リンゴの品種紹介
リンゴはほとんどの場合、2品種以上の木を植え付けなければ受粉できずに果実が結実しません。たくさんの種類がある中から、多く栽培されているものをいくつか紹介します。
ふじ
ふじはリンゴの中でも王道の品種で、つくりやすく、とてもおいしい晩生(おくて)品種です。
つがる
ふじの次に多く日本で栽培されている赤リンゴです。
収穫時期が早いため、温暖地域では高温期に糖度が上がり、病害虫被害が多くなってしまいます。
王林
日本で最も多い青リンゴ(黄色)になります。着色を気にしなくてよいのですが、黒星病や炭疽(たんそ)病の発生が頻発しやすいことが注意点となります。
アルプス乙女
ヒメリンゴとふじを交配した、ピンポン球サイズの小さなリンゴ(食味はふじに近い)。この品種は一本だけでも受粉できる上に温暖地域でも栽培しやすいので家庭菜園では最もおすすめです。
リンゴは成木になるまでに比較的長い時間を要しますし、大木になります。「矮化(わいか)苗」という樹勢の弱い台木に接ぎ木している苗が手に入れば、早くから収穫することができ、大木化するのが遅くなります。
以下栽培カレンダーに沿って見ていきましょう。
リンゴの植え付け方
リンゴの植え付けは厳寒期を除いた秋~春の季節に行います。
冷涼地域の場合は秋に植え付けると雪に埋もれて弱ってしまいますので春植えを推奨します。
既に畑として使っている肥えた土壌であれば植え付ける分だけを掘り起こして植え付けても構いませんが、そうでもなければできるだけ広い範囲を掘り起こして、掘り起こした土の半分の量の堆肥(たいひ)、200グラムの苦土石灰とよく混ぜることで土づくりをします。
植え付ける際には配合肥料100グラムも混和します。
植え付けは深くなりすぎないように、支柱がないと倒れてしまうくらいの浅植えが理想です。
植え付けたら苗木の先端部分をハサミで5センチほど切り落としておきます。
リンゴの肥料
リンゴは吸肥力の強い植物です。とにかく勢いが強いので、木の勢いが落ち着くまでは果実は実りません。
そのため、リンゴ栽培ではいかに木の勢いを弱めるかということを意識した肥料散布が行われます。基本的には植え付けの時に肥料を入れていれば、あとは次の冬まで散布する必要はありません。
11~12月に元肥として1キロ程度、果実がなりだしてからは9月にも200グラム程度の配合肥料を散布します。木が大きくなるにつれて施肥量も増やしていき、最終的にはリンゴの成木1本につき、9月に1キロ、11~12月に4キロの2回を施与します。
葉が散ってからの休眠期に肥料散布するのはもったいないような気がしますが、リンゴは地上部が休眠していても若干ですが肥料を吸っています。
ただし極寒地域の人や、果実よりも木の勢いを強くしたい人は元肥を11月ではなく3月まで遅らせましょう。
リンゴの剪定(せんてい)
リンゴの剪定技術は、他の果樹の何倍もの複雑な技術が開発されています。なぜでしょう? 筆者にも分かりませんが、リンゴ農家はとにかく剪定が好きで、さまざまな流派に分かれている印象です。特に産地の多くが積雪のある地域なので、生産性のみならず、雪で折れない木のつくりを心がけています。
家庭果樹の場合はそこまで考える必要はないですが、リンゴの木の生理を理解して剪定をしていきましょう。
リンゴは枝の先端の花芽に果実がなり、重みで垂れ下がって枝垂れた枝に高品質な果実を結実させます。しかし、最初のうちは必ず木の先端を切り詰めましょう。
先端を切り詰めることで花芽は切り取られてしまいますが、より強く枝が伸長し、将来たくさんの果実をならせるための主枝となるメインの幹となっていきます。主枝の先端が切り取られることで横に伸びる側枝の角度が広がり、生産性の高い結果枝を生み出していきます。
リンゴの結果習性
リンゴは1年目の枝の先端に花芽が付きやすいですが、そのまま長い1年枝に結実させるのではなく、切り取ることで伸長を促し、2年目3年目の枝から出てくる短い1年生の枝に結実させていくとよいでしょう。
木が大きくなってくると、より立体的に木を育てていく必要が出てきます。
剪定も複雑になり大木化していくので、家庭果樹においては15年くらいでリンゴ栽培を終わらせるつもりで新しい木を植え直しておくのも一つの手です。
主枝を一直線に伸ばすのではなく、四方に伸びている枝を複数の主枝として、斜めに伸ばしていきます。このとき主枝と主枝の間隔は30センチほど空いていることが望ましいです。
リンゴの摘果
リンゴは受粉樹さえあれば非常に結実率の高い果樹なので、実がならないという場合はほぼ前年の摘果が甘かったせいだと思われます。5月から7月にかけての玉の肥大が最も重要なので、できれば花が落ちて1カ月の間に終わらせるとよいでしょう。
リンゴは1カ所に何個も結実します。真ん中の実が明らかに大きいことが一目でわかると思いますので、それだけを残して他はハサミで切り落としてしまいましょう。
また、大きな果実にするのであれば4カ所のうち1果実を残し、中玉ならば3カ所のうち1果実、小玉であれば1カ所1~2個を目安に数を減らします。
リンゴの袋かけ
摘果が終わったらできるだけ早い時期の晴れている日に、殺虫剤と殺菌剤を散布して、乾いたら袋かけを始めます。病原菌を袋で閉じ込めないように、雨が降ってしまったら薬剤散布からやり直しましょう。できるだけ少ない農薬で栽培するためにも重要な作業です。
袋かけをしないことで着色や食味の向上を目指した、サンふじやサンつがるなどに挑戦するのもよいですが、袋かけの手間を省く代わりに消毒の回数は増えてしまいますので、家庭果樹においては袋かけをおすすめします。
収穫1カ月前になったらかけている袋を外して着色と糖度上昇を促します。色は気にしないのであればそのまま収穫しても構いません。
リンゴの病害虫防除
リンゴは病害虫による被害を非常に受けやすい果樹です。おいしい果物は虫も病気も大好きです。
主要産地である冷涼地域では黒点病、斑点落葉病、黒星病などが問題になりやすいのですが、筆者の住んでいる暖地においては炭疽(たんそ)病、褐斑病、輪紋病などが猛威をふるいます。
この他にもさまざまな病害があるため、ここで全ての解説を細かくすることはできませんが、冷涼地域は春先の4月から5月、温暖地域では6月から8月に主にこれらの病気に感染します。
病名を検索すれば、たくさん画像が出てきますので、自分のリンゴの木が感染している病名を把握して、登録のある農薬を選んで持っておきましょう。
激発した場合は、次の年にまで影響が続きますので、収穫後までもしっかり殺菌しておきましょう。
シンクイムシやハマキムシ、木を枯らしてしまうカイガラムシなどさまざまな害虫にも狙われますので、月1回、殺虫剤と殺菌剤を合わせた薬剤散布を心がけるとよいでしょう。
以上がリンゴ栽培になります。鉢植えであれば木が小さいため、煩わしいと感じる薬剤散布もスプレータイプの殺虫殺菌剤などで簡易に散布できますので、あまり気負わずに挑戦してみてください!