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農業で外国人を雇用するには? その方法とメリット、注意点を解説

農業で外国人を雇用するには? その方法とメリット、注意点を解説

深刻な労働力不足を補う存在として、注目されている外国人労働者。農業分野ではどんな外国人の受け入れが認められているのか、注意したいのはどんな点なのかをご紹介します。

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外国人の雇用とは?

2020年に公表された農業センサスの概数値によると、日本の基幹的農業従事者(仕事が主で、主に自営農業に従事した世帯員)は136万1000人で、5年前に比べ39万6000人(22.5%)減少しました。高齢化も進み、65歳以上が占める割合が69.8%となっています。

そういった深刻な労働力不足を補う存在として、注目されているのが外国人です。

外国人を雇用することで、人手不足の解消などが期待できる一方で、受け入れる際には留意しなければならないポイントもあります。農業分野ではどんな外国人の受け入れが認められているのか、注意したいのはどんな点なのかをご紹介します。

外国人を雇用する際の注意点

外国人を雇用するには、どんなことに留意しなければいけないのでしょうか。

日本で働ける在留資格が必要

外国人を雇用する際に必ず必要なものは、在留資格です。在留資格とは、外国人が日本に入国・在留するために必要な入管法(出入国管理及び難民認定法)上の法的な資格です。就労や留学など日本で行う活動によって取得できるものと、身分や地位に基づくものとに分けられます。

就労が認められる在留資格には教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、特定技能、技能実習があります。これらの在留資格を持つ外国人は、日本で就労ができますが、決められた職種以外の仕事に就くことはできません。

また留学、研修、家族滞在、文化活動、短期滞在は、原則として就労ができませんが、資格外活動許可を取得することで就労が可能となります。

そのほか、特定活動という在留資格のうち、ワーキング・ホリデー制度を利用して来日している外国人は就労可能です。

身分や地位に基づく資格には、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者があり、これらの在留資格を持つ外国人は日本での就労に制限はありません。

国籍や人種による差別は禁止

外国人の募集をする際には「○○国の人のみ募集」といった国籍や人種に基づいた募集を行うことはできません。仕事内容に即して、「中国語の堪能な方、歓迎」といった形で経験や技術を条件に掲げるようにしましょう。

勤務条件についても日本人と同等の条件で雇用しなければいけません。労働基準法は外国人にも適用され、第3条(均等待遇)では「労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」とされており、国籍や人種を理由に労働時間や給与などを決めることは禁じられています。

職場環境や生活面のサポートが必要

日本語が十分でない外国人には住居の用意や日常生活のサポートなどの環境を整えるためのサポートも欠かせません。現場でも力が十分に発揮できるように、安全衛生の確保や適切な人事管理や教育、福利厚生を行うことが大切です。

また、日頃の声かけやコミュニケーションを密に取り、外国人が孤独に陥らないように心理面でのサポートも行っていくようにしましょう。

文化や習慣、仕事観の違いを理解する

外国人を雇用し、共に働くために心に留めておきたい言葉に、多文化共生があります。

これは、国籍や民族などが異なっていても、互いの文化的な違いを認め、対等な関係を築き、共に生きていくことを意味します。日本の価値観を一方的に押し付けるのではなく、理解し合えるためにどうすればいいのかを常に考えることが、外国人を雇用する農業法人や農家にも必要となるのです。

外国人を雇用すると、日本では常識と思っていることが国によって随分違うことに気づくでしょう。たとえば、始業時間を守るというルールも、多少の遅刻は当たり前という社会で育った人にはなかなか理解しにくい面があります。頭ごなしに「遅刻はダメ」と教えるのではなく、時間を守ることがなぜ大切なのをていねいに伝えていかなければなりません。

また文化や宗教的な価値観を尊重した職場づくりも大切です。食べ物一つをとっても国や宗教によって食べる習慣がなかったり、禁じられている物があったりするなど、日本の生活では想像しにくい場面に遭遇することもあります。そういった場合は、相手の価値観を尊重することはもちろんですが、雇用する側も相手の文化や宗教を学ぶ姿勢が必要です。

農業での採用が可能な外国人は

農業分野で雇用することができるのは、次の在留資格を持つ外国人です。

  • 特定技能
  • 技能実習
  • 留学

このほか、日本での滞在資金を補うための付随的な就労が認められているワーキング・ホリデーの特定活動もありますが、ここでは上記3つについてそれぞれどんな条件で働くことが可能なのかを紹介していきます。

優良な農業者や農業法人なら最大5年の実習が可能な「技能実習生」

外国人技能実習制度は、発展途上国の経済発展や産業振興の担い手となる人材を育成する公的な制度です。発展途上国からの人材を技能実習生として一定期間受け入れ、実務を通して技術や技能・知識を習得させ、帰国後に母国の経済発展に役立ててもらうことが目的で、人材育成を通した国際貢献と国際交流の一環として行われています。

技能実習生を希望する実習実施者(農業法人や農業者)は、法務大臣の許可を得た監理団体(JAなど)を通じて受け入れることができます。入国後は労働基準法に基づいた雇用関係を結び、基本は3年。優良な農業者や農業法人と認められれば最大5年間の技能実習が可能です。

技能実習生を受け入れるには?

受け入れ可能な作物や生産物は?

技能実習生の受け入れを希望する際には、実習計画を作成し、技能実習機構に申請、認定を受ける必要があります。

受け入れ可能な職種は大きく耕種農業と畜産農業に分かれ、さらに施設園芸、畑作・野菜、果樹、養豚、養鶏、酪農の6つの作業に分かれています。相互に関連し、複数の職種・作業を行うことに合理的な理由があれば、3つの職種・作業までの技能実習が可能です。また農作業以外に農産畜産物を使用した加工作業や販売作業も技能実習として行うことが可能な場合もあります。

また、技能実習制度は日本の最先端の農業技術の学びが目的であるため、同じ実習先で同じ職種作業をすることが原則です。しかし、4年目になる際に必要な条件をクリアすれば農業法人や農家を変更してもよいとされています。

知っておきたい技能実習生を保護するための罰則規定

技能実習生の保護のために、人権侵害行為などについては禁止規定が設けられ、違反に対する罰則規定が定められています。技能実習の強制や私生活の自由を不当に制限する行為はもちろん、パスポートや在留カードを監理団体や実習実施者が保管することも禁じられています。人権侵害行為を行った場合は、内容に応じて1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金などの罰則が規定されています。

即戦力として働ける専門性と技能が認められて取得できる「特定技能」

特定技能とは?

特定技能は2019年に新たに創設された在留資格です。対象は一定の専門性や技能を持つ18歳以上の外国人で、農業や介護、建設など14種の分野での受け入れが認められています。

受け入れの形態は、大きく分けて2つ。農業法人や農家が受け入れ機関として直接外国人を雇用する形と、派遣事業者が受け入れ機関となり外国人を派遣してもらう形です。JAなどが外国人を雇用し、地域内の農業法人や農家から農作業を請け負い、外国人がその業務に従事することも可能です。

受け入れ可能な作物や生産物は?

受け入れ可能な農作業は、耕種農業全般の作業(栽培管理、農産物の集出荷、選別など)と、畜産農業全般の作業(飼養管理、畜産物の集出荷、選別など)です。これらの業務内容には栽培管理または飼養管理の業務が必ず含まれていなければなりません。

また、加工や運搬、販売、冬の除雪作業などでも、同じ農業法人や農家で作業をしている日本人が従事していれば、付随的に携わってもよいとされています。

技能実習生からの在留資格の変更も可能

現在、技能実習生を受け入れているなら、在留資格を特定技能に変更することで引き続き受け入れることも可能です。この場合、実習修了前に実習生本人が在留資格変更許可申請を行い、認められればそのまま移行できます。

また以前は技能実習生として在留し、現在は帰国しているOBを特定技能外国人として受け入れることも可能です。この場合OBとの雇用契約を締結後、最寄りの地方出入国在留管理局に在留資格認定証明書の交付申請を行い、認められれば特定技能の在留資格を取得できます。

日本で働ける期間は通算5年

特定技能の在留資格で働くことのできる期間は通算で5年と定められています。通算ですので5年間継続して働いてもらってもよいですし、農閑期には本国に帰国し、農繁期に再入国するという形を繰り返すことも認められています。この場合、最大10年目までの間に通算で5年働くことが可能です。

また在留期間が通算5年を超えなければ、最初の雇用主との契約期間が終わった後、別の農業法人や農家と雇用契約を結び、働くこともできます。

週28時間までなら就労可能な「留学生」

留学生が働くために必要な資格外活動許可

留学生は日本で学ぶことを目的に在留している外国人です。そのため原則として就労は認められていません。ただし、来日後に「資格外活動許可」を申請、認められることでアルバイトが可能となります。この資格外活動許可を受けていない外国人留学生を就労させることは違法です。

外国人留学生を採用する場合は、在留カードの裏面に、資格外活動許可を受けている旨が記載されていますので、必ず確認するようにしましょう。

また資格外活動許可を取得していても、風営法(風俗営業等の規則及び業務の適正化等に関する法律)第2条第1項で定められたパチンコ店、ゲームセンター、マージャン店、キャバレー、スナックなどの風俗営業に当てはまるアルバイトを留学生がすることは禁止されています。

就労は週28時間まで、長期休暇中は1日8時間まで可能

資格外活動許可を認められていても学業の妨げにならないよう、外国人留学生にはアルバイトの時間制限があります。入管法では1週間で28時間までと規定されています。複数のバイト先で働いている場合は、すべてを合計した労働時間を28時間以内にしなければなりません。

就労時間を超過した場合には雇用者も罰則の対象に

上記のとおり、たとえ資格外活動許可が認められていても、留学生が規定の就労時間を超えて働くことはできません。もし違反した場合は、不法就労助長罪として、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が雇用主やあっせんした人に対して科せられます。留学生も資格外活動の罰則として、1年以下の懲役もしくは禁錮、または200万円以下の罰金を科すとされています。

外国人採用の受け入れポイントとは

外国人の受け入れ状況には、これまで多くの課題がありました。
日本企業への外国人材就労支援事業を行う株式会社マイナビグローバルの畑芳和(はた・よしかず)さんによると、技能実習では、これまで業務範囲を超えた業務指示や給与の不払い等による法令違反が多く、指導・摘発になるケースが散見されてきたといいます。「2019年に施行された特定技能では、このような制度上の問題が解消され、業務範囲が拡大し適正な運用がしやすくなっています。今後は特定技能の活用に目を向け活用を進めていきましょう」(畑さん)

外国人を雇用するうえで受け入れ側が知っておくべきことは多数あります。良い職場環境をつくれるよう、活用方法を知り体制を整えることが大切です。

マイナビグローバル 畑さん

マイナビグローバルでは、農業で外国人採用を検討する農業経営者や採用担当者へ向けて、外国人材紹介や支援サービスについての説明資料をお送りしています。採用に関する相談にも応じておりますので、ぜひお気軽にお問合せください。

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