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ローカル5Gで農業技術を手ほどき 栽培未経験者でも成功

ローカル5Gで農業技術を手ほどき 栽培未経験者でも成功

高画質の映像をより迅速に送ることを可能にした5G。一部のエリアに専用の5Gネットワークを構築するローカル5Gは、通信事業者が提供するパブリック5Gがないエリアでも5G通信を利用することができます。公益財団法人東京都農林水産振興財団、東日本電信電話株式会社、株式会社NTTアグリテクノロジーの3者は、この仕組みを農業の技術指導に活用する取り組みを行っています。いったいどのようなものなのでしょうか。成果や今後の取り組みについてもお伝えします。

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農業にローカル5Gを活用

農業に高速通信規格5Gを活用するための実証実験が始まったと聞きつけ、訪れたのは東京都調布市にあるNTT中央研修センタ。敷地内にローカル5Gと約450平方メートルの全自動環境制御ハウス「東京フューチャーアグリシステム」を整備し、大玉トマト「りんか409」を栽培しています。

ローカル5Gとは、地域を限定して5Gの高速ネットワークを使えるようにする仕組みです。通信事業者が提供するパブリック5Gがないエリアでも、ローカル5Gがあれば5G通信を利用することができます。また、他のエリアで通信トラブルやネットワークの混雑などがあった場合に、影響を受けにくいという利点もあります。

Wi-Fiと比べ、より広い範囲でスムーズに利用でき、通信が安定しているため、高画質の映像をより迅速に送ることを可能にしました。この仕組みを活用したのが、農業の技術指導です。

立川市にある東京都農林総合研究センターの栽培技術の専門家が指導員となり、約20キロ離れた東京フューチャーアグリシステムの栽培者に遠隔作業支援を行っています。

360度カメラ

4Kカメラ。ハウス内や作物の全体の様子を瞬時に把握でき、ズームで細部まで確認できる

走行型カメラ(左)

360度カメラ、4Kカメラ、走行型カメラから、ハウス内の映像がリアルタイムでローカル5Gを介して農林総合研究センターに送られます。その映像を見て、指導員がマイクを通して栽培者にアドバイスをします。

トマトの葉の裏側など指導員から見えにくい箇所については、栽培者がカメラのついたゴーグル型のスマートグラスをかけて対応します。栽培者と同じ目線で見える映像が共有され、指導員が即座に遠隔で音声指示をするため、適切な判断・指導ができます。

スマートグラスをかけた栽培者。農業未経験だが専門家による指導のもと作業を進める

スマートグラスから送られている映像

なぜローカル5Gを農業技術指導に

東京都は小規模な農業経営体があちこちに点在しています。そのため、農家の減少傾向もあいまって指導員が不足。技術指導の効率化で人手を最小限にする必要があります。

そこで、この技術指導の効率化を目的にローカル5Gを活用。これまで圃場(ほじょう)の現地技術指導は週に1度のみでしたが、遠隔で毎日5~10分の確認、指導が可能になりました。これにより、1人の指導員で複数の生産者への農作業支援や、毎日の変化に応じた適切な対応ができます

東京フューチャーアグリシステムでは、栽培未経験のスタッフ3人でも5アールあたり25トンの収量を達成し、定植から出荷までを完遂しました。指導員は1人で、定植のときに1度訪れただけ。その後は圃場まで来ることなく、遠隔のみで対応し成功しました。今は実証実験のためハウス内に空きスペースを多く取っていますが、このスペースが無ければより多くの収量が見込めます。

今回のプロジェクトの最終的な目標は、栽培者へのサポートをしやすくすることで、生産性向上と高品質化により儲かる農業を実現し、農業をイメージアップさせて就農希望者増加につなげること。そして、農業従事者の人手不足による課題の解決を目指します。

今後の実装に向けて、ローカル5Gや必要な設備などを複数の農家が共有できるシェアリングモデルや、現場の課題に合わせて新旧さまざまな通信方式のネットワークを組み合わせた遠隔農作業支援パッケージ、また使用する機器や端末などを正しく活用してもらうためのサポート体制の構築などを検討しているとのこと。シェアリングモデルについては、自治体が購入して複数の農家がシェアするのか、成功報酬型で農家が支払うのかなど、まだまだ詳細は決まっていません。
ベストなかたちを求めて、4年後の事業開始を目指しています。

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