ヘチマを栽培する人は、それほど多くはありません。初めてヘチマを育ててみたいと思った人はきっと、緑のカーテンを考えている人などが、ゴーヤは嫌いだからヒョウタンやヘチマでも植えてみようかしらん、と手を出しているのでしょう。
かくいう筆者もヘチマタワシの感触を味わってみたいという興味本位で栽培しておりました。育てること自体はそんなに難しくはないのですが、結実した果実が思いのほか大きく成長しますので、頑丈な支柱だけは必ず用意しましょう。
土地に余裕があるのであれば、空中に仕立てずに地ばい栽培をすることもできます。
※ 育苗して5月以降に植え付ける場合、着花が遅くなり収穫時期が遅くなりやすいです。時期が遅れるだけで収穫量は変わらないので育てやすい方を選びましょう。
ヘチマの土づくり
ヘチマのための土づくりは、他の夏野菜と同じように行います。
植え付けの2週間前に1平方メートルあたり苦土石灰50グラムと堆肥(たいひ)2キロをばらまいてよく耕し、1週間前に化成肥料100グラムを混和して畝を立てておきます。
栽培期間が長いので、マルチビニールや敷きわらなどで雑草の発生を予防しておきましょう。土を覆うことで病気にかかりにくくもなります。
プランターの場合はpH調整済みの市販の野菜用培養土をそのまま利用しましょう。
ここがポイント
ヘチマの栽培自体はある程度の放任でも可能なのですが、問題が出てくるとすれば、モザイク病やつる割れ病という、株全体が枯死してしまうほどの病原菌やウイルスです。
無農薬に強いこだわりがないのであれば、植え付け前に粒状の殺虫剤を土に散布しておくこと、またウリ科作物を連作していない場所で栽培することをおすすめします。
ヘチマの種まき・植え付け
ヘチマの種まきは、ポットで育苗することもできますが、直接畑にまいても問題なく栽培することができます。
どちらの場合であっても、深さ1センチほどで1カ所3粒程度をまき、よく水やりします。発芽したら順次間引いて1カ所1本だけにしてしまいましょう。
1株だけでもかなりの面積をカバーするので、畑に植え付ける場合は、株間1メートルと非常に疎植になります。プランターの場合でも、1株で50センチ以上の幅は埋まるということを念頭に種まき・植え付けをしましょう。
ヘチマの誘引・仕立て
ヘチマは、ネットに届くまでをサポートしてやれば(ネットとは違う方向に行っている場合だけ手で動かす)、あとはおのずとネットをはって伸長していき、空いたスペースをどんどん埋めていきます。
地ばいで栽培する場合は、本葉5枚で摘心し、側枝4~5本を伸ばして育てます。
ヘチマの交配
ヘチマの花は大きく、アリやハチがたくさんやってくるので自然交配でも十分果実がなります。
ヘチマの実がならない?
ヘチマは、水を与えれば与えるほど草勢が強くなります。逆に、水が切れるとどんどん勢いは落ちてしまうので、特にプランターの場合はしっかりと水やりを欠かさないようにしましょう。
ただし、梅雨時期はどうしても水分が多すぎて茂りすぎる場合があります。
あまり強すぎると雌花が正常に着花せず、果実が実らないこともありますので、葉っぱの勢いは良く青々としているけれど実がつかない!という場合は、それぞれのつるの先端を摘心してあげましょう。
すると一気に花が咲き、実がなるようになります。
ヘチマの収穫時期
さあ、ヘチマの収穫時期ですが、ここが一番迷うポイントです。用途によって時期が変わるので、まずは使う目的を決めるとよいでしょう。
食用としてスープなどに入れるとおいしいため、これを利用したい場合は、「花が咲いてから2週間以内」の青い果実を収穫します。
加工用に繊維を利用したい場合は、開花後20日以降、果実の緑色が少しあせて黄色みがかった頃に収穫です。完全に茶色になってからでは遅いので気をつけましょう。
ヘチマの追肥
草勢を見て、葉が青々と元気にしているようだったら、追肥をする必要はありません。
収穫量が多いと、つるや葉に元気がなくなってしまいますので、目安としては6月に1回、7月に1回の合計2回の追肥を与えることで8月いっぱいまで育てることができます。
ヘチマの加工
開花後2週間以上経過した果実は、繊維が多くなりすぎて食べられなくなります。
食べられなくなった果実にも使い道があるのがヘチマの面白いところでもあるので、ヘチマタワシの取り出し方まで簡単に解説しておきましょう。
まずは収穫した果実を、鍋に入る大きさに切り分けます。そして沸騰したお湯で10分程度湯がいて取り出し、冷水にさらします。
こうすることで皮が剥がれやすくなり中の繊維だけが残りますので、これを天日干しして乾かせば完了! タワシというより上質なスポンジと言った方がイメージに近いです。硬いのですが、水に濡らすと柔らかくなり、炊事場での食器洗いや、お風呂場で体を洗う時にも使えますよ。
ヘチマを育てたからにはぜひお試しください。