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子どもを抱えながら働ける職場とは 女性だけが働く施設園芸の経営者に聞く

窪田 新之助

ライター:

子どもを抱えながら働ける職場とは 女性だけが働く施設園芸の経営者に聞く

大分県国東(くにさき)市の農業法人・ウーマンメイク株式会社は従業員がすべて女性。その半数は育児中だ。男性がいない中、子育てをしながら働き続けてもらう職場の工夫とは。

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女性ばかりだとチームワークが良くなる

女性ばかり、それも育児中の人が半数いる職場の様子はどうなのだろうか。
「チームワークが良くなりますね。重い荷物を動かすにしても、男性がいる職場だと『これ運んでおいて』で済む。でも女性ばかりだと『一緒に運ぼうね』ってなるんです」

こう話すのはウーマンメイクの社長、平山亜美(ひらやま・あみ)さん(32)。それでも女性だと運べないほどの重量のある荷物は出てくる。そんな時は同じ敷地にある上原農園を頼る。前回紹介した通り、同社との縁で平山さんはリーフレタスを栽培することになった。
「上原農園は男性が多いので、いろいろと助けてもらっています。一方で私は資料を作るのが得意なので、上原農園から依頼があれば作ってあげていますね」

重い肥料を容器に投入しやすくする工夫

容器

高さを80センチにした肥料と水を混ぜる容器

とはいえ自分たちでできることは増やしていきたい。ウーマンメイクは今年に入って事務所を建てると同時に園芸施設を増設した。リーフレタスとホウレンソウを80アールで栽培している。施設を増棟するに当たって省力化のために2つの工夫を凝らした。

1つは肥料の置き場、それから肥料と水を混合する容器を室内に設置したこと。容器は高さを80センチと低くしてある。以前は肥料の置き場も容器も屋外にあり、それぞれの距離が離れていた。しかも容器の高さは1メートルはあった。肥料袋は1袋20キロで、一回に何袋分も投入することになる。
「最悪なのは雨の日に肥料がなくなることですね。ずぶぬれになりながら屋外から肥料袋を持ってこないといけない」(平山さん)

水と肥料をかくはんする機器は手動から自動に変えた。さらにタンクに井戸水を入れる機材は家庭用の細いホースから太いパイプに替えた。満水までに以前は30~40分かかっていたのが数分で済むようになったという。

台車の運搬ロボットを導入予定

運搬ロボットが走行する舗装道

運搬ロボットが走行するために舗装した道

水耕で栽培するリーフレタスは水槽に浮かべたパレットで育てる。収穫時にはパレットを大人の背丈以上の高さがある台車の各棚に載せていく。台車はパレットを載せると重量があるうえに前方が見えにくくなるので、人手で運搬するのは重労働だ。

この仕事から解放されるため、間もなく導入する予定なのがトヨタL&Fの無人運搬ロボット「キーカート」。収穫や調製をする建物と栽培棟との間は砂利道だったのをコンクリートで舗装し、通路に屋根を設置した。コンクリート道にはロボットが自律走行する経路を感知する磁気テープを埋め込んだ。これらすべての整備費用とロボットとの総額で約1000万円強かかったという。

子どもを連れてきやすい環境づくり

休憩室

従業員の意見を踏まえて内装などを整えた事務所の会議室

新設した事務所でこだわったのは「女性が働きたいと思える快適な職場づくり」。事務所については従業員の意見を踏まえて、更衣室にカウンターを設置して、雑談できるようにした。このほか会議室や応接室などの壁紙のデザインにも従業員の意見を取り入れている。

育児中の女性が子どもを連れてこられるように「キッズスペース」も用意した。応接や事務などの業務をする部屋の一角にある。
「こだわりはお母さんの仕事が見えるようにしたことですね」。平山さんがそう言ってリモコンのボタンを押すと、「キッズスペース」の壁面のすりガラスが透明になり、向こうの部屋が見通せるようになった。向こうの部屋では従業員が台車で運び込んだパレットからリーフレタスを収穫して根を切った後、包装から梱包までをする。

取材したのは保育園や幼稚園、学校が夏休みの期間中。「従業員の2人は夏休みに入ってからずっと子どもを連れてきて、ここで遊ばせています。子どもを気軽に連れてきやすい環境になった、と喜んでもらえてますね」(平山さん)

キッズスペース

キッズスペースの窓。すりガラスはスイッチ一つで透明になる

「道の駅」をつくりたい訳

女性ばかりでも働ける職場環境を整えつつある平山さん。経営のこれからについて聞くと、「生産の拡大はしません。大変になるだけなので」ときっぱり。代わりに目指しているのは、就農するきっかけになった「道の駅」の運営だという。

平山さんをその気にさせたのは「宇宙港」と「ホーバークラフト」だ。「宇宙港」とは宇宙船が離着陸する場所のこと。大分県は大分空港を拠点にロケットを抱えたジャンボジェットを離陸させて、空中で発射させることを計画している。加えて大分空港と大分市を海路で結ぶホーバークラフトも2023年度の運航開始を目指している。

「もともと国東半島は海はきれいで山もある。空港は年間200万人が利用している。それなのに観光客は素通り。国東に泊まって、お金を使ってもらえる場所があれば、雇用は増えるはず。せっかく『宇宙港』と『ホーバークラフト』の話があるので、大分空港の近くに玄関口となる『道の駅』をつくりたい。『道の駅』なら幅広い業種の事業者が入ってくるじゃないですか。宇宙について学ぶ教育をすることもできると思います。いろんな業種が集まれば託児所や食堂も1社だけで持つ必要はなくなりますしね」
そう語る平山さんが思い描いているのは、農業を核に幅広い事業を展開しながら、女性が伸び伸びと働ける地域社会をつくること。今後の広がりを注目したい。

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