街の価値が上がる⁉ 都市農地の「里山化」【進化する都市農業 #8】
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街の価値が上がる⁉ 都市農地の「里山化」【進化する都市農業 #8】

連載企画:進化する都市農業

街の価値が上がる⁉ 都市農地の「里山化」【進化する都市農業 #8】
最終更新日:2019年04月22日

書籍「里山資本主義」(藻谷浩介著)がベストセラーとなり新書大賞を受賞、話題を呼んだのは2014年のこと。「里山資本主義」とは、岡山県真庭市の山林などを活用して経済を再生し、コミュニティーを復活させた例などをもとに「マネーに依存しない持続性の高い社会、地域づくり」を提唱したものです。都市に残された農地も同じように自然資源を活用した里山ととらえるならば、経済やコミュニティー復活のヒントがあるのではないでしょうか?
今回は「都市農地を里山に見立てたら?」というアイデアを紹介します。

農業が元気な街ほど「住んでみたい」?

みなさんはどんな街で暮らしたいでしょうか?
不動産・住宅に関する総合情報サイトSUUMO(運営会社リクルート住まいカンパニー)が発表した「住みたい街ランキング2019」では横浜が関東1位となりました。
実際に暮らしている人たちの生活満足度調査(2017年度、横浜市「横浜市民意識調査」)でも「暮らしやすい」「どちらかというと暮らしやすい」と答えた人の割合が79.5%ととても高く、横浜市に魅力を感じている点としては「海や港が身近にある」54.5%、「ショッピング施設が充実しており買い物が便利である」43.4%、「国際的な雰囲気がある」27.8%、「まとまった緑地などの自然が残っている」27.1%などが上位に挙がっています。

進化する都市農業

田畑が身近にある街ほど暮らしの満足度が高い?

独特の魅力があり(海・港・国際的)かつ便利で、緑もある。という多面的な要素が組み合わさって生活の満足度を上げ、「住みたい」と多くの人が思うようなブランディングができているといえるでしょう。
このような結果をみると私はつい「しめしめ」と思ってしまいます。
なぜならば、横浜市は農業産出額約130億円(2017年、農林水産省調べ)と県内トップクラス、港町横浜のオシャレな都会イメージがある一方で、農業・農地ともに活気のある街だからです。
「都市近郊で農業・農地が元気な街ほど暮らしの満足度も高いにちがいない!」という私の願望が証明されたように感じられてうれしいのです。
人口減、空き家増のいま、どの自治体においても住民獲得は重要課題です。
都市農地を活用することがそのシティーセールスの大きな力になると私は考えています。

横浜市の取り組みに学ぶ「里山化」

「ユニークで、便利で、みどり(農地含む)豊かな街」の価値が高いのは当然と言えば当然でしょう。
ただ、ここで重要なのが、ただ農業・農地が残っているというだけではなく、その存在が住民や外部の人にも十分に評価されるということだと思います。
例えば横浜市は「横浜みどり税」という市民税を設けて、農地や山林の保全のための予算を確保しています。条例を制定して地産地消を推進したり、市民農園コーディネーター登録制度というものを設けて市民農園の開園をサポートしたりすることで、農業と市民の接点も積極的に作っています。
行政も市民も参加して都市農業を街の価値に変えていく取り組みを継続してきたことが今の横浜を作っているといえるでしょう。このように都市内の田畑や山林を「みどり資源」ととらえて活用している例を見ると私は「実に里山的だな」と思います。

進化する都市農業

コミュニティー農園「くにたちはたけんぼ」での共同稲刈り

里山とは「人里近くにあって、その土地に住んでいる人のくらしと密接に結びついている山・森林」と広辞苑では定義されています。
かつては地域住民たちの共同作業によって管理された山林が肥料、道具、建材、水、山菜など生活資源の源でした。もし、その資源が枯渇してしまえば農業生産ができず皆飢えてしまいますので、なるべく多くの資源を生み出せるように良好な共同管理をし、シェアしていたのです。
現代では基本的には資源は遠方より購入してくることの方が一般的ですから、お金を稼ぐことに重きがあり、身近な里山の存在は軽くなっています。
地域活動やボランティアワークは常に人手不足、里山のような資源を共同管理するという習慣が薄れていったのも当然でしょう。
しかし不思議なものでいざ薄れてくると、今まで実は地域社会や良好な環境を支えてくれていた草の根コミュニティーの価値に気づく人が増え、「里山資本主義」のヒットにつながる一因となったのではないでしょうか?
そこで私が提唱したいのが「住民による田畑の里山化」です。

SNSこそが現代の里山を生み出す

都市農地が里山としての機能を発揮するためには、まずは多くの人が確実に「価値がある」と認識できるものを生産することが必要です。
田畑で生産される価値としては「食料」が最もわかりやすく、モノとしてシェアもしやすいですが、それだけでは面積の限られる都市農地は価値を十分に発揮できないことになってしまいます。
そこで重要なのは「モノではなくコトの価値を高めてシェアする」という、まさにSNS的な考え方です。
田畑での共同作業からは、食の他にも他者との結びつきや学び、癒やし、遊び、美観といった価値が生まれます。そうした価値を見える化させるツールがまさにSNSです。
「おいしそう」「楽しそう」「健康的」といったイメージを写真に収めて参加者が発信すれば、それに惹(ひ)かれてさらに人が集まり発信という連鎖がはじまります。

進化する都市農業

まさに「畑リア充」といったところですが、結果としてそこに安定感のあるコミュニティーが生まれればそれこそが地域の価値となるでしょう。
私たちNPO法人くにたち農園の会でも「田畑で子育て」「多様な体験プログラムの開催」「食の観光事業」などに取り組み、発信してきた結果、実際に地域に引っ越してきた人もいます。
こうした取り組みはビジネス的な考え方からするとずいぶん遠回りのように思えますし、お金的な損得勘定が絡みすぎてしまうと逆に安定感のあるコミュニティーは生まれないというジレンマもあります。
しかしアップル社が、新製品発表会「Apple Special Event March 2019」(2019年3月25日開催)で、動画・雑誌・ゲームの定額制配信サービスや、ポイント還元のあるクレジットカードなど、暮らし直結サービスを大々的に打ち出したように、グローバル企業ほど顧客の生活を丸ごと抱え込んでファンを取り逃がさないよう、徹底的な便利さやカッコよさ、エンターテインメントを提供しようとしています。
規模や印象は全く違いますが、都市農地を生かした市民活動も同じ面があると私は思います。里山的なコミュニティーを着実に育てていけば、そういう取り組みがある地域ほど人を集め、子育てをしやすくなり持続性が高くなるというのは間違いないことでしょう。
結果的にそれに成功した地域ほど経済的価値も高くなるはずです。

【参考】
横浜市民意識調査 平成29年度 結果の概要(PDF):横浜市

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