1本1万円でネギを売るネギ農家が「有機肥料」を作った!秀品作物を育むその実力と、農業界に一石を投じる”葱師“の情熱に迫る|マイナビ農業

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1本1万円でネギを売るネギ農家が「有機肥料」を作った!秀品作物を育むその実力と、農業界に一石を投じる”葱師“の情熱に迫る

1本1万円でネギを売るネギ農家が「有機肥料」を作った!秀品作物を育むその実力と、農業界に一石を投じる”葱師“の情熱に迫る

『1本1万円のネギ』。にわかには信じられない話ですが、それを実現した農家が山形県天童市に存在します。就農から3年で『ねぎびとカンパニー株式会社』を設立。今では年間売上げ2.3億円と破竹の勢いで業績を伸ばすその背景には、栽培方法、売り方、販路、雇用に至るまで、これまでのブランディングと経営方針があります。有機肥料による栽培もそのひとつ。自社製天然有機質肥料メーカーとタッグを組んで誕生した有機肥料の実力とは?連作障害や土壌づくりに悩む農家のみなさん、必見ですよ!

※文中の食味や使用感については個人の感想です。

糖度20度越えのネギを作る『ねぎびとカンパニー』の清水寅社長って何者?

山形県のほぼ中央に位置する天童市は日本一の生産量を誇るラ・フランスを中心にリンゴ、ブドウなど果樹の産地で知られるフルーツ王国です。そんな天童市で、ネギだけで年間売上げ2.3億円を誇っているのが『ねぎびとカンパニー』です。自らを「初代葱師(しょだいねぎし)」と名乗る社長の清水寅(しみず・つよし)さんが農業とは全く無縁の業界から農家に転身したのは2011年のこと。20代で7社の社長を歴任した経営手腕を生かし、低迷する農業界を元気にしようと奥様の実家がある天童市にやってきました。

ねぎびとカンパニー株式会社 代表取締役/初代葱師 清水寅さん

「名人の域に達している果樹生産者が多い天童市で、素人が果樹に参入しても勝てるはずがない。子供の頃から1番になることに存在価値を見いだしてきた自分が勝負できるフィールドは何かを模索したときに出会ったのがライバルが少ない「ネギ」でした。やるからにはどんなことでもいいから3年で日本一になると決め、実現したのは、新規就農2年目で達成した5.4町歩の作付け面積です。全国の農業改良普及センターに電話をかけまくり、日本一であることを確認しました」。

順風満帆に見えた清水さんの農業人生ですが、農業界の「常識」という壁にぶつかり、いきなり倒産の危機に直面します。

天童市内に点在する同社のネギ畑

市場ではおいしいネギを作ることよりも規格通りのネギを作ることが求められます。さらに、価格は相場で決まり、出荷量が多い時期は価格が暴落、反対に出荷量が少ない時期は価格が高くなります。就農当初は栽培面積を増やすことばかりに注目し、化学肥料を使用した規格通りのネギを栽培していましたが、価格が暴落すると反収が下がるため栽培面積が大きい農家ほど赤字幅が広がることになります。単価を上げることと反収を上げることの両輪をやらなければ農業では食べていけないことを思い知らされました」。

有機肥料で作られた「寅ちゃんねぎ」。都内スーパーでは2本298円で販売されている。
※1本1万円のネギ「モナリザ」は、350万本に数本しか採れない超プレミアネギ。

市場に頼らず自身の足で大手スーパーや百貨店などに営業をかけ、直接取引という新たな販路を築いた清水さんが次にこだわったのが「品質」です。30年間、ほとんど変わらないネギの価格をブランド化によって高めることに挑戦。2019年には糖度23.4度という驚きのネギを作り上げたその栽培方法のカギは「有機肥料」でした。
*糖度参考値=バナナ21.0%(出典:農林水産省「果樹をめぐる情勢」※2014年6月) より

自社開発100%の天然有機質肥料メーカー『大成農材』との出会い

清水さんが目指したのは「辛みとえぐみがないネギ」。さまざまな肥料を試した結果、最も味がのったのが広島県に本社を置く農業関連メーカー『大成農材株式会社』の有機肥料です。天然のアミノ酸を豊富に含む魚肉エキス「フィッシュソリュブル」を濃縮した同社の有機肥料を使うことで地中の微生物が多様化、さらに化学肥料に頼っていた時に悩まされていたネギの不調が解消。 その結果、農薬の使用回数が減り、コストも大幅に軽減したことも相まって本能的に「これだ!」と確信した清水さんは、ネギに適した有機肥料を求め、大成農材にOEM(共同開発)を提案。2016年のことです。

大成農材株式会社 代表取締役社長 杉浦朗さん

「個人の農家さんとのOEM実績はなく、最初はお断りしていたのですが清水さんの熱意に打たれ、お話を受けることにしました。印象的だったのは『絶対に迷惑はかけない。もし、迷惑をかけるようなら農業を辞める』という言葉です。ここまで言いきれる人はなかなかいません。信用できると思いました」。

と、当時を振り返る大成農材の杉浦朗(すぎうら・ろう)社長。出会いから半年後、開発に着手した両社は試行錯誤の末、土中の温度が変化したとき、魚由来の動物性タンパク質単体よりも米ぬかなどの植物性タンパク質を混ぜることで微生物の多様性が増える事実にたどり着きます。こうして誕生したのが『寅ちゃんの超有機肥料』です。その後、『寅ちゃんの極(きわみ)肥料』、『寅ちゃんの超微生物』を商品化。現在、『ねぎびとカンパニー』ではこれらの有機肥料のみで年間約350万本のネギを栽培しています。

◆『寅ちゃんの超有機肥料』(東ー1号)・・・左/赤い袋
◆『寅ちゃんの極(きわみ)肥料』(極肥料:宮城県第558号 極液肥:宮城県第617号)・・・中央の黒い袋が固形肥料/右のボックスが液肥
◆『寅ちゃんの超微生物』(東ー50号)・・・後ろ/白&緑の袋

「まさかOEM(共同開発)を断られるために広島本社に呼ばれたなんて、当時は思いもしなかった」とその時のことを笑い飛ばすお二人。

なぜ、有機肥料なの?化学肥料との違い

有機肥料を使用したことで土中の微生物の多様性が増えた結果、土の栄養価がアップし作物の色艶が良くなりました。 加えて、土が明らかに柔らかくなったと清水さんはその実証結果に太鼓判を押します。

「化学肥料を使い続けると土が硬くなり、ネギも硬くなります。化学肥料は定植時に一度まいたら収穫まで持っていくことができるものもあり手軽さがメリットですが土壌の変化に弱いのが難点。また、使い続けることで起こる連作障害の懸念も。化学肥料と有機肥料を異なる畑で実験したわたしが断言します。化学肥料では作物に味がのりません!」。

一枚一枚の畑を毎日巡回し、土壌とネギの生育状態を確認。この探究心と情熱こそが“寅ちゃん流”。

長年、有機肥料の研究・開発に尽力してきた杉浦さんもまた、化学肥料がもたらす作物への影響を次のように分析します。

「雨によって土中の水分量が多いとき、作物は必要以上に化学肥料の成分を吸収し、植物に有害なアンモニア態窒素を葉にため込んでしまいます。すると、虫が寄り付き、細胞が粗くなって病気にかかりやすくなります。化学肥料はいわば、植物に無理やり栄養を与えている状態なので健康に育たないわけです」。

団粒構造により柔らかくなった土

ネギは水はけが命と話す清水さんは、有機肥料を使うことによって土がふかふかになり、水はけが格段にアップしたと話します。ネギも柔らかく育ち、糖度もアップ。十把一絡げ(じっぱひとからげ)の化学肥料に頼ることなく、ネギの状態を見て有機肥料を追肥するのが“寅ちゃん流”。毎日、巡回し、一枚一枚の畑を観察することで、土の変化にいち早く気がついたそうです。

土壌微生物が活性化すると団粒構造の形成が促進され、保水性と透水性を併せ持つ土壌をつくることができます。これが清水さんが話す『ふわふわの土』のゆえんです。有機肥料の力もさることながら、『ねぎびとカンパニー』が高品質なネギを作り続けているのは、清水さんのあくなき探究心が一番の理由でしょう。本当に頭が下がります」。と、杉浦さん。

両社の共同開発によって誕生した各種有機肥料は、動物性のフィッシュソリュブル7割、米ぬかやトウモロコシの植物性3割が配合されています。これにより、土中の微生物のバランスが取れ、清水さんが目指した「辛みとえぐみがないネギ」にたどり着きました。化学肥料から有機肥料に完全移行したことで『ねぎびとカンパニー』の売り上げは上昇。単価アップと反収アップの両輪が見事に回っていることを示しています。

試行錯誤の結果、動物性70%、植物性30%の配合がベストとわかった。使いやすいペレットタイプの「寅ちゃんの超有機肥料」。

“やりすぎ”は悪循環!いろんなことをやりすぎていませんか?

『ねぎびとカンパニー』では、有機肥料を定植前に元肥(もとごえ)としてまいておきます。あとはネギの状態を見ながら栽培期間中に追肥(ついひ)をします。驚くほどシンプルな栽培方法ですがその効果は収穫したネギを見れば一目瞭然。太く、ネギ本来の色を帯びた美しいネギは食べてみると驚くほど柔らかく、さわやかな甘みを感じます。

マイナビ農業取材班はその場で試食させていただきました!甘さもさることながら、筋っぽさがない!しかも焼いてもネギとしての食感が残っているという驚異的においしいネギでした◎

「日本の農業技術が確立されない理由のひとつに、いろいろなことを“やりすぎている”ことがあると思います。良いと聞いたものはなんでも試してみる。化学肥料から有機肥料と、畑にさまざまなものを入れるからどれが効いているのかわからない。長年の化学肥料の使用によって土が硬くなり、病害虫が発生すると消毒や農薬を多用する。これでは良い作物が育つわけがありません」。

と、農業界が抱える問題に提言する清水さん。収量が上がらない、品質が向上しないと悩む農家は多く、清水さんに指導を仰ぐ生産者が後を絶たないことがそれを如実に物語っています。

「魚の残渣(ざんさ)を主原料とする有機肥料は環境に、土に、作物に良い。結果、農家の利益につながり、消費者はおいしい作物を食べることができます。これを清水さんは『小さな正義を作っているね』と表現しました。日本の農家が低迷する原因のひとつは、高く売れる高品質な農産物を作ることができず、その理由がわからないまま化学肥料に頼り、悪循環を繰り返すことだと思います。『ねぎびとカンパニー』の取り組みを全国の農家に知ってもらい、農業界全体が活性化することを切に願います」。
と、杉浦さんも期待を寄せます。

高食味の葱・玉葱用として、より高品質なフィッシュソリュブル等をブレンドした「寅ちゃんの極肥料」を新たに発売した。

農業は一朝一夕で成り立つものではありません。年間約200万本ものネギを出荷し、売り上げ2億円以上を誇る『ねぎびとカンパニー』もさまざまな失敗を繰り返し、今に至ります。あらゆる難局を乗り越えてきた清水さんに、今後の展望をお聞きしました。

原価を度外視した市場の買い取り価格ではなく、適正価格で取り引きされるようになれば農業は変わるはず。目標は市場に有機肥料を使って栽培した美味しい作物の売り場を作ることです。味だけではなく見た目の美しさや大きさを適正に評価し、スーパーと同じ売り場を市場に作ることで生産者はより高く売れるものを作るために努力をします。その仕組み作りができれば、農業は魅力ある職業になるはずです」。

次なる“寅ちゃん流”に期待が膨らみます。

ネギの単価を上げるため、清水さんがたどり着いた「有機肥料」。営農に悩んでいるのなら、ぜひ、“寅ちゃん流”を試してみませんか?その先にはきっと、前途を照らす光明が見えることでしょう。

『寅ちゃんの極(きわみ)肥料』、『寅ちゃんの超微生物』は、ねぎびとカンパニーオンラインショップのほか、一部ホームセンターでも購入ができます。

ねぎびとカンパニーオンラインショップはこちら

【お問い合わせ】
ねぎびとカンパニー株式会社
〒994-0075
山形県天童市大字蔵増字宮田4389-1
TEL/FAX:023-665-4930

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