JAが自然栽培を推進するわけ~新たなJAの役割とは~
全国の農家を渡り歩いているフリーランス農家のコバマツです。今回は石川県・能登半島の羽咋(はくい)市に来ています。この地域、なんと、JAと市が自然栽培を推進しているという全国的に見ても非常に珍しい取り組みをしています。なぜ、農薬と肥料を販売しているJAがそれらを使わない農業を後押しするのか? これからのJAの役割とは? 時代を先読みした地域の取り組みについて取材してきました。
JAが自然栽培を推進するのはなぜ?
今回降り立ったのは石川県羽咋市。JAが自然栽培を全面的に推し進めているということを聞きやってきました。
JA=農家の所得向上や地域の農業を守る役割がある。
そのようなイメージが一般的だと思います。
一方、自然栽培は農薬も肥料も使わない栽培方法。慣行栽培よりも収量が落ちるし、規格もそろわないので、なかなか所得向上にはつながりにくいという印象があります。
そのような栽培方法をなぜJAが推進しているのでしょうか? 前代未聞の取り組み、気になり過ぎてJAはくいを訪問しました。
■JAはくい 粟木政明(あわき・まさあき)さんプロフィール
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1969年生まれ。石川県羽咋郡志賀町出身。米農家に生まれ、大学卒業後にJAはくいに就職。金融、総務の部署を経て、現在の部署に配属。「奇跡のリンゴ」の木村秋則(きむら・あきのり)さんの本を手に取ったことがきっかけで自然栽培に関心を持つようになり、羽咋市の職員と共に「木村秋則自然栽培実践塾」を開講。現在は経済部次長として、のと里山農業塾の事務局担当を務める。
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コバマツ
羽咋市ではJAが積極的に自然栽培を推進していると聞きました。 JAが自然栽培を推進するだなんて今まで聞いたことがありません! 普通の人からもやめておけ、と止められるのに!
はい、JAはくいでは2014年から自然栽培について勉強できる「のと里山農業塾」を開設し、全国から「自然栽培をやりたい!」という人を募っています。
粟木さん
コバマツ
農薬や肥料を農家に対して販売しているJAが、どうしてそれらを使わない農業を推進するようになったのでしょうか?
2010年に「奇跡のリンゴ」で有名な木村秋則さんの講演会が羽咋市で開かれて、県内外から1000人ほど集まったことがきっかけですね。僕も当時、木村さんの本を読んでいて自然栽培にとても関心があって、木村さんの講演会に農協職員全員に参加してもらったんです。当時の農協組合長も木村さんの話を聞き「うちの町でもぜひ推進していくべきだ」と考えて、JAで自然栽培を推進していくようになりました。
粟木さん
コバマツ
農協職員全員参加はすごい!
当時の組合長まで自然栽培に賛同するなんて、そんなにスムーズに進むんですか……!?
講演会に1000人も集まったことに対して、JAも市も自然栽培に可能性を感じたというのもありますが、当時、自然栽培に対して思いがあるJA職員が組合長を含め存在したということも大きかったと思います。その講演会が開催された年の12月に、現在ののと里山農業塾につながる「木村秋則自然栽培実践塾」を開設し、羽咋市で本格的に自然栽培の推進がスタートしていきました。
粟木さん