きれいでないと、絶対売れへんから

カリフラワーを調製する岡田正さん
大阪府豊能郡能勢町の岡田正(おかだ・ただし)さんは、退職後に畑を始めて16年。今でこそ、規模を縮小してマイペースに野菜づくりや直売所ライフを楽しんでいますが、当初は1人で200万円もの野菜を売り上げていたそうです。
そんな岡田さんが畑を始めて以来、ずっとつくり続けているのがカリフラワー。今年も1500株植え、現在、収穫真っ盛りです。
「カリフラワーはええぞ。ダイコンみたいに洗う必要もないから調製も手間がかからん。1日30個も出せば7000円にはなる。きれいなもんを出せば、午前中には売り切れてしまう。ただ、見た目が汚いやつは絶対に売れ残る」と、岡田さん。
花蕾をきれいに仕上げること。それが、岡田さんのカリフラワーづくりのポイントのひとつなのです。
花蕾を美しく仕上げるコツ
白品種は葉っぱで「軟白化」

白い花蕾の品種は葉っぱを被せて遮光する
純白の花蕾が美しいホワイトパラソルなどの白品種に必須なのが、花蕾の白さを引き出すための「軟白化」。
といっても、ネギやウドのように花蕾をモミガラなどで埋めるわけではありません。
カリフラワーの場合は、葉の間から花蕾が見え始めたタイミングで、大きめの葉を折って、花蕾の上に被せておくだけで十分。これだけで、かなりの効果があるそうです。
特に、岡田さんがつくる超極早生(ごくわせ)のホワイトパラソル(9月下旬収穫)や極早生のバージンロード(10月上旬収穫)は、まだ紫外線が強い時期に花蕾ができるので効果絶大。より美しいものに仕上がります。
軟白化をするのは白品種だけで、オレンジ美星(みせい)などのオレンジ品種にはやりません。こちらは、日照が強いほうが色づきがよくなるからです。

遮光用に被せていた葉っぱを取り去ったところ
「変色防止」に袋詰め前の日光浴
岡田さんがいちばん大事にしているのが「変色防止」。
市場出荷の場合はいくつかまとめて段ボールに詰めますが、岡田さんのように直売所に出荷する場合、ほとんどの人が防曇袋(OPPフィルム製)に入れて個別包装します。その袋の中に湿気がこもると、1日もたたぬうちに花蕾が薄汚れたように、茶色く変色してしまうそうです。
「ええもん出したつもりやのに、いつまでたっても売れ残ってることがあった。なんやろうと思っていくと、蒸れて変色しとったんや。前日が雨で、表面が濡れたまま袋詰めしてもうたんが原因やった」と、岡田さん。以来、たとえ晴れていても、カリフラワーの湿気を飛ばすことに気を使うようになりました。
収穫は、朝露が残る午前中ではなく、晴れの日の14〜15時頃から。この日は晴れでしたが、岡田さんに指摘されて花蕾の表面を見ると、ところどころにキラッと光る水滴がありました。これが変色の原因になるそうです。

右上や、中央でキラッと光るのが水滴。これが変色の原因になる
収穫後は、外葉を切って、花蕾についたゴミをとったうえで、コンテナに並べます。それを風通しのよい畑などで1時間ほど日光浴させて、花蕾表面についた水滴や水分を飛ばします。その後、夕方に袋詰め。
簡単なようですが、このひと手間をかけることで、お客さんが持って帰った後も花蕾の美しさが保たれるそうです。

重ならないようにコンテナに置く。下からも風が通るように、コンテナの下にレジカゴなどを置いて、地面から浮かせる
花蕾のゴミは、手でとらない

岡田さんのオレンジカリフラワー
カリフラワーの花蕾は非常にデリケートなもので、手でべたべた触ると土が付いてとれなくなったり、傷が付いたりします。
岡田さんは、できるだけ触る面積を少なくするように、調製用ナイフのほんの先端を使って、花蕾に乗っかっている草や、虫などのゴミを、ピッ、ピッ、と、手早く取っていきます。
収穫したらそれで終わりではなく、せっかくつくった自慢の野菜をより美しく見えるように調製にもこだわる。ベテランの技は、こんなところにもあったようです。