少量多品目農家は“種屋”を味方に付けろ! 効率アップと省力化、売り上げアップのための付き合い方

マイナビ農業TOP > 農業経営 > 少量多品目農家は“種屋”を味方に付けろ! 効率アップと省力化、売り上げアップのための付き合い方

少量多品目農家は“種屋”を味方に付けろ! 効率アップと省力化、売り上げアップのための付き合い方

少量多品目農家は“種屋”を味方に付けろ! 効率アップと省力化、売り上げアップのための付き合い方
最終更新日:2021年02月24日

農業を始めて一度の営業もせずに、現在は栽培した野菜の95%をレストランへ直接販売しているタケイファーム代表、武井敏信(たけい・としのぶ)です。このシリーズでは売り上げを伸ばすためのちょっとした工夫をお伝えします。

多くの品目・品種を栽培するため農作業に手間のかかる少量多品目農家が効率良く仕事をするためには、種屋(種苗店)の力を活用することも重要です。オンラインショップやホームセンターで気軽に種子や資材が手に入る時代、種屋で資材等を買うメリット、そしてうまく付き合う方法とは。直接取材してプロの話を聞いてきました!

種屋とは

農家は種子や資材をどこで購入しているのでしょう。ホームセンターの園芸コーナーやJAでしょうか。最近では、インターネットを利用している人も多いはず。
タケイファームでは、「種屋」から購入することが多いです。農家の減少とともにその数が減ってきている町の種屋。扱っている商品は、種子、苗、肥料、農薬、資材、農業に関するもの全般で、実はうまく付き合うと農家にとって大変便利な存在なのです。

今回、取材したのは、千葉県我孫子市にある磯岡種苗株式会社の社長、磯岡真吾(いそおか・しんご)さん。設立は1887年、今年で134年目を迎える老舗の種屋さんです。タケイファームとの付き合いは私の祖父の代からで、40年を超える古い付き合いをしています。今回は、改めて種屋と付き合うメリットなど、面白い話を聞くことができました。業務・サービス内容に関しては、磯岡種苗の場合となりますが、皆さんの参考になればと思います。

磯岡社長

話を伺った磯岡さん

少量多品目農家が使うべき種屋のサービス

ズバリ聞きます、種屋を活用するメリットとは

武井さん

ホームセンターやインターネットなどで種子や資材が購入できる中、農家にとっての種屋さんと付き合うメリットは何ですか?

種屋はいろいろな人と付き合うので、同じ作物を作って成功した人と失敗した人を知っているわけです。農家は、成功するか失敗するかは一作に一回しか勉強できない。ところが種屋は10軒のお客さんがいれば10件のデータを知ることができるので結果が早くわかります。

磯岡社長


武井さん

種はホームセンターやインターネットでもいろいろ安く買えたりするじゃないですか。種屋さんは少し割高に感じるのですが。

例えば、ネギを栽培したいと言ったら、種は何百種類ってあるわけですよ。その中で種子をまく時期や収穫したい時期を農家さんから聞いて、おすすめをピックアップできますね。種屋は何十件、何百件といろんなデータがあるから、品種ごとの特性というのがわかりますよね。中にはその時期に適さない品種をやっている人もいるから、その時には声をかけるようにしていますよ。

磯岡社長

種屋には今までに培ったデータがノウハウとして蓄積されており、それに基づいたアドバイスがもらえるのが最大のメリットのようです。これは新規就農者だけでなくベテラン農家にとっても、成功に近づく種選びの近道で、年に一度しか栽培できない品目であれば、さらにありがたい情報となります。

資材

豊富な資材の在庫をそろえている

苗も作ってくれる?

実は、タケイファームが最もありがたいと思っている磯岡種苗のサービスが、「苗づくり」です。これについても聞いてみました。

武井さん

磯岡種苗さんはうちの苗を作ってくれるじゃないですか。それってどこの種屋さんも同じようにやってくれるのですか?

どうなんですかね。うちはやりますけど店ごとに対応は違うんじゃないですかね。そこの店に行って頼んでみてって感じですかね。

磯岡社長


武井さん

苗はどうやって育てているんですか?

うちの場合は、委託を受けたものも店で売る苗も、育てる専門の苗屋さんに頼んでいます。農家にも一般の人にも、いいものを買ってもらいたいので。

磯岡社長

タケイファームでは、昔は全て自分で苗を作っていましたが、最近では、海外からとりよせたナスやキャベツの種を磯岡種苗さんに渡して、必要本数を伝え、苗を作ってもらっています。うちには育苗の施設がないので育苗に四苦八苦していたのですが、依頼するようになってからは良い苗が手に入り、時間と労働力の効率アップになっています。ただし、育苗の代金を払ってもその分売り上げで回収できる品種をお願いすることは重要です。

依頼した苗

タケイファームが依頼したイタリアのナス「フィレンツェ」の苗

配達してくれるのはなぜ?

電話で注文すれば、小さな種子一袋からとても重い資材まで、すぐに運んでくれるのも大変ありがたいサービスです。

武井さん

磯岡さんは配達してくれるじゃないですか。それはどうしてですか?

配達ができるスタッフがいるからですね。店だけで商売ができちゃう場合は配達しなくても大丈夫ですが、うちはお客さんと距離が離れているので配達サービスをしなければ商売にならないですよね。

磯岡社長


武井さん

配達は他の農家にもニーズのあるサービスなんですね。いつごろからやっているのですか?

配達しだしたのは60年くらい前からですかね。

磯岡社長


武井さん

種一袋で配達するのってコスト的にどうなんですか?

うちの場合、毎日20~30軒の配達があるんですよ。だから、100~200円の種でも配達できるんですけど、それが毎日1~2軒の配達しかなかったらできなくなっちゃうんですよね。

磯岡社長

種屋の配達

種一袋から重いものまで配達してくれるサービス

支払いはツケで

私にとってありがたいツケ払い。面倒な支払いがまとめてできる、便利なサービスだと思っていたのですが、最近の若い農家は意識が変わってきているようです。

武井さん

ツケは信用問題じゃないですか。誰もかれもできないですよね。

できないですね。基本は農家さんだけ。あとは紹介とかないとね~。

磯岡社長


武井さん

うちは支払いがツケだから信用されているんですね(笑)。他の農家さんはどうなんですか?

それが、ツケ商売で後集金というのがね、お客さんがだんだんやらなくなってきてるんですよね。今は店のお客さんの支払いは現金またはカード。新規の人、今の若い人は支払いしたいんですよね。どんだけ使ったかわからなくなっちゃうから。

磯岡社長


武井さん

ツケ払いって、お金をおろしに行く手間もないし、お金になってないものに対して先に投資ができて、収穫してお金を稼いだあとに支払いができるじゃないですか。

今まではそうやってたんですよね。意外とそれが不評なんですよ。いくら使ったかわからなくなっちゃうのが一番ですね。特に新規の人の場合は、どうしてもお金が大変になっちゃうんで、一回一回わかったほうがいいって人が多いですね。新規の人はここまで使うっていう線を決めてやっているんで、うちにきて電卓はじいて「うーん、こんなに買ったらダメ」って人がいますよ。

磯岡社長

農業は最初に種や資材などの投資があって、収穫してから売り上げが成立します。ツケのメリットは、最初の時点では支払いはなく、売り上げが発生してから支払うのでお金がなくてもスタートできることです。しかし、最近の新規就農の人たちはしっかりと計算して、投資のお金も先に払う人が多いようです。

種の注文

武井さん

基本的にお店にない種も探してくれて、どこのメーカーのものでも入手できるのですか?

大丈夫です。日本の代理店が入っているものであれば海外のメーカーの種も大丈夫です。
農家さんは紙に細かく書いて注文してくるじゃないですか。それらはほとんど仕入れができますね。

磯岡社長


武井さん

インターネットで自分で種子を探す場合、メーカーがそれぞれ違うと欲しい種をそろえるのって大変ですよね。送料も別々にかかってしまうし。

相当大変ですよね。うちも最初大変だったんですけど、従業員がいるんでなんとかできるんですよ。

磯岡社長

店内の種コーナー

店内の種コーナー

種屋とどう付き合うか

単なる業者という付き合いではなく、信頼関係を作ることによって、種屋は農家にとって強い味方になります。折に触れてコミュニケーションをとることによって、お互いに尊重しあえる関係がうまれます。電話で話すだけでなく、時にはお店に出向いて面と向かって話したりしてコミュニケーションをとることも重要でしょう。
磯岡種苗の場合は配達の時に、種子や資材についての詳細を聞いたりすることができます。年々、農家が減ってきていてそれに伴って種屋も減少していますが、家の近くで種屋を見かけたら、立ち寄ってみてください。農家にとってとても勉強になる情報がたくさん待っています。

今回は、磯岡種苗のサービスを例にとって書きましたが、全ての種屋が同じサービスをしているわけではありません。自分が解決したい農業の悩みがある場合は、一度、近くの店に相談してみるのもよいでしょう。

お客さんとコミュニケーション

お客さんとのコミュニケーションでお互いに情報交換

磯岡さんは、インタビューの最後に「新規就農者には頑張ってもらいたいですね」と言っていました。

おまけの虎の巻

種屋の店内は種や資材など、農業に関するありとあらゆるものが置いてあります。初めて見かけるものもあり、質問してみると、作業効率がアップする便利なものがあったりします。困っていることを相談したら便利なものを紹介してくれるかもしれません。種屋は農業のマニアックなアミューズメントパークみたいなものです。

磯岡種苗株式会社
Facebook

関連記事
少量多品目農家の土づくりは意味がある? 「土づくりをしない」という選択
少量多品目農家の土づくりは意味がある? 「土づくりをしない」という選択
農業を始めて一度の営業もせずに、現在は栽培した野菜の95%をレストランへ直接販売しているタケイファーム代表、武井敏信(たけい・としのぶ)です。このシリーズでは売り上げを伸ばすためのちょっとした工夫をお伝えします。 「そ…

シェアする

  • twitter
  • facebook
  • LINE

関連記事

タイアップ企画

カテゴリー一覧