ニンニク栽培の特徴とは?最適な環境など
植物名 | 科名 | 原産地pH | 草丈 | 耐寒性 | 耐暑性 | 花色 | 開花時期 | 栽培期間 | 生育適温 | 土壌酸度 |
ニンニク | ヒガンバナ科 | 中央アジア | 50センチ | ○ | × | 紫 | 5~7月 | 9~6月 | 15~20℃ | 5.5~6.0pH |
ニンニクは中央アジア原産で、暑さに弱く冷涼な気候を好みます。日本国内においては、東北以北、特に青森県での栽培が多い作物ですが、関東や九州、四国でも栽培することは可能です。世界においては、中国産のものがシェアの80%を占めており、国産と比べて安価なため、見かける機会は多いでしょう。
ニンニク栽培は栽培期間が長く、畑の中で越冬を迎えるという特徴を持っています。そのため、畑の区画を長期間使用する必要があるので、面積の狭い家庭菜園の場合は他の作物と被らないように栽培スケジュールを作らなくてはいけません。さらに、好適土壌が少し低めなので土壌の調整にも注意が必要です。
また、ニンニクは比較的病害虫に強いと言われていますが、冬の寒い時期を乗り越え、暖かい春がやってくると一気に病気が広がることがあります。越冬前後の予防が大切なので、しっかり行いましょう。
植え付け時期は9月〜10月
ニンニクの種まき時期は夏の暑さが落ち着き、若干秋の風が吹き始めたころ、9月下旬くらいが適期になります。生育適温が15℃~20℃と低めなので、9月下旬でも暑さが残っている場合は少しずらしましょう。
暑い時期に種まきをしてしまうと発芽する前に、土中で腐ってしまうことも。暖地の場合は種まきが10月になっても十分収穫することができますが、ホワイト六片などの冷涼地域向き品種ではなく暖地栽培に向いた「平戸」などの品種もありますので、そちらを使うのもよいでしょう。
収穫時期は5月下旬〜6月頃
ニンニクは、5月頃から一気に成長を早め、6月頃には落ち着いたかと思うと、どんどん葉が枯れこみ始めます。地上部の葉が枯れ始めたら収穫時期の合図です。晴れが続き、土がよく乾燥した日の午前中に収穫し、引き抜いたニンニクを畑に置いて半日乾燥させてから保管します。
ニンニク栽培を始める前に知っておきたいポイント5つ
ここからはニンニクを栽培する上で、必ず抑えておきたいポイントを説明していきます。
それぞれ詳しく解説してきますので、ぜひ参考にしてください。
①寒冷地・暖地向けの品種がある
②スーパーで売られている食用ニンニクもそのまま植えられる
③種球は植え付け前に水に浸けるとよい
④過度な水やりや肥料は不要
⑤後作はトマトやナスがおすすめ
以上5つのポイントについて解説していきます。
寒冷地・暖地向けの品種がある
ニンニクには寒冷地向け・暖地向けの品種があります。それぞれ適した気候が異なるので、住んでいる地域にあった品種を選びましょう。
なお、寒冷地は北海道や青森・岩手・宮城など東北地方全域、暖地は九州南部や四国・中国地方の瀬戸内側などがあたります。ちなみに、関東は温暖地に区分されます。
寒冷地向けの品種
寒冷地向けの品種では以下のものが有名です。
・福地ホワイト六片
・ニューホワイト六片
・北海道在来
暖地向けの品種
暖地向けの品種では以下のものが有名です。
・上海早生
・島ニンニク
・平戸ニンニク
スーパーで売られている食用ニンニクもそのまま植えられる
ニンニク栽培でよくある疑問が、スーパーの食用ニンニクを植えても大丈夫?というもの。わざわざホームセンターで種を買うほどではないけれど、ニンニク栽培に挑戦してみたいという人もいるのでは?
実は、食用ニンニクもしっかり育ってくれます。種球を買うより割安なので、とりあえずやってみたいという人にオススメです。ただし、発芽が悪い可能性があるので、芽出ししてから植え付けるか、芽が出てしまったものを植えてみると良いでしょう。
なお、植え付け用に販売されている種球は消毒済みで、病気のリスクを抑えることができます。しっかり栽培したいという人は必ず種用ニンニクを使いましょう。
種球は植え付け前に水に浸けるとよい
ニンニクは敏感で、ただ土に植えただけでは芽が出なかったり、タイミングが揃わずまばらになってしまったりして、成長に多少ズレが生じてしまうこともあります。
発芽を揃えたい場合は、ニンニクの種球を植え付ける前に、一晩水につけると良いでしょう。また芽出しを行い、芽が出たもののみを植え付けても良いです。
過度な水やりや肥料は不要
ニンニク栽培において、注意しなくてはならないのが水やりと肥料の量。
ニンニクが成長する秋と春は、水切れしないようにしっかり水やりを行います。一方、ニンニクが休眠する冬では、地植えもプランターも水やりは基本的にはせず、土の深いところが乾燥するようであれば水やりを行います。
また肥料についても、ニンニクの肥大には肥料が必要ですが、与えすぎてしまうと逆に肥大が悪くなったり、奇形や病気に弱くなったりなど悪い影響が出ることも。過度な施肥は厳禁です。
後作はトマトやナスがおすすめ
6月にニンニクの収穫を終えたら、次は夏野菜の植え付けに挑戦してみましょう。
後作には、トマトやナス、キュウリやオクラなどの定番野菜がオススメです。
ニンニクは植物として土壌に与える影響が強く、栽培後の土壌菌を殺菌してしまいます。そのため、トマトやナスなどの作物を育てると、病気にかかりにくい効果があると言われています。逆に、ニンニクから放出された成分が、根粒菌など良い働きをする菌すら殺菌してしまうため、豆類など根粒菌と共生する作物は後作に向いていません。
ニンニク栽培の方法を地植え・プランターごとに紹介【カレンダー付き】
ニンニクの栽培方法について、地植えで育てる場合とプランターで育てる場合の両方を解説していきます。大まかな流れはどちらも同じですが、細かいところが違ってくるので、これから解説する方法をよく読んで挑戦してみてください。
ニンニクの土作り
◯地植え栽培の土作り
2週間前には1平方メートルあたり堆肥(たいひ)を2キロ混和しておき、種まき1週間前には化成肥料一握り(50グラム程度)を混ぜて畝を立てておきます。畝幅は60センチとし、高さ10センチ、株間は15~20センチあれば良いでしょう。長期間の栽培になりますので、マルチビニールを張っておくと草取りの手間が省けます。
また、ニンニク栽培の適正土壌はpH5.5~6.0程度と比較的低く、普段から栽培している畑では石灰の投入を控えてもよいでしょう。
◯プランター栽培の土作り
プランターは深さ25センチ以上の物を選びましょう。幅も60センチほどあれば十分ですが、栽培する量によって適当なサイズのものを使ってください。
培養土は市販の野菜用培養土を使うと簡単です。野菜用培養土には元肥が含まれているので、別途入れる必要はありません。
鉢やプランターに土を入れるときは、容器の底に土漏れ防止の鉢底ネットを敷き、その上に鉢底石を敷くようにします。こうすることで、雨が降ったときや水やりをしたときに、底から土が外へ流出することを防いでくれます。
ニンニクの種まき
ニンニクの種まきは、関東など温暖地では夏の暑さが落ち着いた9月下旬頃から10月上旬にかけて行います。
◯地植え栽培の種まき
事前に立てておいた畝に、株間15~20センチで植え付けます。園芸用支柱などを植えたい場所に刺し、深さ5センチほどの植え穴を作ります。先が細く尖っている部分を上にし、植え穴に押し込むようにして植え付けます。上から土をかけて軽く手で押し固め、たっぷり水やりします。
◯プランター栽培の種まき
土を入れたプランターに、株間10~15センチで植え付けます。プランター栽培でも、深さ5センチほどの植え穴を作り、ニンニクを植え付けます。注意点は地植え時と同じです。
ニンニクの追肥
ニンニクは、その小ささに対してかなり多くの肥料を必要とします。
ニンニク栽培において家庭菜園での失敗の最も多いものは、玉の肥大が悪いというものですが、単純に肥料が足りていないという場合が非常に多いです。特に、まだまだ玉が太っていない、冬を越す前の追肥が将来の玉の肥大に大きく影響します。
追肥のタイミングは12月と3月、忘れないように化成肥料を1平方メートルあたり一握り(50グラム)程度施用しましょう。
マルチを張っている場合でも、マルチの上からばらまけば雨でそれぞれの穴に流れ込み、多少のバラつきはあれどちゃんと効きますので必ず施用してください。
ニンニクの芽かき
1カ所に1片ずつしか植え付けていなかったはずなのに、芽が2本出てきている株が散見されると思います。これを2本立ちといい、生育を阻害しますので短い方を引き抜いておきましょう。引き抜く際は生え際の部分を手で抑えて、残す方を傷つけないように注意して引き抜きます。もしくは、ハサミで根元の部分を切り取ってしまいましょう。
ニンニクの収穫
ニンニクの収穫期を迎える6月頃になると、地上部の葉がどんどん枯れていきます。放っておくと地中でニンニクが腐ってしまうので、葉先が枯れ始めたら収穫してしまいましょう。
土が湿っている時に収穫すると、そこから雑菌が入り貯蔵中に腐ってしまう恐れがあるので、土がサラサラに乾いている時に採りましょう。良く晴れた日の午前中に収穫し、ひげ根と茎を10センチほど残して切り、その日は夕方頃まで天日で干します。
ニンニクの保存
収穫後、ひげ根と茎を切ったニンニクは、紐でまとめて風通しの良い日陰においておくと、1ヶ月ほどで乾燥します。紐で結ばなくても、ニンニク同士が重ならないようにしておけば大丈夫です。平たいカゴなどに入れて保存しておきましょう。
また、早めに使い切るのであれば冷蔵庫にしまっても構いません。新聞紙などで軽くくるみ、水気がつかないようにして保存します。
採れたてのニンニクは果汁が出るほど水分量が多く、雑に保存してしまうと腐ってしまうので注意してください。
ニンニクが大きくならない!失敗例や病害虫について
比較的栽培しやすいニンニクですが、栽培環境によっては球の肥大化が悪かったり、病害虫の被害に遭ってしまうことも。ここでは、よくある2つのトラブルを解説します。
とう立ちした芽を放置してしまった
トウ立ちした芽を放置すると、ニンニクの玉太りが悪くなってしまいます。
春になって暖かくなると、ニンニクの芽の中心、芯の部分から少し様子の違う茎が伸びてきます。これはニンニクの花で、この花を放置しておくと、せっかく肥料を与えて光合成で養分をため込んでいたニンニクは、その養分を花に優先して与えようとしてしまい、肝心の地下部の玉が痩せてしまいます。
手で簡単に折ることができるので、早めに摘み取ってしまいましょう。摘み取ったニンニクの芽は食べることができるので、捨てずに料理にすると良いでしょう。
病気の可能性がある時は殺菌剤を散布
ニンニクは比較的病害虫の少ない作物ですが、病気にならないというわけではありません。
越冬前の寒い時期に青々と健康そうな株の様子を見て、農薬を散布せずに春を迎え、暖かくなったら急激に病気があらわれ枯れてしまう、ということも十分にありえます。
2月頃からさび病や春腐れ病の菌が増えてくるので、手に入りやすい“ダコニール1000”や“ジマンダイセン水和剤”、徹底的に防除したい場合は、高価になりますが“アミスター20フロアブル”などで対応しましょう。日頃からよくニンニクを観察し、少しでも病気の可能性がある時は殺菌剤で防除をすることが大切です。
【Q&A】薄皮を剥いてそのまま植えてもいいの?
Q.薄皮を何枚か剥いていくと、実だけになりますがそれを植えても問題ないですか?
植える直前に薄皮を剥くのですか? それともあらかじめ前もって剥いておくのでしょうか?
A.薄皮を剥いて実だけの状態にすると、より水分を吸収し成長が早くなり、皮をつけたまま植え付けたものよりも、大きな球を収穫できると言われています。
しかしデメリットとして、実が乾燥しやすくなってしまうので、必ず植え付け直前に行い、剥いたあとは傷つけることのないように丁寧に植え付けましょう。
ニンニク栽培は早めの防除が大切
栽培期間が長く、自然と向き合う時間が長いニンニクは、家庭菜園向けの作物の中では、多少難易度が高いかもしれません。土作りから始まり、植え付け・水やり・追肥・農薬の散布など、1つ1つの栽培管理がとても大切です。
特に筆者が大切だと思うことは、病害虫の防除。長い冬を経て生命力が弱った株は、春になると病気が発生し、枯れてしまうことも。そうなってしまうと、これまでかけてきた長い時間も無駄になってしまいます。一見して健康そうでも、予防的な農薬散布が後々効いてきます。化学農薬だけではなく、天然成分配合の有機農薬もありますので、目的にあったものを選びましょう。
収穫したてのニンニクは、スーパーで買ったものとは味わいが全く違います。大変なこともありますが、筆者個人としては非常にオススメの作物です。ぜひ当記事を参考にして栽培してみてください。
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