評価制度で従業員が成長する農場に!
評価って、いいですよね。
私自身、買い物をするときや、食事をする店を選ぶとき、ネットのレビューを参考にしないことは、ほとんどありません。おかげで自分に合わないものに遭遇する可能性がぐっと減るようになりました。
その一方で偶然の出会いが無くなってしまうなど、レビューの功罪は確かにあります。しかしネットレビューがもたらした、今までは埋もれていた「良いもの」が正当な評価をされる面においては、素晴らしいんじゃないかと思います。よく売れるということは、市場で愛されるということでもあります。会社においての従業員評価も、そうあってほしいですよね。
前回の記事では、農場、ひいては会社が評価制度を行うための基本的なポイントを説明しました。
・わかりやすく、具体性があること
・成長に主眼を置くこと
・誠実に話し合うこと
これらが朝霧メイプルファームにとって、評価制度で重視している点です。
評価制度によって、会社と従業員がコミュニケーションを図ることができ、それが従業員の成長につながり、会社が発展していくのだと伝えました。
しかし、言うは易く行うは難し。
うわべだけの奇麗ごとを並べて、実際のところは違うんじゃないの?
そんなふうに疑う人もいるでしょう。
確かめなければいけませんね。朝霧メイプルファームの実態を!
今回は、入社4年目の男性社員がこの記事のために自分の評価を匿名で公開してくれました。ここでは仮にスグル君と呼びます。仮名は私がかつて夢中になった少年漫画、キン肉マンのマッチョな主人公、キン肉スグルに由来します。
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入社4年目のスグル君は筋トレが趣味の大変ストイックな性格。怠惰な生活を送るだらしない体の私も、見習いたい意識の高さです
朝霧メイプルファームの評価制度
実際に朝霧メイプルファームの評価面談の流れに沿って説明していきましょう。
1. 自己採点・評価採点の記入
2. 面談
3. 給与反映
評価はこのような流れになっています。
1. 自己採点・評価採点の記入
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勤務態度に関する評価(一部抜粋)
実際に配布し、採点を終えたこちらの評価シートの抜粋を見てください。
採点欄の一番左がスグル君の自己評価。並んで上司2人と社長である私、合わせて3人の採点が順番に書かれています。
採点項目は全部で55個あり、ほとんどの項目を3段階で評価します。この評価シートを携え、従業員と評価者が一対一で面談を行います。
2. 面談
従業員と評価者はお互いの採点を比べながら話し合いを行います。
それぞれの項目において、自己評価と上司評価に大きな乖離(かいり)があった場合は、その理由について話し合うこともあります。
例えば上図赤枠項目の「作業した場所のゴミ、綿花などを拾っていますか」という設問。本人は一番いい自己評価3をつけていますが、上司Aは1をつけています。上司Aの話によると、スグル君が作業した後の職場が、しっかりと整頓されていない場面に何度か遭遇したそうです。できていないということを、本人が無自覚であることは往々にしてあります。自覚できないからこそ、評価に意義が生まれるのでしょう。
また、評価者同士の点数に差がある点にも注目してください。
このような単純な例からもわかるように、複数人から評価されるというのは異なる視点が加わり、より公正な評価となります。メイプルファームでは上司評価のみですが、部下や同僚からも評価を受ける「360度評価」という制度を採用している会社も多くあります。
また、本人の採点と上司採点を照らし合わせた結果、上司採点を修正することもあります。
仕事をしていて、自分の頑張り全てを見てもらえるわけではありません。わざと目立つようにアピールするのはかえって心証を悪くすることもあります。
その点で評価面談においては、しっかりとアピールしてもらい、その人の隠れた長所を知るいい機会にしたいと考えています。
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技術に関する評価(一部抜粋)
上記評価の赤枠の項目を見れば、スグル君が哺乳の仕事に関していまだ習得している途中ということがわかります。習得できていないことを整理することで、新しい目標を立てることができます。こうした評価をもとに、社長である私からは次のように総評しました。

評価シートの最後に記載する総評。社長からの評価
会社の方針として、スグル君にどういう人材になってもらいたいかを伝えることが重要です。私からはスグル君の技術的な長所を認めたうえで、更に餌づくりの知識を強化してもらうことを求めました。
一方でスグル君の直属の上司からは、次のような視点の異なる意見が。
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直属上司からの評価
普段接することの多い上司からの評価です。距離が近いからこそ、細かい部分まで見ることができているので、具体的な弱点などを指摘することができます。
3. 給与反映
評価が終われば、各自の点数に応じて給与や賞与に反映することになると思います。
メイプルファームでは、上司2人と社長の平均点が従業員の点数となっており、自己採点はあくまで評価の判断材料となっています。
前回の記事では、誰が評価しても同じ評価になる絶対評価が重要だと話しました。評価者によってなるべく差が出ないようにしているつもりですが、ロボットではないので多少の差異は生じます。そこで全評価者の平均値がその人の評価となります。
その点数に応じて賞与を増減したり、点数によって給与や手当が増えたり、役職が変わったりすると思います。点数を報酬としてどのように反映するのかは、会社ごとの価値観があると思うので、しっかり考えてください。
成長するための目標レポート
メイプルファームでは、評価面談は半年に1回の頻度で行います。
これまでの半年間の成果を確認し、これからの半年間の大きな目標を定め、達成に向けて日々研さんを続けます。しかし半年も間隔が空いてしまうと、課題を見失い、成長が滞ることもあります。
そこでメイプルファームでは、月に1回ごとの目標レポートを提出するように求めています。このレポート自体は、評価を下すためのものではなく、あくまで自分自身の成長のために記しておきます。社長である私は、そのレポートを見ることで、その人の課題を把握し、シフトを調整したり、課題達成のための手伝いをしたりします。
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スグル君の毎月目標レポート
細かい内容は省きますが、4年目の彼は、高度な技術にも挑戦中です。削蹄(さくてい)と受精卵移植を特に課題にしており、妊娠させる牛の頭数目標や、削蹄技術を向上させるために何をすればいいのかを整理しています。
大きな目標に向かって、小さな課題をコツコツとこなしていく。そうやって確実に成長してもらうための環境を整えています。
さあ、評価制度を始めてみよう!
2回にわたってお伝えしてきた評価制度ですが、みなさん農場に取り入れたいという気持ちになりましたか?
大変そうだな、と思ったあなた、正解です。評価は簡単ではありません。おざなりに行った評価であれば、それはきっと従業員にも伝わります。何度も言うようですが、評価には愛が必要です。
農場の従業員教育を行いたいけど、何から始めればいいのか模索しているあなた。評価制度があなたの農場を変えるかもしれません。
私もこの執筆を機に、スグル君から筋トレを指導してもらうことになりました。バッキバキのマッチョになっていく私の成長を、見守っていてください。