マンゴーは「温度管理」が命。品質を左右するセンシティブな技術と労力
芳醇な香りと濃厚な甘さ、ほど良い酸味が人気の沖縄産マンゴー。贈答品としても人気が高く、毎年シーズンを心待ちにしている方も多いことでしょう。そのおいしさは、マンゴー農家のたゆみない努力によって育まれ、わたしたちに届けられています。
沖縄県糸満市のマンゴー農園「サンフルーツ糸満」もそのひとつ。なかでもマンゴーの品質を左右する「温度管理」は、萌芽から収穫に至るまでわずかな気の緩みも許されない、とてもセンシティブな作業と、代表の山城栄徳さんは話します。
「2〜3月のマンゴーの花芽時期は、ハウス内の温度が高すぎると芽がしおれ、花が咲かないことがあります。沖縄では冬でも晴天時にはハウス内の温度が30度以上になることもあり、できるだけ25-28度程度に保つ必要があります」。
花が咲くとミツバチをレンタルして受粉します。このときの温度はミツバチが活動しやすい25度前後を保ち、マンゴーの実がついたら収穫時期の夏まで室温が35度を超えないよう常に目を光らせておく必要があるとのこと。夏の沖縄といえば南国の強い日差し、ハウス内ともなれば放っておくとあっという間に室温が40度以上になることがあり、せっかく実ったマンゴーの身が焼けて腐ってしまうことがその理由です。
「ハウスの温度調整は、ハウスの真ん中に吊るしてある温度計を都度チェックし、室温が低ければハウス側面や上面のビニールを閉めて室温を上げ、高ければ開けて室温を下げます。加えて、マンゴー栽培では実の高さが揃うようにヒモで枝を引っ張り、高さを調整する「誘引」や、実が⼤きくなったら下に落ちないよう引っ張り上げて吊るす「⽟吊り」などの作業を繰り返し行います。誘引と玉吊りによって、実と葉を離して傷つきを防ぎ、⽇光をまんべんなくマンゴーの実にあてることで⾊づき良くなり、風通しよく湿気対策になります」と、高品質なマンゴーを作るための工夫を話すのは、息子で糸満圃場責任者の山城裕樹さんです。
誘引や玉吊りなどの作業中も、温度管理は欠かせません。こまめに温度計をチェックしたり、1500坪にものぼるハウス5棟のビニールを状況に合わせて開閉するのはかなりの労力ですが、温度管理はマンゴー栽培の命ともいえるため、疎かにすることはできないと山城裕樹さんは言葉を続けます。
「作業に集中していると温度の変化に気づくのが遅くなることもあり、温度管理は生産者にとってかなりのプレッシャーになっているのは事実です。高品質なマンゴーを育てるためにはどの作業も重要なので、常に緊張感を持って作業にあたっています」。
大切な作業の手を止め、温度をチェックするために温度計の設置場所まで移動を繰り返す従来の温度管理では作業効率が著しく低下。また、ハウス内の室温の変化は作業者の体感に依存するため、温度が予想以上に上がっていたり、反対に、ときには無駄足になることも。
そんな温度管理への労力を一気に解消したのがKDDIウェブコミュニケーションズが提供する農作業支援IoTツール『てるちゃん』です。
『てるちゃん』導入で月間10時間以上の移動時間削減!機会損失リスクの低下にも
農作業支援IoTツール『てるちゃん』は、ほ場の状況を携帯電話に通話する農業IoTです。ほ場に設置したセンサーが温度・湿度・照度を監視し、異常を検知したら「電話」で通知します。
このサービスを導入した「サンフルーツ糸満」では、室温チェックのための移動時間が45%減少したということでほぼ半減。時間にすると月10時間も削減できたことに山城栄徳さんは笑顔で話します。
「センサーの測定値で異常とする温度をあらかじめ設定しておけば、あとは自動的に監視し、異常があった場合のみ、携帯電話に通知されます。これならスマートフォンがなくても異常を知ることができ、何より“電話”ということに大きな魅力を感じています」。
スマートフォンやタブレット端末の操作に慣れていない人にとっては、メールよりも電話による通知の方がハードルが低く、通知の「とりこぼし」を防ぐことができます。また、センサーが温度を検知することで作業者の体感温度に依存することなく、正確な数値によってハウス内の温度を調整できるようになったと山城栄徳さんは評価します。
「灌⽔や肥料などの⼯夫によるところも多分にありますが、温度の異常を素早く把握し、適切にハウスの開閉ができるようになったことでマンゴーの品質が向上したことに加え、何よりも、マンゴーが実らない機会損失リスクが低下したことは間違いありません」と山城裕樹さんも『てるちゃん』の効果を話します。
花を咲かせ、ミツバチによる受粉なしではマンゴーに実をつけることはできません。そのため、花芽時期の温度管理は最も神経を使います。『てるちゃん』の導入により、精神的な安定につながったことも大きな収穫と言えるでしょう。
「スマート農業やIoT技術が作業の効率化につながることは理解していました。しかし、日々の作業が優先されるため、難しい操作を覚えたり、機器導入のために割く時間はないというのが正直なところ。また、コスト的にも高額なため導入に踏み切ることができませんでした。『てるちゃん』の初期費用は数万円、月々の費用も数千円とリーズナブルなので、IoTへの関心も一気に高まりました」と山城栄徳さん。
これまで、センシング技術を用いた農業向けIoTはスマートフォンやタブレット端末などの使用が前提とされていましたが、『てるちゃん』はフィーチャーフォン、いわゆる「ガラケー」でも通知を受けることができるため、山城栄徳さんのように農業IoTに高いハードルを感じていた方もスムーズに導入できるのが『てるちゃん』のポイントのひとつです。これまで、感覚や勘に頼っていた部分を正確に把握できたことで、栽培技術のデータ化にも今後は注目したいと山城栄徳さんは農業IoTに高い関心を示していました。
生産者の「今」の課題に耳を傾け、開発・商品化。『てるちゃん』が評価される理由
『てるちゃん』開発のきっかけは、KDDIウェブコミュニケーションズが地域課題の解決に取り組むプロジェクト「Cloud ON OKINAWA」に参画したことにあります。沖縄県内のいくつかの自治体で行ったヒアリングで生産現場の温度管理の難しさや膨大な労力に悩む農家が多いことを知り、「操作の簡易化」、「導入のしやすさ」、「低コスト」をポイントにIoT農業の開発に着手。『てるちゃん』は農家の声を反映することで極端に高機能なシステムを求めない一般的な農家がIoT機器の導入による農作業効率化の恩恵を受けられることを目指し、2021年3月にリリースされました。
「スマート農業や農業IoTは技術のみならずコスト面でもハードルが高く、一般農家への普及がいまひとつというのが現状です。いきなり難しい機器を導入するのではなく、スマート農業を細分化、「今」の課題を解決し、徐々にステップアップできる仕組みを作ればスマート農業を身近に感じてもらえるようになるのではないでしょうか」。
と、話すのはKDDIウェブコミュニケーションズの 小出 範幸さん。農作物の成長に欠かせない温度・湿度・照度に特化した『てるちゃん』は、育苗や野菜、果物、花きなどにも活用が可能です。
「生産現場が抱える課題を解決することを目的に開発した『てるちゃん』は、通知に特化したシンプル機能が特長です。今後の展望としてはアグリテック企業や資材メーカーと連携を図り、見える化(データ化)やハウスの自動開閉など、生産者のニーズと歩調に合わせながら取り組んでいきたいと考えています」(小出さん)。
農家の声に寄り添い、課題解決へと導くKDDIウェブコミュニケーションズのサービスが、日本の農家の救世主になるかもしれません。
【問い合わせ】
株式会社 KDDI ウェブコミュニケーションズ 農業IoT『てるちゃん』
〒107-0062 東京都港区南青山 2-26-1 D-LIFEPLACE 南青山 10F
◆『てるちゃん』の詳細はこちら
https://www.tel-chan.com/
◆ご利用のお申込み、事前のご相談はこちら
https://support.tel-chan.com/hc/ja/requests/new