魅力的な西洋野菜たちの種、やみくもに買うのはNG
少量多品目農家が一度は興味を持つ西洋野菜。新規就農者をはじめ、初めて種を購入した農家が経験するミスがいくつかあります。代表的なミスは次の2つではないでしょうか。
・種を買いすぎてしまい、気が付いたらかなりの金額になってしまった。
・内容量が重さや体積で表示されている場合が多く、袋に入っている種の数がわからないため、「こんなに要らなかった」「たったこれだけしか入っていない」という結果に。
私も、インターネットのオンラインショップで西洋野菜の種を見つけた時は、これからの栽培が楽しみになり、一度に4~5万円ほどの種を買ってしまったことがあります。しかし、届いた種の袋を開けてみると、予想以上に種が入っていたり、逆に少なすぎたりすることも。
このような後悔をしないために、西洋野菜の種を適切な金額と量で買うための選び方のポイントを紹介します。
種の“数”と発芽率を確認する
買った種が多すぎた場合、余った種は冷蔵庫で保管していましたが、発芽率低下のリスクを考え使わず捨てるはめになることもありました。また、翌年になると別の品種を育ててみたくなりますので、結局は無駄になってしまうことが多いものです。
しかし事前に種の“数”を把握することができれば、こうしたことは避けられます。
西洋野菜に限らず、国内の種苗会社が販売している種にもいえることですが、1袋にどのくらいの数の種が入っているかを確認することが大切です。購入する種の数をある程度把握できれば、栽培する場所の予定も立てやすくなります。買った種から苗を作るのであれば、あらかじめ定植に必要な面積を算出できるからです。種の数がある程度わかれば、そこに発芽率を掛けて、1袋からどのくらい芽が出て収穫できるか計算することもできます。よって、無駄に種を購入することもありません。
ところが、種の数を把握するのはそう簡単なことではありません。メーカーによって種の表示方法に違いがあるからです。わかりやすく粒数が表示されている種もあれば、重さ(g)や体積(ml・dl)で表示されているものもあります。
タケイファームで栽培しているビーツ(Titan Hyb. F1)を例に説明します。
種の袋にもオンラインショップでの説明でも、内容量は「3g」と表示されていますので何粒入っているかわかりません。
そこで他の品種のビーツを調べたところ、「10ml約340粒」「8ml約300粒」などと体積と一緒に粒数まで表示されている種があり、中には「10g約520粒」と重さと粒数が表示されている種もありました。多少の種の大きさに違いはありますが、これを基に3gなら520粒の30%ほど、156粒ぐらいと算出できます。発芽率は86%ですので、1袋から134本の発芽という計算となります。3袋購入すれば約400本のビーツが収穫できる計算です。
キャベツやダイコンなど、1カ所に3粒ほどまく場合は、間引きにより3分の1になることを考慮して計算する必要があります。
これはあくまでも類似の品種を参考に算出した例ですので、わからない場合は、販売元に問い合わせてみるのも一つの手です。
購入した種を数えておく
この方法は初めてその種を買う場合には通用しませんが、次にその種を買うときのために、私は苗を作る際に袋に入っている種の数をカウントしています。カウントしておくことで、翌年以降、栽培計画を立てる時にどのくらいの種を購入すればよいかがわかります。
タケイファームが栽培している品種のアーティチョークは、「種子数4g」と表示されています。昨年は9袋分種まきをしましたが、それぞれの袋に入っていた種の粒数は60、64、64、62、65、66、63、69、78。それぞれ微妙に違いますが、平均を取ればだいたいの数が把握でき、次回に向けての大切なデータとなります。
思った以上に数が多いケース
毎年フィレンツェというナスを栽培しています。1袋の種は、内容量2g、発芽率65%です。前に数えたことがあるのですが、その時は1袋に438粒の種が入っていました。これだけの数が入っていて税込み495円です。国内の種苗会社の500円前後のナスの種を買った時に30~50粒ほどしか入っていなかったこともあったので、同じくらいしか入っていないという想定で買うと、種を余らせてしまうことになります。市場やJAに大量出荷している農家と違い、少量多品目農家の多くはそんなには必要ないと思いますので気を付けなければなりません。
1袋の種の数が少ないケースを見極める
海外から輸入した種を、日本国内の業者が小分けにして販売している場合があります。
果菜類に多く、「内容量15粒」などと中身が少ないのが特徴。実際に購入してみると、本当にピッタリ15粒しか入っていません。全てではありませんが「オーガニック種子」「固定種」などと表記されている種に多く、かなり割高な印象です。
14年ほど前、変わった色の野菜を育てていたころのことです。「ミラノ大根」という紫色をしたイタリアのダイコンを知り、迷わず種を購入しました。1袋の価格は税込み550円、内容量は「0.5ml」と書かれていたのですが、袋を開けてみると約20粒ほどしか入っていません。あまりの少なさに追加で9袋購入したのを覚えています。合計10袋で5500円の買い物になりました。
大根の場合、1カ所に3粒点まきして間引きで1本立ちにするので、10袋分200粒の種をうまく栽培できたとしても、60~70本しか収穫できません。種代だけでも1本あたり80円ほどかかり、その他の経費や栽培の労力を考えると、とてもコストパフォーマンスが悪い作物でした。しかし当時は費用や効率面のデメリットよりも、タケイファームが珍しい野菜を栽培しているという情報を発信することのメリットを優先していましたので、ミラノ大根を栽培したことには意義があったと思います。
種の価格や私のように業者に苗作りを依頼する場合の費用もそうですが、野菜の売価、原価、その作物を栽培する意味を考えて買うことが重要です。
あちこちで買わず、一つの業者でまとめて買う
最近では、ホームセンターでも西洋野菜の種を見かけるようになってきましたが、購入先として便利なのはインターネットのオンラインショップ(ECサイト)だと思います。種を物色しているうちにあちこちのサイトを訪れた経験がある農家も多いのではないでしょうか。
種を購入すると大半のサイトでそこに送料が加算されますが、送料も馬鹿にならないので、私はなるべく1カ所でまとめて買うようにしています。その方が届くタイミングも同じですし、金額が大きければ送料が無料になることもあり、経済的にも効率が良いです。中には、ポイントがたまるシステムを導入しているサイトもありますので、自分がひいきにするサイトを見つけることもおすすめします。
タケイファームで栽培するジャガイモはフランスの品種が多いのですが、ECサイトの種屋さんで購入しています。付き合いも長くなっていますので、今ではこちらから連絡する前に種屋さんから連絡が来るようになりました。おかげで、種イモが不作の年でも確保できる体制になっています。
野菜の種を探している時間は、農業という仕事の中でも楽しい時間の部類に入るのではないでしょうか。実際に購入してみると、予想とは違うケースもよくあることですが、今回紹介した話が少しでもお役に立てば幸いです。
アブラナ科、ナス科、キク科、セリ科などの科目によって、品目は違っていても種の形は似ています。
少量多品目農家であれば、ある程度の科目は栽培しているのではないでしょうか。科目によって種の形や大きさは予想できるので、種まきをする時に写真を撮っておくなど、データに残しておくと今後の農業に生かされます。