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中山間地に進んで参入? 中山間地と平地で異なるビジネスモデルに挑戦する「株式会社アグリーンハート」に注目

中山間地に進んで参入? 中山間地と平地で異なるビジネスモデルに挑戦する「株式会社アグリーンハート」に注目

青森県黒石市の株式会社アグリーンハートは、農業生産の条件としては課題が多いとされる「中山間地」に進んで参入。中山間地の休耕田を再生し、安全で環境負荷の少ない有機栽培での「高付加価値生産型モデル」を実践しつつ、平地では直播やスマート農業の技術を取り入れながら「低コスト大量生産型モデル」の確立にも奮闘しています。「これからの農業経営のヒント」を求め、同社の取り組みについて、ミュージシャンやテレビリポーターとしても活動する代表の佐藤拓郎さんにお話を伺いました。

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地域のために法人化、やりたい農業を求めて中山間地に参入

青森県黒石市の水稲農家の6代目として生まれた佐藤拓郎さんは、大好きなバンド活動と仕事を両立しようと高校卒業後の2000年に親元就農。31歳の時には水稲部門31haを1人で管理し、過労で2度倒れる等、家族経営の限界を感じていました。

地域に目を向けると担い手不足は深刻で、このままでは黒石市の農地(約1400ha)を既存の水稲農家10軒ほどで担う時代が来るのではないかと危機感を覚え、経営の転換を図るために法人化を決めました。

株式会社クボタ

「地域のための経営体になろうと思ったんです」と穏やかに話す佐藤さんは、2017年1月に水稲部門を独立させて株式会社アグリーンハートを設立します。水稲は設備投資が大きく、新規参入が難しいため、地域に雇用就農ができる場所を作ろうと考えてのことでした。

株式会社クボタ

現在、従業員は13名で平均年齢は39歳。8割が非農家の出身です。経営規模は水稲60ha、大豆4ha、アスパラガス13a、ニンニク20a、ジャガイモ10aといった複合的な経営です。

実は、農業の傍らテレビリポーターとしても活躍する佐藤さん。青森県内の一次産業を取材しています。

番組の企画で挑戦した『奇跡のリンゴ』の木村式自然栽培での米作りをアグリーンハートで継続しようと決意して、慣行栽培が主流の平地から離れた場所へ行こうと目を付けたのが、黒石市が130haも抱えていた中山間地の休耕田。

株式会社クボタ

黒石市に紹介してもらった休耕田の中から選んだのは、南八甲田山麓の安入(あにゅう)地区にある緩やかな棚田。そこには佐藤さんが求めていた「肥料や農薬が抜け、自然の循環を取り戻した農地」と「自由に使える水」がありました。そこで「十数年間、草だけを刈っていた」という田んぼを再生し、短期間で有機JAS認証を取得した米作りを実現します。

中山間地農業のコンセプトは「有機農業でふるさと再生」

佐藤さんに中山間地農業の課題を尋ねると「むしろ、メリットがかなりあります」と、逆にポジティブな答えが返ってきました。

「肥料や農薬が抜けた土壌はもちろん、水源が近く、綺麗でミネラルが豊富な水を自由に使うことができるので、無肥料・無堆肥・無農薬での米作りには最適です。ほ場も小さくハーベスタやバインダー等の小型機械を使い、刈った稲は自然乾燥するという昔ながらのやり方なので、休耕田を再生した有機栽培のお米としてのストーリーを付加価値として価格に乗せることができます」と語ります。

株式会社クボタ

アグリーンハートでは規模が拡大できる有機栽培技術を追い求め、現在は『BLOF理論』を栽培に取り入れ、稲刈り後から田植えまでに多様な菌を入れる「菌耕」を行い、地域資源を活用した有機栽培に取り組んでいます。

安入産のお米は、主に東京・世田谷区代田の直営店舗とネットショップで販売しています。

直営店舗の『DAIATADESICA(ダイタデシカ)フロム青森』は、小田急電鉄株式会社が運営する複合施設『世田谷キャンパス』に2020年4月にオープン。小田急電鉄から相談を受けた弘前市の商工会議所からの紹介で、食にこだわりを持つ富裕層が多く、半径1km内に約6万人が暮らす商圏に魅力を感じ、佐藤さんは出店を決めました。お米以外にも佐藤さんがテレビのロケ等で出会った生産者から買い集めた農産品も販売しています。

株式会社クボタ

また、出店と同時に田んぼのオーナー制度である『だいたんぼプロジェクト』もスタート。

入会金は1口5000円。農作業の様子等をメールやSNSで発信し、収穫した「代田米」はクルー(オーナー)たちの名前がプリントされたパッケージで3升進呈される仕組みです。さらに特別会員価格でのお米の販売や、いつでも青森空港からの送迎付きで農作業に参加できる特典等があるそうです。

「プロジェクトをやってみて、都内から黒石市に人を呼び込むことは可能だということが分かりました。関係人口を拡大していければ休耕田の再生も進みますし、会員収入で米価に左右されない経営基盤を確保することも可能です」と佐藤さん。コロナ禍の今はクルーを農作業に迎えることはできませんが、2022年度には観光協会と連携し、民泊を活用したイベントも考えています。

新しい栽培技術と有機農業、農福連携の方程式

9haの中山間地で「高付加価値生産型モデル」を実践する一方で、51haの平地では「低コスト大量生産型モデル」の確立を目指し、さまざまな直播技術やスマート農業の技術を積極的に取り入れ、減農薬や特別栽培レベルの米作りに取り組んでいます。

直播はV溝乾田直播、GPS田植機による湛水直播、ドローンによる湛水直播、さらにはクボタの販売会社のサポートを得て「初冬播き乾田直播栽培」にもチャレンジしています。

株式会社クボタ

「稲刈りが終わった水田で初冬に直播する初冬播き乾田直播栽培は、苗立ち率は20~30%ですが農閑期に作業ができ、大幅なコストカットが見込めます。テスト段階なのですが、かなり可能性があるとみています。今、育苗や田植えにかかるコストや工程を削減できる直播に取り組んでおかないと、近い将来、地域の生産力が保てないと考えています」と、佐藤さんは新しい技術を試行する意図を話します。

株式会社クボタ

スマート農業については、プログラムが組める従業員を中心にセンシング機器を自作。水位センサーの他、温度センサーで積算温度等も測定しています。また、ドローンが撮影した画像をAIが解析し、ピンポイントで農薬や肥料を散布する技術の実証試験に協力し、除草剤の量を慣行栽培の半分から10分の1に低減することを目指しています。

「本当は全て有機栽培でやりたいのですが、今はそこまでの栽培技術がありません。水稲の有機栽培で最大の課題は、雑草対策です。効果的な除草ロボットの登場を心待ちにしています」と笑います。

アグリーンハートの取り組みでもう1つ紹介したいのが「農福連携」です。2019年に「ノウフクJAS」の認証を取得し、関連会社として有機農作物の急速冷凍加工を担う株式会社ビオ・フローズンを設立しています。

株式会社クボタ

ビオ・フローズンでは、地域の規格外リンゴを使った氷花『アプローズン』等も開発

「農福連携の構想は法人化の前からありました。身近に障がいを持つ方がいたので、障がい者の生きがいを農業で作れないかとずっと考えていました。障がい者の生産性が健常者の半分なら、倍の値段で売ればいい。そんな付加価値が付けられるのは有機栽培だと思ったんです。冷凍加工はボイル、冷凍、パック詰めと作業が比較的簡単なため、農福連携と相性が良いと思いました」と話す佐藤さん。その行動力には驚きです。

株式会社クボタ

最後に今後の目標を伺いました。

「短期的な次の目標は中山間地の休耕田のさらなる再生はもちろん、地域内の資源を活用した有機栽培技術の確立と『だいたんぼプロジェクト』を通した都内の人との食育活動やファン作りを加速させることです。長期的には経営面積200haを担える経営体となること以外は、黒石市のビジョンと同じです。当社は地域のための農業法人だから…。今後は『みどりの食料システム戦略』で国や行政が有機農業を推進するために環境を整えてくれるはずなので、当社で培った技術やノウハウを地域にしっかりと還元する。それが未来の黒石市の農業に役立てばと思います」と力を込める佐藤さん。

地域のための農業は、これからが本番です。
 
 

<取材協力>
株式会社 アグリーンハート
〒036-0504青森県黒石市馬場尻東61-15
DAITADESICA フロム青森
〒155-0033 東京都世田谷区代田3-58-7 世田谷代田キャンパス
 

<提供>
株式会社クボタ 農機国内営業部
〒556-8601 大阪市浪速区敷津東1丁目2番47号

クボタは中山間地農業の未来も支えていきます。

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