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売れるのを待つのではなく、こちらから出向いてみる。「恋する農家のキッチンカー」とは

売れるのを待つのではなく、こちらから出向いてみる。「恋する農家のキッチンカー」とは

農家発のキッチンカーとして注目を集めている「御舩(みふね)果樹園」。熊本県内のイベントやマルシェに出店し、シャインマスカットをぜいたくに使ったパフェなどを提供している。
キャッチコピーは「恋するくだもの」。キッチンカーを始めたきっかけや、人気の秘密を取材した。

江戸時代から続く農家の段々畑

熊本県中部の宇土半島に位置する宇城市不知火(しらぬい)町。町の名前は古くから八代海で見られる蜃気楼(しんきろう)である「不知火」に由来する。
この不知火町で1970年代から栽培されてきたかんきつが「不知火(シラヌヒ)」と呼ばれる品種だ。清見とポンカンをかけ合わせた品種である不知火は、海岸線に沿った斜面の段々畑で広く栽培されている。

宇城市不知火町松合

宇城市不知火町の松合(まつあい)地区。山の斜面には段々畑が広がる

そんな不知火町にある「御舩果樹園」は江戸時代から続く農家だ。後取りである御舩一真(みふね・かずま)さんは地元の農業高校を卒業後、外の世界を経験するために会社員として働いた後に実家の農業に従事するようになった。現在は両親と妻と一緒に、不知火のほかデコポン、シャインマスカット、巨峰を作っている。

道の駅宇城彩館

「道の駅うき」の物産館「宇城彩館」のブドウ売り場

収穫した果物は近隣の道の駅や直売所に卸している。取材した9月半ばには、たくさんのシャインマスカットが道の駅に並んでいた。

恋するくだものとキッチンカー

御舩果樹園の果物は、人気のケーキ店や老舗の菓子舗などにも卸している。ケーキ店や菓子舗とはそれぞれのSNSでも互いに名前を出して紹介し合い、新たな認知やファンの獲得につなげている。

さらに、2021年4月からはオリジナルのキッチンカーを使ってスイーツの販売を開始した。おしゃれなデザインのキッチンカーで熊本県内各地のイベントやマルシェに出店し、果物をぜいたくに使ったデザート類を販売している。

キッチンカー

御舩果樹園のキッチンカー

その場で食べた人においしいと言ってもらえることは生産者にとって新鮮な経験であり、もっとおいしいものを作ろうというモチベーションになる。また、パフェを食べた人が果物を買いたいと言ってその場で注文伝票を書いてくれるケースもある。

恋するけずり巨峰

「恋するけずり巨峰」は新鮮な巨峰を皮ごと凍らせて削っている

「恋するくだもの」というキャッチコピーは、一真さん自身が考えた。覚えやすく話題になりそうな名前にしたいと考えたこと、「御舩果樹園の果物は味が“濃い”」という評判があったことから名付けたという。

スイーツ類の見た目の美しさに加え「恋するシャインマスカットパフェ」や「恋するけずり巨峰」などキャッチーでインパクトのある商品名も話題になった。

人気の「恋するシャインマスカットパフェ」

「恋するくだもの」はInstagramなどのSNSで次第に話題になり、順調にフォロワーを増やしている。
華やかな「映えスイーツ」をフックに、御舩果樹園とその味を知ってもらうという好循環が生まれているようだ。

パフェの中には、想像以上にたくさんのシャインマスカットが入っている。
房から外れたブドウの実なども余さず使うことで、消費者には安く届けられ、フードロスの削減にもつながる。生産者ならではのパフェと言えるだろう。

恋する農家に嫁いで

妻の摩佑子(まゆこ)さんは結婚するまで看護師として働いていた。友人の紹介で一真さんと知り合い、同い年で誕生日も同じだったことから運命のようなものを感じ、仲良くなったという。

御舩さん夫妻

不知火畑の前で微笑む御舩さん夫妻

農家に嫁ぐことに迷いはなかった。今では3人の子供にも恵まれ、農作業に家事・子育てにと忙しい毎日を送っている。農作業には次第に慣れてきたが虫は苦手なままで、畑で大きな虫を見つけるたびに大騒ぎしながら作業しているという。

御舩果樹園ロゴ

SNSにアップしたくなるデザインのキッチンカー

摩佑子さんにとっても、キッチンカーを使った新事業は大きな刺激になっている。もともと看護師として多くの人と接する毎日だった摩佑子さんは、農作業だけでなく接客の機会も多い現在の生活を楽しんでいる。直接お礼を言われると励みになるほか、今度はこんなものが食べたい、こういう果物が好きだという意見も参考にしているという。

選ばれる、生き残れる農家になるために

一真さんは、「キッチンカーを使った加工・販売を始めたのは、これまでと同じような農作業だけでは生き残れない、と考えたため」と話す。

ブドウ畑

御舩果樹園のブドウ畑

キッチンカーでまず名前を知ってもらったり味にふれてもらったりすることで、認知度が上がってきていると手応えを感じる毎日だが、これからも「御舩果樹園の果物を食べたい」と思ってもらうための取り組みは続く。

2021年8月には地元の「道の駅 不知火」に近隣の若手農家が集まり「ファーマーズマルシェ」を開いた。今後もショッピングモールなど別の場所でマルシェを開催する構想がある。それぞれの農家の販売促進はもちろん、地域の活性化にもつなげたいと一真さんは考えている。伝統的な段々畑から発信される新しい試みは、まだ始まったばかりだ。

編集後記

不知火の畑

御舩果樹園の不知火畑。12月には出荷の最盛期を迎える

選ばれる農家になりたい、と話していた御舩さん夫妻。売れるのを待つのではなく、こちらから出向いてみよう!と始めたのがキッチンカーでの販売だった。
SNSで注目を集めている「恋するシャインマスカットのパフェ」には、シャインマスカットとともに2人の情熱がぎっちり詰まっていた。

御舩果樹園(インスタグラム)@mifune_kajuen

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