2020年の井上誠耕園収穫祭はオンラインで!?
瀬戸内海に位置する香川県の小豆島。この小豆島に東京ドーム3.3個分の広さを持つオリーブの農園「井上誠耕園」があります。
これまで井上誠耕園オリーブ収穫祭では、小豆島を訪れた人にオリーブの紹介や小豆島の魅力を収穫体験などを通して伝えてきました。2020年は新型コロナ感染拡大の影響によりオンラインでの開催となりました。
バーチャルで小豆島の名所を紹介するところから始まったオンラインツアー。あらかじめ送られてきた3Dゴーグルを用いて景色を見ました。まるで小豆島を訪れたような感覚になります。
収穫期真っ只中のオリーブ畑では、同じ1本の木でも場所によって実り方が違い熟度が変わるオリーブを、手摘みで一つ一つ確認しながら収穫していました。
収穫後に行う選果にもこだわりがあります。同じミッションという品種の中でも、黒っぽい熟した実は化粧品の「天成りオリーブオイル(エッセンシャルオリーブオイル)」、赤い実は化粧品の「エキストラヴァージンオリーブオイル」、緑色の緑果は食品の「緑果オリーブオイル」になります。
池田
その次は搾油です。
「オリーブオイルはミカンのジュースを搾るのと似ています。オリーブオイルは果汁なんです」と同農園のオリーブテイスター、大坪康祐(おおつぼ・こうすけ)さんは話します。
特に印象的だった搾油過程は、自然ろ過する工程。時間と手間がかかりますが、ゆっくりとろ過することで、オイルにストレスを与えないそうです。
国産オリーブからできたオイルや新漬けをいざ試食!
オンラインプレスツアーでは試食会も行われました。
前日に送られてきた食品は
・新漬けオリーブ
・緑果オリーブオイル
・オリジナルの生食パン
・オリーブ香草塩
緑果オリーブオイルは果汁100%のジュース! 若草のようなとてもフルーティーな香りがします。
そこにオリーブ香草塩をいれて生食パンにつけて食べるだけで、とても豊かな風味を感じられます。オリーブが新鮮でほんのりと辛みがあり、それが調味料としても使えて生食パンとマッチしていました。
そして、うれしいことにエッセンシャルオリーブオイル、美容オリーブオイル、ナチュラルスキンローションの試供品も送られてきました!
オリーブが成長する過程で、外敵や紫外線から実を守るために自らが生成して蓄えたオリーブポリフェノールは、人間の体内では生成できないのだそう。その成分で、肌をしっとりさせます。
池田
オリーブオイルの新たに分かってきた効果とは
井上誠耕園は2019年から「オリーブと健康寿命延伸」をテーマに東京大学と連携しての研究をスタートさせました。
今回参加したオンラインのオリーブ収穫祭では、最近分かってきたオリーブオイルの効果について、東京大学データサイエンス社会連携講座で研究補助員をしている梁瀬(やなせ)さんが、論文の内容をもとに教えてくれました。
「2019年に出されたイタリアの学者の論文では、高血圧や心臓病にも深い関係のある心血管系に対してオリーブオイルが良い影響を与えるのではないかという考察がされています。これは若く緑色のオリーブには、抗酸化力・抗炎症作用があるフェノール成分が多く含まれているためで、健康への効果も大きいといえます。スペインで行われたオリーブに関する学会での論文でも、ボディマス指数(肥満度。BMIとも)・高血圧に効果があるのではないか、という考察がされました。オリーブオイルの摂取は血圧の低下につながり、高血圧を含む心血管疾患の負担軽減に効果があるということが分かっているのです」(梁瀬さん)
また、認知機能に対するオリーブオイルの効果も期待されています。
医療ボランティアに参加した60代、447人を「エキストラバージンオイルを1週間に1リットル摂取するグループ」「ミックスナッツを1日30グラム摂取するグループ」「一般的な食事のみを食べるグループ」の3つに分けて4年後の認知症の進行度を分析しました。その結果、オリーブオイルを摂取したグループでは特に前頭葉の認知機能が改善され、記憶力や言語に対する全体的な認知機能も改善されました。
そのほか、乳がんの一次予防に対する効果も期待されているとのこと。
そんな可能性がたくさんあるオリーブオイルを、井上誠耕園は国内で約50年前から生産しています。
園主が農業で変えたいもの
食品も化粧品もオリーブオイルの良さを最大限に引き出しており、こだわりを感じるものばかりでした。
井上誠耕園3代目の園主、井上智博(いのうえ・ともひろ)さんは、
「最初は都会への憧れもあり、実家が農家というのも小豆島という田舎もイヤだった時期もありました。小豆島を離れて青果物の中卸商になり、その時に感じたのは、大市場のなかでは小豆島は弱小産地だということ。せっかく作った農産物が安値で取引される状況をみて、悔しさと地域を豊かにしたいという思いから里に帰りました。実は小豆島には東京ドーム300個分の荒地があるとも言われています。開墾して、昔のような段々畑を復活させたいですね」と農業で地域をもっと活性化させたいという思いを語りました。