は、6月に1回、夏が過ぎて9月に1回の計2回、化成肥料を一握り株元に与えましょう。

剪定(刈り取り)

寒くなってくると、地上部が全て枯れ上がっていきます。全体の8割以上枯れた頃からが刈り取り時期です。すべての茎を根元から刈り取ってしまいましょう。
しっかりと葉茎を茂らせていれば、養分がたっぷりと根株に蓄えられています。

アスパラガスの収穫

地域によってズレはありますが、4~5月頃が主な収穫時期です。うまく管理すれば9月頃の秋にも2回目の収穫期が訪れますが、慣れないうちは春のみの収穫をおすすめします。この時期はアスパラガスが萌芽して地上にニョキニョキと生えてきます。

25~30センチになったら収穫適期です。見逃さないようにこの時期は毎日チェックして、順次根元から刈り取りましょう。

茎が細くなってきたり、曲がりが多くなってきたり、また先端が開いてきた頃が収穫期間終了の合図となります。2年目の収穫期間は目安としては約10日間で終え、それ以降はそのまま茎を伸ばして次の収穫のための栄養を蓄えるために使いましょう。そうすることで3年目は20日間、4年目は1カ月と収穫期間を伸ばしていくことができます。
生えてくるからといって、茎が細くなっても取り尽くしてしまうと、養分を蓄えられずに次期の収穫が減ってしまいます。

アスパラガスの追肥(2年目以降)

収穫終了の6月頃から追肥を施します。一株あたり一握りをパラパラとまき、それ以降は10月までの葉が茂っている間、月1回程度を目安に大さじ1杯程度を与えます。
慣れてくれば、葉色を見て緑が薄くなってきたなと思った頃に与えれば十分(目安は6月と9月)なのですが、初めての場合はわかりにくいかと思うので、毎月少しずつ施肥することをおすすめします。元気に光合成をして養分を蓄えることで、収穫期にたくさんの芽が出てきます。草取り、水やりなどの管理も怠らないようにしましょう。

雑談ですが、実はアスパラガスの葉は緑色なのに光合成をしません。光合成をして養分を蓄えているのは茎の部分なんですね。なので葉に見えるヒラヒラしたものは、茎についている新芽を守っているだけで養分を生み出すことには直接的に関係していないのです。

アスパラガスの刈り取りと石灰散布

露地栽培では、放っておくと土壌中のpHが酸性に偏ってしまいますので、1年目と同じように11月頃、茎の刈り取りを行うと同時に、土壌改良として苦土石灰と堆肥を地表面にまいておきましょう。

アスパラガスの病害虫

アスパラガスにはさまざまな害虫や病気が発生しますが、収穫物そのものは、出てきてすぐに刈り取るものなので大きな被害にはなりにくいです。とはいえ、害虫に葉を食害されるとそれだけ蓄えられる養分が減少し、そのまま収穫減に結びつきます。オオタバコガやヨトウムシなどのイモムシは見つけたら捕殺、できれば6月から9月、大量発生する前にスプレータイプの殺虫剤を散布できるのが望ましいです。

病気で一番問題になるのが茎枯病。その名の通りアスパラガスが枯れてしまいます。何年もかけて育てる植物ですから、これだけは避けたいところです。葉が茂る前は、ベンレート水和剤を株元に流し込む、葉が展開してからはダコニール1000を散布することで防除することができます。どちらもホームセンターや園芸店で手に入る殺菌剤です。

そして、病害虫ではないですが、地域によっては野ネズミの被害が甚大で、これにかじられて枯死するケースもあります。1~3月の寒い時期に被害が多いのですが、発生する場所では、この時期を重点的に殺鼠(さっそ)剤を導入しましょう。

以上がアスパラガスの栽培になります。畑の隅にぜひアスパラを!

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