食品生産工程の作業を自動化へ
生産現場から消費者の元に食品が届くまでの過程では、さまざまな選別や検査が行われています。消費者のニーズを満たす食品を提供するために、各現場で数多くの基準を設けて検査を行っていますが、対象となる農作物や食品は形状や状態にばらつきがあるため完全な自動化が難しく、一部作業員の目視検品を行っているのが現状です。
そこで今後、導入が期待されているのが人工知能(AI)を搭載した検査システムです。これまで人の目や経験に頼っていた目視検品作業をシステムが肩代わりすることで、作業員の負担軽減や人的コストの削減が期待されます。国内で稼働する選果・選別・包装プラントシステムの7割を手掛けてきたシブヤ精機株式会社では、2016年からAIを搭載した外観センサーの研究開発に取り組んでいます。同社新市場開発本部 部長の青島智彦さんがこう説明してくれました。
「従来技術では、対象物の形状・色やキズの有無は計測できても、キズの種類を特定したり異物だけを正確に捉えることは難しく、その判断は熟練の作業員の目視検品によるものでした。AIを搭載した検査システムでは、人と同じレベルでの判断が可能になるため、食品生産工程のあらゆる選別・検査の自動化に大きく貢献できます」
高い精度で選別・検査が可能になる
優れた技術と豊富な経験を有するシブヤ精機では、さまざまな青果物に関する膨大なデータや選果のノウハウが蓄積されています。これらを活用し、精度の高い選別・検査が可能なAIプラットフォームの開発に成功しました。このプラットフォームに、対象物の画像を読み込ませ、機械学習を行えばさまざまな現場で活躍する検査システムを構築できます。
そんな中、システムの実用化に向け、いち早く現場で稼働を始めたのが静岡県のJAみっかびで導入された柑橘の選果・選別システムです。日本有数の柑橘の産地として知られる同地域では、これまで各農家が家庭で腐敗などの選別を行った上で選果場に持ち込む必要があり、大きな負担となっていました。問題の解決に向け、2021年11月にAIを搭載した選果・選別システムを導入した結果、各農家の労力は大幅に軽減することになりました。
「気象や病気の発生状況は年毎に変わるため、JAみっかびでは3年ほどかけて収集した数100万点もの画像の中から、10万点を超える教師付きデータを作成し、AIの学習を繰り返し行いました。より精度の高い選別には効率的な画像収集と学習が欠かせません」と、同社製品企画本部 副本部長の二宮和則さんは説明します。
また、北海道のJA鹿追町では収穫されたジャガイモを選別する作業員が集まらないことから、人の手を借りずに作業ができるよう、AIプラットフォームを応用したジャガイモ選別システムを構築しました。それにより人の目でも識別が難しいキレツやキズ、病気の種類を判別することに成功しました。土の付着したイモでも、AIによって高度な選別が可能となったことで、収穫から選果作業の労力が大幅に軽減することになりました。
AIによる精度の高い検査の実現には、シブヤ精機がこれまで選果・選別システム開発で培ってきた光学技術、画像解析技術が生かされています。1台のカメラで波長の異なる複数の光を当て、キズや病気などの明瞭な画像を瞬時に撮影することで、より細かく精度の高い選別が可能となった同社独自のマルチスペクトル型センサーは、すでに特許取得済みの技術で、JAみっかびで導入された柑橘の選果・選別システムでも用いられています。
アボカドの「おいしさ」を計測する
こうした技術は外観の分類判断だけでなく、障害の有無や糖度など内部品質の判断にも活用されますが、シブヤ精機では、今まで困難とされてきたアボカドの内部品質センサーの開発に成功しました。
「アボカドは皮が厚く、中心に大きな種があるため、光を透過させ計測することが困難でした。そこでアボカドの上下に2つの受光器を設置して、横から強い光を当てて上下にて透過した光を計測する当社独自の2ステージ式により、これまで難しかった種周り、果頂部、果梗部にわたる内部障害が検出できるようになりました」と、二宮さんは解説します。
アボカドは果肉に含まれる脂肪分が高いとおいしさとまろやかさが良いと言われています。この装置では脂肪分の高低も測定できるようになり、アボカドのおいしさや食べ頃を推定することも可能となります。こうした技術により、内部障害のある果実を選別するとともに、脂肪分が高い、「おいしい食べ頃」を消費者にお届けできるようになりました。
シブヤ精機の検査技術がイノベーションを起こす
これらの技術を軸に新たにAIを搭載したシブヤ精機の検査システムは、食品のサプライチェーン全般での応用が進んでいます。
異物混入を防ぐため食品業界では、加工などの生産ラインの工程において高いレベルでの検査が求められます。検査の多くは人による目視で行われており、昨今は労働力の確保や人件費が課題となっています。そこでシブヤ精機では、AIを搭載した外観検査システムを使い、作業を少しでも自動化することで、これらの課題の解消のお役に立てればと考えております。
また、インスタント袋麺にスープの小袋が規定数封入されているかどうかや、食品パッケージのシール部分に生じる噛み込みの有無などの検査にも応用され、更にあらゆる現場での活躍が期待されます。
「AIを搭載した外観検査をはじめとした当社の検査システムは、農業・食品業界に限らずさまざまな業種・業態における検査の課題を解決していければと思っていますので、何かお困りごとがあればまずはご相談いただき、最適な解決方法を一緒に考えていきましょう」と青島さん。シブヤ精機が食品をはじめとして、あらゆる業種・業態のサプライチェーンにイノベーションを起こす未来はすぐそこまで来ています。
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