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米・野菜以外の重要商材! 集客のたまご、利益のハチミツ【直売所プロフェッショナル#31】

米・野菜以外の重要商材! 集客のたまご、利益のハチミツ【直売所プロフェッショナル#31】

直売所を複数展開する民間ベンチャーの創業者たちが、直売所運営のイロハについて事例をまじえて紹介していく連載。第31回は、直売所の重要商材であるたまごとハチミツについて。

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密かな優等生たまご、地元農業の象徴的存在ハチミツ

直売所に行く楽しみといえば、新鮮な野菜や農家さん手作りの総菜や加工品が最初に思いつきますが、実は新鮮な「たまご」もそれらに負けず劣らず魅力的です。また、直売所側にとっては一年中安定的に入荷するうえ毎日使うものなので購入頻度が高く、比較的差別化もしやすいため、重要かつ手をかける価値のある商材と言えます。一方、農業において重要な働きをするミツバチが集めてくるハチミツは、単価が高いので商売上の重要性はもちろんなのですが、それ以上に象徴的な商品です。表現が難しいのですが、地元で良質なハチミツがとれていてそれを楽しむということ自体に、価値があります。今回は、直売所においてそれほど注目されないたまごとハチミツについて、詳しく考えていきたいと思います。

人気のたまごが、直売所の集客力を高める

私たちの直売所には、うまれたばかりの新鮮なたまごが入荷します。創業以来の定番であり、根強い人気を誇ります。実際、売上比率で5〜10%になる店舗もあるくらいですし、品目別の年間販売額で見ると、トマトやブロッコリーといったメイン野菜に近い売り上げになります。そして、実は年々たまごの売り上げは増えています。まず、私たちの直売所を例に取りながら、たまごの魅力や売り方について見てみましょう。

私たちの直売所では、東京都日野市の由木農場、立川市の伊藤養鶏場という2つの養鶏場から入荷するたまごを販売しています。それぞれ、こだわりが明確に違うのがおもしろいです。由木農場のこだわりは、飼料にお米を混ぜ、黄身を着色するための色素は使わないこと。その結果、黄身は薄いレモンイエロー色で味もクセが少なくさっぱりしています。鶏の品種は純国産種の「さくら」で、たまごの殻の色は、ほんのりピンク色。一方、伊藤養鶏場では味・色ともに濃厚になるように飼料を調整。黄身の色はオレンジ色に近く、味も濃くネットリしています。鶏の品種は「さくら」と同じ後藤孵卵(ふらん)場が供給している「もみじ」で、殻の色は濃い茶色です。このように、農業が盛んとは言い難い東京でも、近くに2つの養鶏場があり、それぞれにこだわりがあります。

たまごの黄身

地元の養鶏場でもこれだけ違う。左が由木農場、右が伊藤養鶏場

このようなことは、一般小売店でたまごを購入するときにはなかなかわかりません。パッケージのみが情報源になるため、どうしてもその情報は栄養価やエサに○○を混ぜていますみたいなものになりがちですが、実際にはそれだけではありません。私は、たまごの差別化要素は主に4つ挙げられると思います。

  • 鮮度
    収穫してから店頭に並ぶまでの日数。うまれたてが良いかには賛否もありますが、新鮮なものが喜ばれる傾向にはあります。
  • エサ
    鶏に与えているエサ。黄身の色はエサで決まりますし、食味の大部分もエサによる影響が大きそうです。
  • 育て方
    平飼いかそうでないかを気にするお客様も多いです。
  • 品種
    食味への影響についてはいろいろな意見がありますが、養鶏場は品種を選んでいます。

このように、たまごは比較的差別化をしやすい商材なのです。お客様としっかりとコミュニケーションを取れれば、その魅力はきちんと届くはずです。そして、たまごは定期的に食べる家庭が多いので、一度ファンになってもらえると定期的に足を運んでもらうフックとしての機能も果たします。多くの直売所には、地元の養鶏場が出荷するたまごがあるはずです。そのたまごの魅力を再確認し、きちんと発信することが重要でしょう。

そのための有効な施策の一つが、パッケージの検討かもしれません。たまごは一年中販売できますし、比較的品質も均質性を保ちやすいものです。そのため、パッケージをきちんと作り込むメリットが大きい商材です。実際、私たちは由木農場さんにはオリジナルパッケージを作らせていただきました。

さくら米たまご

私たちの直売所「しゅんかしゅんか」のオリジナルパッケージ

パッケージデザインを見直す作業は、たまご自体の魅力を再発見する機会にもなります。また、農家にとっても自分達の強みを再確認することにも。

パッケージデザインは一例ですが、地元にあるたまごの魅力を改めて把握し、きちんと発信してお客様に伝えることがとても大事です。

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支持を得やすく、単価が高い地元ハチミツ

次に、ハチミツについて考えていきます。

私たちの直売所では、地元のハチミツは密かに人気です。毎年、春ごろになると農家の在庫も底をついてしまい、春のハチミツがとれるまで販売ができなくなる年も珍しくないほどです。そして、単価が高いもの(サイズによって1000〜5000円)なので、経営上もとても大事な商材です。

ハチミツ

まず、多くの直売所において、地元のハチミツは何もしなくても支持を得やすい可能性が高い商材ではないかと思います。なぜかというと、「非加熱の混ぜ物のない」ハチミツを求めているお客様がとても多いためです。おそらくですが、直売所で販売されるハチミツの多くは、農家が野菜栽培の傍らで養蜂をしたものが出荷されていると思います。その場合、少なくとも私たちの経験では、みなさん加熱もしないし、ましてや何かを混ぜるということはしていません(ただし、冬に固まったハチミツを溶かすために加熱するかもしれないのでその点は注意が必要)。
そのことをきちんと発信するだけで、お客様が求めているハチミツだと気づいてもらえることが多いです。さらに、専門の養蜂場でない限り、ハチミツの内容としては「季節の百花蜜(多くの種類の花からとれた蜜。雑花蜜)」ということがほとんどだと思います。こちらも地元の雑花蜜であることを逆手に取れます。「地元のその季節の恵みが詰まった蜜」というのはそれだけで魅力的なものです。単花蜜を作るのは難しいですが、雑花蜜なら自然にでき、それこそが地元の花の蜜だけでできたハチミツということの証明にもなるのです。

これらの特徴を生かすために、ハチミツについてもきちんとその背景を直売所が把握し、きちんと発信することが大事です。加熱していないハチミツならそのことをきちんと発信するのはもちろん、季節の百花蜜であれば「いつ」採蜜したもので「何の花の蜜が」混ざっている可能性が高いかも伝えられると説得力が増すうえ、味の違いを楽しみやすくなります。

その上で、養蜂のこだわりについても触れられるとおもしろいと思います。養蜂は奥深い世界。これは農家によりますが、殺虫剤などをなるべく使っていない、蜜が少ないときの対処法が違うなど、一つのハチミツの後ろにはいろいろなこだわりがある可能性があります。農家さんは意外とその辺のことを発信する意識が高くないことも多いので、きちんと把握するために取材するのも有効です。たまご同様、パッケージデザインまで踏み込むのも良いと思います。私たちの直売所で販売している「国立(くにたち)養蜂」のハチミツは、かわいいデザインで多くのお客様に認知されています。

国立養蜂

デザインもかわいい、「国立養蜂」のハチミツ

農業への思いをはせる商品としての、ハチミツ

最後に、目の前の直売所経営への貢献とは別に、ハチミツを販売する価値について触れさせてください。

ご存じの通り、ハチミツは蜂が集めてきた蜜です。そして、現在販売されているハチミツのほとんどは西洋ミツバチによるもの。ミツバチが環境指標生物であるということには賛否もありますが、農作物の受粉に関わることは事実。地元のハチミツを食べることは、その地域の環境や農業に思いをはせるきっかけになると思うのです。だからこそ、銀座や原宿でも養蜂が行われ、ハチミツがとられているのだと思います。

地元のハチミツを多くのお客様に届け、それを楽しんでもらうというのは、地元の環境や農業について興味を持ってもらうきっかけとしてとても重要なことなのです。

養蜂箱

蜂

農業の象徴的な存在であるハチ

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