みどりの戦略の新法を制定するわけ
みどりの戦略は、農水省が2021年5月に決めた政策指針だ。2050年までに化学農薬と化学肥料の使用量をそれぞれ50%と30%減らし、耕地に占める有機農業の面積を4分の1に増やすことなどを目標に掲げている。気候変動などを踏まえ、環境調和型の農業を目指す国際潮流に合わせた内容だ。
新しい法律をつくるのに先立ち、みどりの戦略に沿った技術の開発や設備の導入などへのサポートは2021年度からすでに始まっている。
具体的には、農薬や化学肥料の削減に役立つスマート農業の実証実験や、有機農産物の需要を喚起する取り組み、農業関連の省エネルギー機器の導入などを資金面で支援することが、2021年度補正予算に盛り込まれた。そうした措置は今国会で審議される予算の政府案の中にも盛り込まれている。
さらにみどりの戦略に関して新法を制定するのは、そのときどきの政権の思惑に左右されず、政府として一貫して追求すべき政策であるという位置づけを明確にするためだ。法律になれば、政府は実現の責務を負う。
法案の名前は「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案」。さすがに与党内で「長すぎる」「伝わらない」との声が出た。キーワードの「みどり」も入っていない。そこで実際は「みどりの食料システム法案」という通称が使われている。
通常国会では、一般的に次年度の予算に関する審議が優先される。みどりの食料システム法案は予算関連法案ではないため、審議は4月ごろになる可能性が大きい。現状では与野党の対決法案にはなっていないので、内容の多少の修正はあっても、大筋は維持したままで成立すると思われる。
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では新法の成立で、何が起きるのかを解説しよう。まず政府が、みどりの戦略を推進する意義や行政の責務、環境負荷の低減に資する取り組みなどを明記した基本方針を決定する。これは7月ごろになる見通し。