タイムの栽培時期
タイムの発芽適温は20度前後、生育適温は15~20度で、暑さ寒さにも比較的強いハーブです。植え付けは4~5月、9~10月ごろがいいでしょう。春から夏にかわいい花が咲くので花壇にもおすすめです。地中海沿岸原産で暖かく乾いた場所が好きなので、日当たりが良く水はけの良い場所で育てましょう。関東より西の地域では越冬が可能なため多年草として何年も楽しむことができます。茎が直立するタイプと、地をはうように広がるほふく(クリーピング)タイプに分かれ、料理には直立タイプのコモンタイムが、ガーデニングではほふく性のワイルドタイムなどがよく使われます。
タイムの播種(はしゅ)
タイムは苗づくりに時間がかかるので、種から育てるよりも苗を買って育てるのがおすすめです。ホームセンターなどで購入できるほか、インターネットでも買えます。一度購入すれば大きくなってから「株分け」といって一つの苗から複数の苗に分けて育てることができます。初心者はひとまず苗から栽培してみましょう。
種から育てる場合、タイムの種は小さいので、重ならないように注意しながらばらまきします。覆土はごく薄くし、水やりはじょうろではなく霧吹きを使いましょう。じょうろでは種が流れてしまいます。発芽までは乾燥しないように気を付けて随時水やりをします。芽が出たあとは日当たりの良い場所に置いてがっちりした丈夫な苗に育てましょう。
タイムの間引き
芽が出て、葉が混み合ってきたら元気の良い株を残して間引きます。少なくともお互いの葉が絡みつくほど大きくなる前には間引くようにしましょう。小さな苗床に複数種をまいている場合は、ポットに植え替えてさらに大きな苗に育ててもいいでしょう。
タイムの定植
タイムは酸性土壌を嫌うため、定植の2週間前までに石灰を入れて耕しておきます。堆肥(たいひ)もこのときに投入しましょう。定植前には元肥を入れ畝を立てます。プランターの場合は野菜用培養土や、観葉植物用の土も使えます。
草丈2センチごろから定植できます。定植する際は根つきを良くするために苗にたっぷりと水をやっておきます。根が絡み合っている場合は軽くほぐしてから植えるとよいでしょう。畑では25センチ間隔に、プランターでは20センチ程度の鉢なら1株、65センチの横長のプランターならば3株を目安に植え付けます。水はけを良くするために鉢底石は必ず入れるようにします。
花壇に植える場合は水はけを良くするために高さ10センチ程度の畝を作ってから植え付けるといいでしょう。水はけが悪く蒸すような場所では特に、夏場に株が弱り枯れやすくなってしまいます。溝を掘る程度でもいいので、花壇の中で水はけが良くなるような工夫をしましょう。そうすれば生育もぐっと良くなります。
タイムの管理
湿気を嫌うので水のやりすぎに注意します。花壇など露地で育てている場合は基本的に水やりをする必要はありません。特に日照り続きで乾いたときにだけあげるようにしましょう。鉢植えの場合は土の表面が乾いてからたっぷりと与えます。冬場は成長もゆっくりなので、土の表面が乾いてから1~2日して与えるくらいで大丈夫です。
春から夏にかけては生育が特に旺盛なので追肥をします。化成肥料を株元にまくか、規定の倍率に薄めた液肥をじょうろでやりましょう。一般的に肥料のやりすぎは香りの低下を招きます。また、タイムは肥料がたくさんあればぐんぐんと大きくなりすぎてしまう心配もあるので、それほど肥料をやる必要はありません。
タイムの収穫
先端部分の15センチ程度を収穫します。切ったところからは脇芽が出てきて、どんどん枝分かれして育ちます。タイムの茎の根元部分はだんだんと木質化し、木の枝のようになる性質があります。この枝のような部分まで切ってしまうとなかなか新しい芽が出てこないので、収穫で切るのは緑色のところにしておきましょう。
タイムの剪定(せんてい)
タイムの株の内側は葉が混み合って蒸してしまうことがよくあります。これを放っておくとだんだんと内側が枯れていきます。タイムは通気性の良いところが好きなので、ムシムシした環境は苦手なのです。そこで葉が生い茂る前に、もしくは生い茂ったらすみやかに混み合った部分を切り上げるとぐっと生育が良くなります。具体的には春先、花の後、猛暑期、晩秋など、年に3~4回短く切りそろえるとよいでしょう。芝生を刈るように、長く伸びた部分や鉢から垂れ下がっている部分をバッサリと切ってしまって構いません。茎の下のほうには新芽がついているので、またすぐに元気な葉っぱが出てきますよ。
タイムの株がまだ小さいときは、木質化した枝の部分まで刈り込むと枯れることがあるので注意が必要です。ただし、すでに枯れた部分がある場合は木質化したところまで刈り取ってしまってかまいません。たくさん収穫したタイムは束にしてつるしてドライハーブにしたり、袋や容器で密封して冷凍保存することも可能です。オイルやビネガーに漬けて香りを移すのもいい方法でしょう。
タイムの植え替え
タイムは多年草のため何年も栽培を楽しむことができます。毎年どんどん大きくなるので、できれば毎年鉢を植え替えてあげればもっと元気に育ちます。地植えでも3~4年に一度植え替えたほうが株が若返ります。このとき、大きくなっている株を分けて植え替えれば、どんどん株を増やすことも可能です。
まず先ほどの剪定の要領で、伸びた葉っぱは刈り込んで短くそろえます。次に鉢をひっくり返して株を抜き、根を手で崩します。根っこがぐるぐる絡まって巻いているところは切り落として大丈夫です。株元の枯れた茎は取り除き、根をほぐしながら株を分けます。それを新しく用意した鉢に植え替えて水をたっぷりやれば完了です。
タイムの主な病害虫
アブラムシやハダニ、ヨトウムシなどがよく来る害虫です。ひどい場合は家庭菜園用の農薬などで対処します。ハーブに使用できるとして登録されている農薬は非常に少ないので注意が必要です。ヨトウムシは大食漢のため見つけたらすぐにつまみ出しましょう。
病気ではうどん粉病、灰色かび病などになります。病気になったら他の株にうつらないように、その部分を切り取って処分します。湿気が多いと病気になりやすいので、通気性や排水性の確保が重要です。
タイムにはもっとも一般的なコモンタイムのほか、レモンの香りがするレモンタイム、葉の縁が白くかわいらしいシルバータイム、日本在来のイブキジャコウソウなど数多くの品種があります。梅雨からお盆までの蒸し暑い時期さえ乗り越えてしまえば増えすぎて困るほど生命力の強いハーブです。ぜひハーブ初心者も苗を買ってきて気軽に栽培を楽しみましょう。