都市農業は「儲かる」のか? 新規参入農業者の懐事情を教えます【進化する都市農業 #7】

マイナビ農業TOP > マーケティング > 都市農業は「儲かる」のか? 新規参入農業者の懐事情を教えます【進化する都市農業 #7】

マーケティング

都市農業は「儲かる」のか? 新規参入農業者の懐事情を教えます【進化する都市農業 #7】

連載企画:進化する都市農業

都市農業は「儲かる」のか? 新規参入農業者の懐事情を教えます【進化する都市農業 #7】
最終更新日:2019年04月04日

「儲かる農業」という言葉を最近よく目にします。
私が農業法人に就職した2005年にはとにかく「農業は食えない」というイメージが強く「そんな食えない仕事にわざわざ転職するなんて……」とあきれられたものです。
しかし2014年には農林水産省も「農業・農村の所得を倍増させる」10カ年計画を掲げており、儲かる農業はもはや公認の目標となりました。
今回は都市農業における「儲かる農業」について考えます。

2018年度、私の決算報告は?

年度末がすぎ、私が経営する(株)農天気、NPO法人くにたち農園の会もほぼ昨年度決算の見込みが出てきました。売上にすると(株)農天気は約900万円、NPOの方は1400万円程度。それぞれ若干の利益を出して着地となりそうです。
とはいえ一般的な事業で考えれば、とても「儲かっていますね~」というような数字ではありません。
私が法人名義で管理している農地は全体で2反(約2000平方メートル)程度。体験型のサービス農業がメインの事業ですが、他にも古民家食堂や民泊を運営したり、このように文章を書いたりとさまざまな方法で稼いでいます。しかし、そこまでしてもこの程度の売上です。

進化する都市農業

食農体験プログラムは都市農業ならではの大事な収入源

なんだか貧乏ったらしい話になってしまいましたが、だからといって「生活が苦しい」という切実さは一切なく、5人家族で毎日楽しく暮らしています。なぜならお金は儲かっていませんが、その他さまざまな価値を稼ぐことができ、それこそが私たちの暮らしの持続性を担保してくれているという実感があるからです。
物やお金を介さずとも信頼をもとに助け合える関係は、最近「関係性資産」とも表現される無形資産ですが、農業はこういったものを稼ぐという面ではとても「儲かる商売」といえると思います。
具体的にどういうことか?という話の前に、「都市農業で稼ぐ」というのはどういうことなのか? 私が知っているやり手都市農家の例から考えてみたいと思います。

1反(約1000平方メートル)で1000万円を稼ぐ都市農業

都市という縛りなく、一般的に農業生産で稼ごうと考えるならば、最も重要なのは「決められた期間、一定品質以上のものを、安定的に出荷する」ということに尽きると思います。単価を安く設定しようが高かろうが安定供給できれば、スーパーなどの売り場や飲食店等の顧客に安心感を与えることができ、間違いなく需要をつくれるでしょう。
そのために一番手っ取り早い方法は優良農地をたくさん確保して、品目を絞って出荷物の精度を高めることです。
ところが、これがなかなかできないのが都市農業です。
一番大きい要因は住宅地需要と相続税の関係で、相続するたびに農地を減らさざるを得ないという点でしょう。他にも近隣に住宅やビルができると日陰ができ、早朝や夜など作業時間にも気を使わなければならない、通り沿いの畑ではもしLEDの街灯がつけば日照時間も狂って成長に影響する、農地間のトラクター移動にも渋滞が絡むなどさまざまな都市的要因に作業効率は左右されます。大規模化が難しい都市農業においては小さな面積でいかに稼ぐのかが勝負どころです。
小さな面積で稼ぐ方法は大きく2つに分けられるでしょう。

 ①トマト、果樹、花など高単価、高品質のものを施設栽培で確実に作る

 ②消費地が目の前にある強みを生かし、少量多品目直売所を自ら開設して毎日完売させる

私が懇意にさせていただいている農業者の好例としては

①のパターンでは東京都清瀬市の「関ファーム」。自社ブランドのトマトをココナッツ繊維を用いた培地を使い環境制御された施設で栽培し毎日のように都心に出荷しています。

②のパターンは東京都国分寺市の「清水農園」。畑の前に有人直売所をつくり、年間100品目以上の農産物を販売しています。

進化する都市農業

東京・国分寺の清水農園直売所。野菜のほか花や手芸品なども販売

どちらもほれぼれするような農家経営をしながら日々の改善や周囲の協力者の巻き込みも怠らず、都市農業の理想形を作っていると思います。
しかし、一方で彼らは代々続く農家であり、築いてきた土台をうまく生かして農業経営を発展させており、新規参入者にはまねできない点が多いのです。
では私のような新規参入者が「農業で食っていく」と考えるならばどんな手立てがあるでしょうか?

新規参入者は都市農業で何を稼ぐのか?

私が(株)農天気を設立したのが2014年。4期目を終え5年目に突入しました。
生き残りをかけてとった方法は「生産では稼がず、農業周辺の事業機会を徹底的に拾っていく」というやり方です。食育・メディア発信・観光・会場貸し・コンサル……需要を見つけてはすぐアプローチするという方法で、要は「何でもやります」という姿勢です。
新規参入者が生産でしっかり稼いでいる例はなかなか少なく、厳しい闘いを続けている方が多いです。あえて方法をあげるのであればやはり高単価なものに絞って品質と供給力をあげるか、固定客となる個人や飲食店ファンを獲得して多品目を継続的に届けるという方法になるでしょう。

生産で稼ぐにせよ、周辺ビジネスで稼ぐにせよいずれも「金儲け」ということには程遠く、最近よく見かける「農業で○千万円稼ぐ」みたいな言葉につられて参入するのはお勧めできません。

進化する都市農業

農園スタッフとの懇親会は心身ともに豊かさを実感できる瞬間

しかし、冒頭で触れたようにお金はほどほどに、むしろ関係性資産を稼いで暮らしの持続性を担保する、というのであれば都市農業は新規参入するに値する生業(なりわい)と思います。
まずは当たり前ですが食材を自ら栽培しているため食費がかからない。常に地域にいるため、賃貸住宅にしても物々交換的ないただきものにしてもいい条件で獲得しやすい。そして何よりも、家族といつもいっしょに過ごしているため、家庭も安定し教育費もほとんどかかりません。暮らしのコストは圧倒的に安く抑えられるし、頼りになる仲間たちとも日常的に関係性を築いていくことができます。
私自身はこれこそが「儲けもの」と思っているので毎日が楽しく、将来の不安もほとんどありません。
そういう生き方をしたい人には都市農業も十分に魅力的な生業になりうるのです。

今回は都市農業者のぶっちゃけ話のような話題でしたが、次回はさらに都市農業がもつさまざまな機能について考え、そこに潜むビジネスアイデアを出してみたいと思います。

【関連記事はこちら!】
企業も都市農業に参入できる? 新法によって広がる可能性【進化する都市農業 #6】

インバウンド観光に応える「東京アグリツーリズム」【進化する都市農業 #5】

世界の都市農業から見た日本のユニークな特徴とは【進化する都市農業 #4】

関連キーワード

シェアする

  • twitter
  • facebook
  • LINE

関連記事

タイアップ企画

カテゴリー一覧