農家も気になる空調ウエア
農作業にとって一番のストレスといえば、やはり夏の厳しすぎる暑さ。ただでさえ日本の夏はジトッと湿度が高く暑い! 日陰も何もない場所で作業を強いられる農業は、もはや苦行です。
就農してまだ3年のぼくですが、毎年の暑さは本当に嫌になります。いかに仕事とはいえ、イヤなものはイヤ。少なくとも日中の作業は避けますし、暑すぎる日はそもそも休みをとったりします。正直エアコンの効いた部屋で涼みつつ、機械にでも作業を任せたいところですが、現実は厳しいものです。
夏にかけて野菜たちは急成長。ついでに雑草たちも急成長。防除しても湧いてくる虫たちに、呼んでもいない動物たちが大集合。農家にとってこれからの時期はやることだらけです。
空調ウエアって?
夏のたびに「暑い。空調ウエア欲しい」と繰り返し言葉を発する機械と化していたぼく。それなのに「なんか気化熱がどうのとかいってたな~」くらいの知識しかありませんでした。そんなとき、マイナビ農業編集部から「空調ウエアの取材をしませんか?」と依頼が!
せっかく販売会社にお話を聞けるというのに、これはまずい!と思い、いろいろと調べたところ……マイナビ農業に素晴らしい記事があがっておりました。「空調ウエアってなに?」という人は、ぜひそちらも合わせてどうぞ。
農家からの問い合わせが増えている
今回取材をしたのは作業着を専門で販売する店舗やネットショップを運営する株式会社フジワーク。もともと工事現場で働く人などに向けた商品を取り扱っており、その一環で空調ウエアを販売しています。しかしここ最近は、夏の異常な暑さもあり、農家からの問い合わせが増えているとのこと。
問い合わせの内容としては、
・ビニールハウスでも使えるものはある?
・遮熱効果が高いものが欲しい!
・カジュアルなデザインのものが欲しい!
などのように、空調ウエアを初めて買うといった人からの問い合わせが多いそう。
中には「空調ウエアについて詳しくないから、選んでほしい!」というようなものもあり、まだまだ農家への空調ウエアの浸透度合は低そうです。
2021年オススメ! 去年よりパワーアップした空調ウエア
フジワークの北川さんに昨年の商品と違うところを聞いてみると、「よりファンがパワーアップしたところ」とのことでした。去年よりもっと涼しく!と、より快適さを求める人が多く、それに応えるものになっているよう。
また、チタンやアルミのコーティングで、年々遮熱の性能は上がっているとのこと。最新モデル、期待できますね!
農家目線で言うと、ぼくも含め、農家にとって空調ウエアはまだまだ未知のアイテムです。
空調ウエアを選ぶ上で大切なのは、使用状況をしっかりと想定すること。
しっかりと自分に合ったウエアを選ばないと、思わぬ失敗をする恐れもあります。
個人的にはデザインも良いベストタイプの空調ウエアが好みですが、観点ごとにおススメを聞いてきましたよ!
日焼けをしたくない!
「こんがりと焼けていない農家なんて、仕事をしていないのと同じだよ」
そう思っていませんか?
しかし環境省によると、紫外線を浴びすぎると皮膚が炎症を起こしたり、最悪の場合皮膚がんの原因になるともいわれています。
そこまでひどくなくとも、日焼けは美容の大敵、シワやシミの原因の一つです。
痛いほどの日差しが降り注ぐこれからの季節こそ、長袖の服を着たほうが、実は体にとってはいいんです。
試着した長袖の空調ウエアは、袖の先までしっかりと空気の流れができ、かなり快適。
今の空調ウエアは昔のものと違い、ぽっこりと宇宙服のように大きく膨らむこともありません。作業性を確保しつつ、しっかりと体を冷やすことができる長袖タイプは、炎天下で畑仕事をする農家の必須アイテムになるな、と思いました。
★試着したのはこの商品★
カジュアルに着こなせるベストタイプ
「そうはいっても真夏に長袖はちょっとなぁ」という人も多いでしょう。
それに空調ウエアは、ファンとバッテリー合わせて相場が2万円ほどと、結構高い買い物です。農作業中だけでなく、プライベートでも使いたいという人もいるのでは?
そんな人にオススメしたいのが、ベストタイプの空調ウエア。
こちらの商品は人気ブランドDickies(ディッキーズ)が作ったウエアで、高いデザイン性と機能性が特徴です。
★試着したのはこの商品★
カジュアルなデザインもさることながら、マルチポケットがついていたり、生地の裏面にチタンコーティングがなされているなど機能面もバッチリ。チタンのおかげで遮熱効果も高く、紫外線などもしっかりとカットしてくれます。
ファンの力も強く、マックス状態にすると体が浮いてしまうような感覚になるほどです。
もう一つ、こちらは別ブランドのベストタイプ。迷彩柄がオシャレで、お出かけにも使えそうです。
★試着したのはこの商品★
林業や果樹農家には綿素材がオススメ
服の中を空気が流れるという原理上、空調ウエアに傷をつけてしまうと、その効果を万全に発揮できなくなってしまいます。上でオススメした空調ウエアはいずれもポリ素材でできているため、どうしても鋭利なものや突起物には弱いです。
木の枝など、尖ったものにふれる機会の多い農家さんは、綿素材のものなど、ダメージに強いものを選ぶといいでしょう。
空調ウエアのこれどうなの? 聞いてみた!
年々進化している空調ウエア。こんな使い方をしてもいいの?という疑問に答えてもらいました。
ビニールハウスで使っていいの?
空調ウエアはファンによって外気を取り込み、服の内部に空気の流れを作るという設計です。汗が乾くときの気化熱により体を冷やすので、外気温が高すぎる状態で使っても効果はあまり感じられないようです。
今は冷却剤を入れることができるウエアや、冷却ジェルの入ったベストが売られているため、それらを併用すれば、ある程度冷やすことはできそうですね。
着たまま農薬散布はできる?
こちらも外気を取り込むという性質上、NG。ウエアのファンが回ったまま農薬を散布してしまうと、服の中に農薬が入り込んでしまいます。内側を通り抜けた風は、裾や首元から抜けるため、農薬を吸い込んでしまう危険もあります。散布時は使用を中止するのがよさそうです。
においが強い現場でも使える?
同様に、外部の空気を取り込むため、外のにおいも一緒に取り込まれてしまいます。においが気になる現場でも多少注意が必要です。
機能的には問題なく体を冷やしてくれるので、メリットとデメリットを考えて使ってみるといいかもしれません。
洗濯はできる?
ファンとバッテリーは取り外し可能です。ウエアごとに洗濯表示がついているので、それに従って洗濯をしてください。ファンやバッテリーは洗うことができないので、汚れがつかないように防塵(ぼうじん)フィルターなどをつけるといいですね。
バッテリーって重くないの?
多くのバッテリーが300グラムほどの重さで、ポケットにしまって使用します。最近の製品は内ポケットだけでなく、胸など自分の好きな場所にバッテリーを配置できるので、実際に使ってみてしっくり来る場所を探すといいでしょう。
個人的には重さも気にならず、ポケット内で動くこともないので、そこまで気にしなくてもいいかな、と思います。
もっと冷やすにはどうすればいい?
空調ウエアをさらに効果的に使うためには、下に着る服にも注意が必要です。オススメなのはコンプレッションウエアと呼ばれる服。体に密着し、タイプによってさまざまな効果をもたらしますが、冷却性能が高いものを選べば、より涼しく過ごすことができます。
さらに背中や脇の部分に冷却剤が入った冷却ベストを着用すると、寒いくらいに感じるそう。ベストや長袖、どのタイプでもオススメです。ちなみに空調ウエアは普段の服よりワンサイズ大きいものにすると効果的だとか。
空調ウエアはこれからの必須アイテムになる!
カジュアルデザインのウエアは、キャンプなどのアウトドアや、お祭りなどのイベントでも使えそうです。もちろん、エアコンのように冷えるというものではありませんが、あるとないとでは大違い。体温調節機能が弱っている高齢の方にこそ使ってほしいものですね。
ただ、農家のおじいちゃんおばあちゃんは新しいものを敬遠したりすることも多いかなと思うので、父の日や母の日、誕生日や敬老の日などのギフトで贈るといいかもしれませんね!
農家向けの空調ウエアはまだまだ発展途上の段階。フジワークはメーカーではありませんが、販売店として客からのニーズをメーカーに伝えることがあるそう。北川さんは「もっと農家さんの意見を取り入れたい!」と、取材中にもぼくの意見を積極的に聞いてくれました。みなさんも一緒に理想の空調ウエアを作っていきましょう!
ちなみにぼくは、ファンに蚊よけ機能をつけてほしいとお願いしましたよ! この世で一番蚊を憎んでいる農家なので!