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【農の雇用事業】研修の助成金を受け取るには? 押さえるポイントはここ!

【農の雇用事業】研修の助成金を受け取るには? 押さえるポイントはここ!

農業を仕事としてやりたいという人は徐々に増加しています。その結果、既存の農業法人などでも新規就農者を受け入れることが多くなってきています。とはいえ農業を仕事にしていくにはさまざまな知識やスキルが必要となります。そんな新規就農者のスキルアップをサポートする制度が、「農の雇用事業」と呼ばれる制度です。今回は、農の雇用事業の制度について具体例を交えながら見ていきます。

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農の雇用事業とは

農の雇用事業とは、農業を仕事として目指す若年層の雇用や独立を促進することを目的とするものです。具体的には、農業法人、農業を行っている会社、農家である個人事業主などが新規就農者を受け入れて、その人に対して研修を実施した場合に、研修にかかったコストを助成してもらえるという制度です。

農の雇用事業は以下の3つのタイプに分かれています。

雇用就農者育成・独立支援タイプ

農業法人などが、新規就農者を雇用して、その人に対して行った研修の費用を助成するタイプです。

農の雇用事業の3タイプの中でも最も利用が多いのが、この雇用就農者育成・独立支援タイプです。過去の助成金の採択結果を見てもほぼ99%以上が、このタイプでの採択となっています。

主な要件としては、以下の通りです。

1. 正社員として雇用すること
正社員なので、労災保険・雇用保険のほか、法人であれば社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入も必要となります。

2. 雇用就農者は、原則として年齢が49歳以下であること
これからの農業を長い期間にわたって担う人が対象なので、年齢制限が設けられています。

3. 雇用就農者は、農業の就業経験が原則として5年以内であり、研修修了後も農業に携わる意思を持っていること
就業期間については、履歴書などで確認が行われます。ある程度農業のキャリアを積んだ人に対して研修を行うことは、それほど高い効果が得られるとは考えられないので、このような制限が設けられています。

4. 雇用就農者は、研修開始時点で正社員として4カ月以上継続して雇用されていること
つまり、雇用してすぐに行う研修については、助成対象にできないということです。研修を開始するスケジュールについては、雇用のタイミングであらかじめ決めておきましょう。その際には後述の通り、募集期間が決まっているため、そのあたりも含めて検討しておく必要があります。

新法人設立支援タイプ

農業法人などが農業法人設立を目指す新規就農者を新たに雇用し、その人に対して行った研修の費用を助成するタイプです。雇用就農者育成・独立支援タイプにも独立支援のメニューがありますが、新法人設立支援タイプは独立の形態が農業法人に限られています。

基本的な要件は雇用就農者育成・独立支援タイプと同じですが、研修修了後1年以内に農業法人を設立する意思を持っているということが要件に加わります。

次世代経営者育成タイプ

農業法人などが、その従業員を別の先進的な農業法人や異業種の法人に派遣して行う派遣研修の費用を助成するタイプです。

その名の通り、農業法人の経営をいずれ担ってくれる人を育てるための研修を実施する事業主に対して助成するものです。ほかの2タイプに比べて、派遣の受け入れ先が必要であるなど実施のハードルは高いものといえます。

それぞれのタイプの研修期間や助成額をまとめると以下のようになります。

研修期間 助成額
雇用就農者育成・独立支援タイプ 最長2年 年間最大120万円
(最大助成額240万円)
新法人設立支援タイプ 最長4年 1、2年目:年間最大120万円
3、4年目:年間最大60万円
(最大助成額360万円)
次世代経営者育成タイプ 最長2年 年間最大120万円
(最大助成額240万円)

※ 障害者など一定の条件を満たす人に対して行った研修については加算が行われます。

食の雇用事業を利用する際にはここを押さえよう!

助成は、実際に支出したあとに行われる

助成金は新規就農者等への研修に対してもらえるお金です。しかし、研修を行えば誰でも定額でもらえるというわけではなく、研修にかかった費用について補てんしてもらえる制度だということを理解しておきましょう。つまり、研修費用の支出が発生してから、後日助成金の形で助成額の範囲内で研修費用の助成が行われるということになります。まずは研修にかかる費用は事業主が支払う必要がありますので、その面での必要資金は確保しておきましょう。

費用の精算は、基本的に4カ月ごとに行われます。研修を行った農業法人などは4カ月ごとに実際にかかった研修費用が分かる書類(領収書など)や、研修記録を添えて交付申請を行います。そこから、書類の審査が行われ、数カ月で助成金が支給される流れとなります。

対象となる経費が決まっている

研修を実施するにはさまざまな経費が掛かります。その中でも助成の対象となる経費は決められています。主な対象経費は以下の通りです。

研修時間中の研修を受ける従業員への人件費
研修を行う従業員や役員への人件費
研修を行うためのコンサルタント等への報酬
研修テキストの印刷費
研修を行うための交通費などの旅費
など

研修を実施するために要した費用についてはおおよそ助成されることになります。

ただし研修外でも使用する通常の業務の流れの中で購入したものは、たとえ研修で使用したとしても対象外となる可能性があります。例えば新規に雇用した人全員に渡す仕事のための道具などは研修のための支出とはいえないので、助成の対象とはならないという点に注意しましょう。

募集期間が決まっている

研修開始の時期に合わせて、事前に計画書などを提出できる募集期間は決まっています。この募集期間中に書類を提出できないと、せっかく研修を行っても助成金の対象外となってしまいます。あらかじめ募集スケジュールを確認して、研修を開始する時期に対応する募集期間中に、間違いなく書類を提出するようにしましょう。

活用事例を見てみよう

農業に限らず、どのような仕事でもそうですが、未経験者を定着させることは難しいものです。特に最初にしっかりと仕事の内容を理解してもらえないと、その仕事の魅力がうまく伝えられないまま、モチベーションの低下などにもつながり、やがて離職といったことにもなりかねません。

そこで、A法人では、雇用就農者育成・独立支援タイプを活用して、計画的な研修を行うことで人材の定着率の向上を目指しました。

研修1年目は、機材の整備や栽培技術といった農業の基礎的な部分を身に着けてもらい、研修2年目は、苗や種の選別から、収支の確認といった経営的なスキルまでを学んでもらいました。

助成金を受けられるため、研修もより充実した内容で行うことができ、新規就農者にも農業の仕事を計画的に身に着けさせることができ、雇用の定着につながりました。

また、助成金があることで、じっくりとスキルを身に着けさせることができるので仕事への理解度も深まり、農業を行ううえでのキャリア計画にも役立っています。

まとめ

農業はオフィスワークなどの仕事とはまったく異なります。そのため、農業でのキャリアを志して異業種から新規就農する人が、実際に働いてみると理想と現実の乖離(かいり)に悩むことも多くあります。一方、農業の経営側では、新規の就農者のトレーニングに割けるコストなどもそれほど潤沢にあるわけではありません。

農の雇用事業は、そのようなギャップを埋める存在として、多くの農業法人などで活用されています。これから新規就農者を受け入れようとする農業法人などもぜひ活用して、人材を定着させて農業人口を増やしていきましょう。

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