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“赤いシャインマスカット”? クイーンルージュが市場デビューへ

熊谷 拓也

ライター:

“赤いシャインマスカット”? クイーンルージュが市場デビューへ

シャインマスカット人気を追い風に、長野県がシャインマスカットを親に持つ新品種を開発しました。その名も「クイーンルージュ」。親譲りの爽やかな香りと強い甘みが特徴の赤系ブドウで、“赤いシャインマスカット”とも称される期待の品種です。現在、2022年の本格デビューに向けて、県内の農家が苗木から栽培しています。県内での新規就農を予定しているわたしも、研修生として一足早く試食する機会に恵まれました。待望の新品種の特徴を実食レビューと共に紹介します。

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期待の新品種、“赤いシャインマスカット”

クイーンルージュ(長野県提供)

長野県が新たに開発したブドウの「クイーンルージュ」(画像提供:長野県)

クイーンルージュは、その名の通り、深みのある赤い色が特徴のブドウです。黄緑色の「シャインマスカット」と赤紫色の「ユニコーン」を掛け合わせ、長野県果樹試験場が開発した新しい品種です。

シャインマスカットと同じく、種無しで皮ごと食べられます。人気ナンバーワンの「シャインマスカット」、同試験場が開発した黒色の「ナガノパープル」と収穫期が近いことから、県はクイーンルージュを加えた“ぶどう三姉妹”としてセットで販売しようと考えています。

特に、クイーンルージュは糖度20~21%程度で、ナガノパープル(糖度18%以上)、シャインマスカット(同19%以上)と比べても、甘みの強さが際立ちます。

今年は6月に雨が多かったため、病気の心配がありましたが、長野県によると、影響は一部にとどまっています。園芸畜産課の担当者は「農家さんたちの頑張りのおかげで期待通りの房ができている」と手応えを話しました。

甘さの後に来る、マスカットの爽やかさ

クイーンルージュ栽培検討会

上伊那地方で開かれたクイーンルージュの栽培検討会

クイーンルージュの苗木はすでに県下各地の産地に行き渡り、県に登録したブドウ農家が2年後の2022年本格出荷に向けて栽培を始めています。わたしが農業研修を受けている上伊那地方でも、地元JAでクイーンルージュの栽培検討会がありました。

箕輪町の会場には、ブドウ農家やJA職員など計10人余が出席。町内で栽培された試食用のクイーンルージュが用意され、参加者は糖度16.2~23.0%と糖度が異なる4つの房を食べ比べました。

皮ごとかみしめると、口いっぱいに甘い果汁が広がりました。赤系ブドウらしいはっきりとした甘さです。それから、爽やかなマスカットの香りが鼻を抜けました。シャインマスカットの魅力もしっかりと受け継いでいるようです。

糖度が高くなるにつれて赤い色の深みが増し、甘みもより強く感じられました。マスカットのような香りは他の赤系ブドウにはない特徴で、一部では「赤いシャインマスカット」と呼ばれていることにもうなずけました。

参加した人は、「成熟が進んでいないものの方が香りが強く感じられた」「シャインマスカットのように皮が柔らかい」などと感想を口にしていました。

シャインマスカットブームに続けるか

クイーンルージュ(長野県提供)

2022年に本格出荷が始まるクイーンルージュ(画像提供:長野県)

現在、シャインマスカットは国産ブドウの中で群を抜いた人気を誇っています。

4大市場(京浜・京浜衛星・名古屋・京阪神)における長野県の近年の販売実績を見ても、品種別ではシャインマスカットだけが右肩上がりで数字を伸ばしています。直近の2019年はブドウ全体の4割強に当たる3817トンに上っています(日本園芸農業協同組合連合会調べ)。

一方で、その人気ぶりが過熱気味であることから、突然のバブルの終わりを心配する声も出始めていました。

そうした中、予期せぬ事態が起きました。新型コロナウイルスの感染拡大による生活様式の変化です。外出を控えて家庭で過ごす時間が増えたことで、シャインマスカットやナガノパープルのように値段設定が高めの国産ブドウにとっては追い風が吹き始めました。長野県でも2020年のブドウの販売実績は好調に推移しているとのことです。

クイーンルージュの本格的な市場デビューは2022年を予定しています。最初は東京、大阪を中心に販売を始め、将来的にはアジア圏への輸出も視野に入れて準備を進めています。

シャインマスカットやナガノパープルといった県産ブドウは台湾や香港、シンガポールなどで人気が広がりつつあり、2019年の輸出額は推計7億4000万円(前年比11.8%増)で全農産物のうちトップ。県の担当者は「クイーンルージュもナガノパープルのように、長野県を代表するブドウに育ってほしい」と期待しています。

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