「AI選果機」は人手不足解消の切り札になるのか?
農作物の品質はばらつきが生じるため、出荷に際しては必ず選果が行われている。しかし、近年、全国的に農業従事者が減少する中、選果の担い手となる人材の確保が難しくなっている産地は少なくない。
そこで今後、期待されているのがAIを搭載した選果システムだ。これまでも機械による選果は行われていたが、傷の種類や色むらなどを細かく判断することは難しく、熟練スタッフによる手作業が欠かせなかった。この選別作業をシステムが肩代わりすることで、作業者の負担軽減に貢献できると期待されているのだ。選果機の国内シェア7割を誇るシブヤ精機では、2016年からAIを搭載した外観センサーの研究開発に取り組んでいる。技術統轄本部製品企画本部副本部長の二宮和則さんがこう説明してくれた。
「病害虫などの判断は従来技術では難しく、その精度は熟練者の目視検査に大きく及びませんでしたが、人と同じレベルで判断ができるAIを搭載した外観センサーを開発することで、人手不足の解消に貢献しようとしています」
その一例として紹介できるのが、日本有数のミカンの産地として知られる静岡県のJAみっかびで、2021年11月から稼働しているミカンの選果システムだ。この地域では従来、各農家で大まかに選別した上で選果場に持ち込まれた農作物を、人の手で更に細かく選別していた。この方法では農家の負担が大きいのに加えて、選果場で働く人の確保も難しくなっていたため、AIを搭載した選果システムを導入。その結果、選果場で必要な人員を減らすとともに、各農家は規格外品を取り除くだけでよくなって労力は大幅に軽減したという。
農作物の画像を集めることで希望の選別が可能になる
AIを搭載した選果システムの開発では、膨大な画像データの収集と効率的な機械学習が必要となる。JAみっかびの場合、栽培条件の年変動を踏まえて、3年かけて収集した数百万点もの画像の中から、10万点を超えるデータを基に学習を行い、「教師付きデータ」を作成。熟練者でも難しいレベルの選別が可能なシステムが完成した。規格に適った果実かどうかであれば、99%以上の高精度で選別できるという。
同社の技術を利用し、画像の収集と機械学習を行えば、他の作物への応用も可能だ。実際に北海道のJA鹿追町では、ジャガイモを選別するAIを搭載した選果システムがすでに試験的に導入されている。
選果機の専門メーカーとして優れた技術と豊富な経験を有するシブヤ精機では、農作物に関する様々なデータが膨大に蓄積されており、AIを使った選果の課題や学習ノウハウについての知見も深い。今後、AIを搭載した選果システムの更なる飛躍が期待される。シブヤ精機の新市場開発本部部長の青島智彦さんがこう語る。
「弊社が有する光学技術、画像解析技術にAIを加えることで、これまで困難とされていた多様な特長を持つ農作物の選別や検品の自動化が可能となります。AIを搭載した選果システムは、熟練の生産者や選別作業員の目に代わる存在です。そのため、お客様の要望に応じて、画像収集から機械学習まで一から育て上げていくことになります。何か困りごとがあれば、どのようなシステムであれば解決できるか一緒に考えていきましょう」
人手不足の解消はもちろんのこと、シブヤ精機のAIを搭載した選果システムが普及すれば、農業の現場にもたらす恩恵は多いだろう。
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