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客数がじりじり減っている? 人口減でも客層を広げて、客数を増やすには【直売所プロフェッショナル#41】

客数がじりじり減っている? 人口減でも客層を広げて、客数を増やすには【直売所プロフェッショナル#41】

直売所を複数展開する民間ベンチャーの創業者たちが、直売所運営のイロハについて事例をまじえて紹介していく連載。第41回は、人口が減少するなかでの顧客の入れ替わり、客層の拡大について。

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何もしなければ、客数は減少していく

経営において、客数はとても重要なファクター

売り上げを考えるにあたり、客数と客単価に分けるのは一般的な考え方でしょう。かくいう私たちも、売り上げを客数と客単価に分けて、それぞれを見るようにしています。その際に、どちらをより重要視しているかというと客数です。客数は、どれだけのお客様から支持を得ているかの指標です。客単価を上げるのは短期的な効果を得やすいのですが、気をつけなければ既存のお客様の満足度を高めることばかりに集中することになりかねません。もちろんそれは大事なことですが、中長期的には客数が増えなければ、店舗経営はジリ貧になっていきます。そして、客数というのは油断すると簡単に減少してしまうものです。

何もしなければ、顧客は確実に減少する

近年、日本全体で見れば人口が減少局面を迎えています。しかも、高齢化が進んでいるということで、胃袋も小さくなっています。一方で、コンビニやスーパーなどの、食品を販売する小売店は増加の一途をたどっています。さらに、最近ではネット販売も普及し、食品を販売するプレーヤーは多様にもなっています。つまり、食品の需要は少しずつ小さくなっているはずですが、供給する側はまだ増えて多様化しており、競争は激しくなるばかりです。
(直近ではコロナの影響で、調理需要が増えていますが、一時的なことかどうかはまだわかりません。)

一方で、お店単体で見ても、何もしなければ顧客はだんだん減っていきます。なぜなら、お店の既存顧客は自然減していくためです。引っ越しや老人ホームへの入居などライフステージの変化により、お店への支持とは関係なく離れてしまうということは起こります。既存のお客様というのは、必ず減っていくのです。

このように、食品の市場は競争が激しくなる一方であり、たとえ支持してくれている既存のお客様でも、ライフステージの変化などで自然と減少します。主体的な行動がなければ、顧客は確実に減少してしまうのです。

データ

客層を広げるために

潜在層へのアプローチを常に意識

では、どうやって客層を広げればよいのでしょうか。現時点では来店していないお客様を意識しながら、来店してもらうための工夫を考え続けるのが大事です。

販売促進においては、どうやってまだ来店していないお客様にも知ってもらい、足を運ぶ動機を付けるかが重要です。定番の折り込み広告やポスティングも効果があると判断できるようならやるべきでしょう。既存の顧客の年齢層が高めで、もう少し若い客層にもアプローチしたいということであればSNS活用も有効かもしれません。野菜を利用している飲食店があれば、そこにお店のチラシを置いてもらうのもよいと思います。既存のお客様とは違う人の目に入るためには何をすべきかを常に考えて、情報を発信することが重要です。

商品構成を考える上でも、新しいお客様をイメージしなければなりません。日々の経営においては、どうしても目の前のお客様のことを考えて行動してしまいます。特に、商品への要望は店頭で聞くことが多いので、自然と今のお客様のニーズに合わせていくことになります。もちろん、それ自体は悪いことではありませんが、常に新しい客層を獲得するためには、別のニーズに対応する商品構成も必要です。例えば、共働き世帯が利用しやすくなるようにするのであれば、少量の規格を用意したり、簡単に食べられる野菜(ゆでるだけ、生食など)を生産者に栽培してもらったり、野菜と一緒に炒めるだけで完成する「○○の素」のようなものを用意したり。お店としての大きな方針はぶれさせずに、利用する客層については常に意識し、商品構成を検討し続けなければならないのです。

もっと構造的なことに目を向けることも重要でしょう。先ほどの共働き世帯の話では、仕事帰りの人をターゲットとするなら、営業時間が17時まででは来客を期待できません。18時や19時まで営業することが必要でしょう。もちろん、その場合には夕方にも野菜が並ぶ状態を作る必要もあります。
逆に、朝に行動している人を狙って営業時間を早めるということも考えられるかもしれません。駐車や駐輪のスペースが十分か、店舗内でベビーカーが通りやすいかなど、問題を解消することで既存の顧客とは違う層を獲得できないか、店舗の構造から考えてみるのは有意義です。社会が変化していく以上、店舗の構造についても、常にチェックする意識を持つ必要があります。

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最初の出会いが重要

このように、客層を広げるための工夫をした結果、新規顧客が来店した場合、次に重要なのは最初の印象です。感覚的な話にはなりますが、短い期間で何度か来店したお客様は、自然とリピーターになることが多いように思います。そういう意味でも、最初の数回、特に初回来店時に楽しく買い物をしてもらい、「良い買い物だった」と思ってもらうことがとても大事なのです。
そのためには、初めて来店したお客様が買うべき、間違いのない商品が明確になっている必要があります。最も自信がある野菜(商品)をはっきり打ち出しましょう。間違いなくおいしく食べてもらえるように、簡単な食べ方もきちんと説明をつけましょう。そして、お客様の「最初の出会い」は毎日のように発生していることを肝に銘じて、日々の仕事に取り組む意識を持ち、すてきな「最初の出会い」を提供できれば、そのお客様はお店のファンになり、リピートしてくれます。

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来客の山を意図的に作る

来客が多いタイミングを逃さない

お店には来客が多いタイミングがあります。例えば、年末。年始の準備で多くのお客様が訪れます。そして、それは店にとってリピーターを獲得するチャンスです。こういうイベントのタイミングは、普段あまり来店しないお客様やたまにしか来店しないお客様が来ることが多いためです。その時に楽しい買い物体験を提供できれば、そのあとも来店してもらえる可能性が高まります。下手に販促に費用をかけるよりも、このようなタイミングに満足度を高めるための施策をしっかり行う方が、効率は良いかもしれません。

来客の山を意図的に作る

私たちは、このような平時より大きな客数を意図的に狙う日を作るようにしています。来客の山を作るのです。ありがたいことに、直売所には関係のあるイベントがたくさんあります。農産物には旬がありますし、伝統文化に結びついた食イベントも豊富です。新米フェアでもよいですし、秋の収穫祭でもよいです。お彼岸に特別な限定おはぎを販売するのもよいでしょう。朝どれトウモロコシのフェアなども効果的です。これらをうまく活用しながら、折り込み広告などとも組み合わせて、定期的に来客の山を作りましょう。そして、その際に楽しい買い物を提供することができれば、じわじわと客層は広がって行くはずです。

文旦

イベントができるくらい人気の文旦

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