お米マイスターが解説する「今年のお米の出来栄え」と「新米の炊飯ポイント」

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お米マイスターが解説する「今年のお米の出来栄え」と「新米の炊飯ポイント」

お米マイスターが解説する「今年のお米の出来栄え」と「新米の炊飯ポイント」
最終更新日:2020年11月30日

コロナ禍に揺れ動いている2020年ですが、それでも変わらずに新米の時期はやってきました。異常気象だった今年の夏、各地の新米の出来栄えはどうだったのか? そもそもお米の出来栄えとは何を指すのか?について東京・原宿で唯一の米屋にして五ツ星お米マイスターでもある小池精米店三代目の小池理雄(こいけ・ただお)が分かり易く解説します。そして新米ならではの炊飯方法について、皆さんが抱きがちな「誤解」を解消しつつ、ご紹介します。

今年の新米の出来栄えは?

「今年の天気はメリハリがひどすぎましたね。6月は雨が降らず、7月はひたすら雨が降り続き日照不足。8月の高温でやっと成長したのですが茎はひょろりとしたまま。実が熟している過程で茎がその重さに耐えきれずに倒伏してしまいました」。山形県鶴岡市の生産者の話です。
夏の酷暑は毎年のこと。玄米が白くなる「高温障害」が今年も散見されましたが、それ以前に長梅雨の影響が大きかったようです。

そのような天候の下、図のように作況指数には地域ごとにばらつきがあります。

令和2年産水稲の作付面積

出典:令和2年産水稲の作付面積及び9月15日現在における作柄概況(農林水産省)PDF版

北海道旭川市の生産者は言います。「8月・9月は昨年よりも暑い日が続き、日照が多かったです。今年収穫したもみの量は昨年より少なかったのですが、くず米が少なく出荷できる玄米量は昨年とほぼ同じでした」

注意が必要なのは「豊作=出来栄えがいい」ではないということです。青森県つがる市の生産者は言います。「今年は暑かったため米粒の実りが進んで粒がしっかりしたお米になりました。ただこの地域では田植え後に茎を増やして収穫量を増やす作り方のため、平年なら穂が実らない痩せた茎であっても、今年はすべて穂が出て実ったので、豊作になりました。茎を増やさない育て方をした人のお米は高温の恩恵を受けて粒の肥大化につながりましたが、そういった調整をしない人のお米の味は正直疑問ですね」

そもそも「お米の出来」って? 米屋が見る3つのポイント

圃場での小池理雄さん

お米の品質に影響を及ぼす生産工程

    ①乾燥…お米が「生鮮食品」の割に保存が利くのは乾燥させるからです。この作業を丁寧に行わないと味が損なわれます。
    ②粒の大きさを揃える…玄米をふるいにかけます。ここで米粒の大きさを揃えるのです。このふるいから落ちたお米が「くず米」です。
    ③色彩選別機…白くなった玄米や未熟米、病気になったお米、虫に食べられたお米等、この機械で弾き飛ばして見た目をきれいに整えます。

この玄米を米屋が精米します。米屋が見るお米の出来栄えは以下の3つです。

米屋が見るお米の出来栄え

    ア)玄米の見た目…光沢があるか。白い玄米、病気になった玄米等はないか。粒の大きさは揃っているか。
    イ)玄米を精米…きれいにぬかが取れるか。割れの有無は。黒い斑点等ないか。
    ウ)ごはんの味見…私は8つの切り口でお米を評価します(香り、見た目、硬さ、粘り、うまみ、甘み、食感、のどごし)。

このように見ると「出来栄え」と一口に言っても多岐にわたることが分かります。
とは言え一般のお客様の関心事は「味」。そこで小池精米店の「レギュラー陣」の今年の味について、一部ご紹介……。

①北海道旭川市産 ななつぼし

かむとほっこりとした食感で食べ応えがあり、かみしめたあとに口に広がるでんぷんの甘みが、さわやかながらも例年より余韻があり、楽しめます。

②岩手県矢巾町産 銀河のしずく

「粒の顔が見える」というくらいの存在感を、口のなかで主張してきます。それぐらいの粒の張り、しっかりとしたうまみが、咀嚼(そしゃく)する度に確認できます。

圃場での小池理雄さん

③青森県つがる市産 つがるロマン

口に入れたときのふっくら感、咀嚼時に粒が爆(は)ぜる感覚と舌に広がるしっとりとした甘み…が楽しめます。例年と比べると最初に伝わる甘みのスピードが速かったです。

④山形県庄内町産 つや姫

今年は昨年ほどの粒張りが見られずやや柔らかいですが、歯と上あごで感じるでんぷんの滑らかな食感、そしてほとばしる濃厚なうまみは例年通りで、大満足です。

米のシャツを着る小池さん

新米の楽しみ方とは? 極意は「浸し」にあり

新米を選ぶのに作況指数を参考にするのはお勧めしません。なぜならお米の出来栄えは生産者個々によって違うからです。今年のような環境でもきっちり仕上げる生産者はいるのです。

ただ売り場の米袋から得られる情報はごくわずか。袋の中身すら確認できない場合は、例えばワインのソムリエのように、専門知識をもった販売員がいる売り場か米屋で、いろいろと聞きながら買うのが間違いないのです。

そして炊飯。新米は水分が多いというのは間違いです。お米は保管のため14.5~15%くらいまで水分を下げることになっています。
一方で新米のお米の組織は古米に比べて硬化していないので、通常の水加減だと柔らかくなることはあります。

食味鑑定を行う小池さん

そもそも「炊飯」とは「煮る・蒸す・焼く」の3段階を経て米のでんぷんをβ(ベータ)からα(アルファー)化させることです。その過程において大事なのが「熱」です。水を介して熱が米粒に伝わることにより、でんぷんが柔らかくなる(α化する)のです。水が多いと熱が伝わる時間が長くなるので、よりでんぷんのα化が進むのです。

お米を水に浸漬(しんし) させる工程は、このように熱伝導の役割を期待するところがありますが、お米のでんぷんを糖化させる「アミラーゼ」という酵素を活性化させる目的もあるのです。そのため個人的には新米であろうと古米であろうと、芯までしっかりと浸漬させることがそのお米のポテンシャルを引き出す最良の手法だと考えています。

新米のおいしさを十二分に味わいたいのであればしっかりと浸漬させること。そのうえで柔らかさが気になる人は、しっかり浸漬させたうえで早炊きモードで炊飯するか、通常の炊飯でやや水を少なくするか(3~5%くらい減らす)、です。
いずれにせよ品種によって出来上がりもさまざまですし、絶対的な答えはないのですが、「新米だから水加減を減らして」という単純な話ではないことは覚えておいてください。

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