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農業は夢の観光事業への扉! 丹沢そば農業アカデミー

林 ぶんこ

ライター:

農業は夢の観光事業への扉! 丹沢そば農業アカデミー

丹沢山地を源流とする川が形成した扇状盆地を擁する、神奈川県秦野市。秦野盆地は渋沢丘陵と丹沢山地に囲まれ、朝晩の気温差が激しく霧が発生しやすいことから、ソバの栽培に適しており、北部の山裾にある三廻部(みくるべ)地区などでは、ソバの3期作が行われています。この地でソバの生産から販売まで、6次産業化を手がける石井勝孝(いしい・かつたか)さんを訪ね、会長を務める「丹沢そば農業アカデミー」について話を伺いました。

6次産業化の認定農業者、石井勝孝さん

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畑の土をならす石井さん

秦野市で「製造元直売所 手打ち十割そば処 丹沢そば本店(以下、丹沢そば本店)」を営む石井さん、61歳。2000年に実家のそば店を6000万円の負債とともに譲り受け、10年たたずに借金を返済し、黒字化させた経営手腕の持ち主です。若い頃はカーレーサーであり、片輪をコースアウトさせながらもタイムが稼げるコースを狙って走るのが好きだったと言います。「レース途中はタイヤが半分落ちてたっていいんですよ。最終的にコースに戻れればいんだから。タイムを上げるためには、タイヤを落とすリスクは取らなきゃダメ。怖がってたら進歩はないんです。人生も同じです。攻めていかなきゃね!」と、豪快に笑う石井さん。そのチャレンジ精神で全くの素人だったソバ栽培を2000年から始め、現在は6次産業化の認定農業者にまでなりました。

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丹沢そば本店

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1989年、富士スピードウェイ。緑色の車が石井さん

「そば店は生産・流通の中で川下にいて、川上にいるソバ生産者や製麺業者が流してくれるソバやソバ粉を使うしかない。値段交渉したり、少しでもよい粉を分けてもらうために苦心する。そんなそば店はいやだ、川上から川下まで全部自分でやってやろう、自給してやろうと思って、ソバ栽培を始めました。とにかく体を動かして一生懸命働きましたよ」(石井さん)。耕作放棄地となっていた土地を借り受け、ソバ栽培に乗り出した石井さんですが、今では自身が所有する約4万坪(約13ヘクタール)のソバ畑で年に3回ソバを収穫しています。そして作ったソバは「丹沢そば本店」で提供・販売するだけでなく、百貨店で販売したり大手スーパーなどをはじめとしたプライベートブランドとしても育成・卸販売しています。

認定農業者として農地購入の権利を取得できる丹沢そば農業アカデミー

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そんな石井さんの20年かけて培ってきたソバづくりから販売までのノウハウを学べ、自分のものにできるのが2015年に開校した「丹沢そば農業アカデミー」。座学ではなく実践農業を行うソバ栽培農家育成プログラムです。

入会後、アカデミー生は2年間、年間15万円ほどの受講料を払って石井さんの農園でソバの3期作の農業研修に550時間以上従事します。次の2年間は石井さん指導の下、自分で農地と機械を借りて、年間150日以上のソバ3期作の実務研修を行います。計4年間の研修期間が終われば、5年目よりソバ栽培の補助金対象者になれ、認定農業者として農地を購入できる権利を取得できます。

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独立までのスケジュール

現在30人ほどいるというアカデミー生たちの多くは会社員との兼業。数年後の独立を目指し、現在は土日のみ農業に従事している人がほとんどだといいます。

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アカデミー生とソバの刈り取りをする石井さん(左)

アカデミー卒業後も設備のシェアでバックアップ

現在石井さんの元には秦野市を含め、県内の小田原市、松田町、山北町、中井町の2市3町から耕作放棄地のマッチング依頼がきているそうで、卒業生になれば好きな土地を選び放題で開業できます。が、耕作放棄地のため、ほとんどが荒れ地なのだとか。しかし、心配はご無用です。開墾のための機械も石井さんが貸してくれ、バックアップも惜しまないとのことですので、開業にあたっての持ち出しは少なくてすみそうです。また、認定農業者になるための、行政に提出しなければならない書類の記入方法もかなり難しいのですが、こちらについても石井さんの長女の絵里子(えりこ)さんがバックアップしてくれます。

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石井さんと長女の絵里子さん

「向上心とやる気のある人だったら、面倒見てあげるよ。ただしやる気のない人に来てもらっても困るから、最初に面接だけはさせてもらうけどね。4年かけて独立してもらうんだけど、最初の1年ができれば、後はその積み重ねだからさ。自分が開業した時に困らないように、年々ステップアップしていってほしいね。自分で課題点を見つけて、それをどうやって次につなげていこうか考えられる人は伸びるね。認定農家になることがゴールじゃない、そこからが本番なんだから、いかに農家として利益を上げていけるか考えながらやらないと」と石井さんは言います。

「僕は6次産業化の認定農業者にもなってるから、ソバ収穫後の販売のコンサルティングだってOKだよ。製麺だってうちの機械を使えばいいからね」。農家として独立して6次産業化を考えた時に一番ネックとなるのは、設備をそろえなければならないことなのだそうです。

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丹沢そば本店隣の製麺工場

「今や機械を使わなければ生産性のある農業はできないよ。それにソバの実だけではもうからない。麺にして販売する出口がなきゃダメなんだけど、その時にも商品化ができる設備がないとどうしようもないからね」と、石井さん。アカデミー入会のメリットはノウハウを学ぶだけではなく、設備のシェアにもあります。

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石井さん所有の農業機械搬送車

農業は夢の観光事業への扉

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晴れた日には相模湾まで望める、三廻部地区にある石井さんの天空のそば畑

石井さんは三廻部地区で「天空の丹沢そば村」という、ソバ栽培からそば打ち、ロッジでの滞在もできる農業体験施設も経営しています。「認定農業者になれば農地が好きなだけ購入できるからね。その農地をどのように使って利益を上げられるかも腕の見せどころだよ。農業は夢の観光事業への扉でもあるんだよ」(石井さん)

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アカデミー生たちと石井さん

コロナ禍の昨今、今まで標準とされていた社会の仕組みに不安を持ち始めた人たちが、続々と石井さんの門を叩いているのだとか。入会希望者の面接をしたり、アカデミー生のソバ畑を見に行ったり、卒業生に6次産業化のコンサルティングをしたり、日々忙しさが増す石井さん。「丹沢そば農業アカデミー」会長として、ソバ栽培のスペシャリストとして、その活躍に今後も目が離せません。

丹沢そば本店

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