少量多品目農家にとって不可欠な農機具とは
農機具は、効率的に作業を進めることができるアイテムなので、労働力と時間の短縮を考えると、ないよりはあるに越したことはありません。しかしながら、トラクターなどは、中古でも意外と高く、投資することを考えてしまう人もいるのではないでしょうか。軌道に乗るまでは、購入せずに借りるという選択肢もあります。今回は、少量多品目農家の私が普段の農作業で必要になり購入した農機具を例に話を進めていきます。
トラクター
私がトラクターを使う主な目的は畑を耕すことです。取り付ける機械によってできることはたくさんありますが、圃場の広さや土質によって、大きさや馬力を選ぶ必要があります。グレードによっては、キャビン(車室)がありエアコン付きという快適なトラクターもあります。現在メインで使用しているのは23馬力のトラクターです。

中古で購入したトラクター
管理機・耕運機
畝立てや土寄せなどの細かい作業や管理をする為に使用します。就農当時はこの作業をクワで行っていましたが、機械の便利さを知ってしまうと今ではクワで作業することは考えられません。労働力の軽減や時間の短縮の他に、畝立ても真っすぐにできるので、見た目も作業後の畑の状態はきれいです。少量多品目で農業を行う場合、取り回しのよい管理機が活躍する場所はたくさんあります。

取り回しがよい管理機

畝立て後、畑はきれいに見える
刈払(かりばらい)機
農業をする上でどうしても付き合っていかなければならない雑草。梅雨明けの夏場の草には何度悩まされたかわかりません。対策として購入したのは2台の刈払機。エンジン式の刈払機と充電式の刈払機です。エンジン式の刈払機は重く、使用するたびに燃料代がかかるというデメリットはありますが、パワーがあります。一方、充電式の刈払機は軽く、燃料代はかかりませんが、パワーが割と弱いため長時間の作業には不向き。最初、エンジン式を購入しましたが、重さによる体への負担と頻繁に購入しなければならない燃料代を考えて、充電式を追加で購入しました。両方を使った結果、ストレスなく草が刈れるパワーを重視してエンジン式をメインで使用しています。

左はエンジン式、右は充電式
乗用の草刈機
広い面積が草畑となってしまい、泣く泣く購入したのは乗用の草刈機。ゴーカートに乗るような感覚で草刈りができ、刈払機と比較すると作業時間は1/20くらいに短縮できます。ただし、狭い場所での使用には向いていませんので、広い面積の草を刈る場合に限られます。

乗用の草刈機
野菜用簡易移植機
私が就農した当時は、両親が長ネギを市場へ出荷していたのでその手伝いをしていました。長ネギの栽培で何が嫌いかというと苗の植え付けです。管理機で溝を掘り、苗を1本1本手で植え付けていたので、腰は痛くなるし、時間がかかるし、とにかく嫌な作業でした。私が使用している「簡易移植機ひっぱりくん」はチェーンポット専用の管理移植機で、溝切り→植え付け→土寄せ→鎮圧の移植作業を同時に行うことができます。作業効率は手で植えていた頃より50倍はアップしたと思います。
今は、長ネギ、リーキをメインに使用していますが、ホウレンソウやミズナ、コマツナなどにも使用することができます。

野菜用簡易移植機
調達の仕方その1:買う
農機具の中でもトラクターの購入はよく検討することが必要です。農業をしている圃場の状態、栽培する作物、そして使い方、これらによって選ぶトラクターも変わってきます。また、新品で買うのか、中古で買うのかによっても予算が大きく変わります。
先日、中古のトラクターを80万円で購入しました。23馬力でキャビン付き、エアコン付きです。購入先は、父の代から付き合っている地元の農機具屋で、タケイファームの農機具の修理やメンテナンスをお願いしています。何十年も使用していたトラクターを修理する機会が増えてきていて、いつ壊れるかわからなかったので、「中古のトラクターが出てきたら教えてください」と声をかけていました。このトラクターは、この農機具屋の顧客の農家が売りに出したもので、長年メンテナンスがされ、状態も把握されていたので、中古といえども安心して購入することができました。最近ではインターネットでもトラクターを購入できるようですが、メンテナンスなど、信用できるかを確認する必要があります。
トラクターは、装備などにもよりますが、新車の場合1馬力10万円と言われています。23馬力なら230万円で、かなりの投資になります。私が現在30代でしたら新車も視野にあったかもしれませんが、そう若くもなく、あと何年農業ができるかわかりませんので、中古で十分という結論となりました。

メンテナンス済みの中古のトラクター
調達の仕方その2:借りる
農機具の中には年に数回、または数日だけ必要になるものもあります。今は乗用の草刈機を所有していますが、無い頃は同じ用途のものを借りていました。
最初は、ハンマーナイフモアを地元のJAで借りました。金額は記憶が定かではありませんが、確か1日1万円ほどだったと思います。ちょうど、草が勢いよく成長する時期で、他に予約が入っていたせいもあり、その時は借りられた日数が1日のみでした。畑からJAまで片道30分かけて取りに行き、終了後返さなければならなかったので、作業効率が悪くJAで借りたのはこの1回のみでした。
次に借りたのは知り合いの農家。こちらは期間に制限がなかったので、2週間ほど借りました。おかげで1.4ヘクタールの草畑が見事にきれいになりましたが、酷使したこともあり、機械屋にメンテナンスをしてもらいベルトなどを新品に交換して返却しました。
時には、借りるという手段で農作業を乗り越えることもできますが、借りたマナーとして、メンテナンスして戻すことが必要だと思います。
メンテナンスにかかる手間も重要
ストレスのない農作業をするためには、農機具と上手に付き合う必要があります。トラクターなどは、定期的にエンジンをかけ、動かすことで調子を見ることができます。そして、いつもと違う音が聞こえたりしたら、忙しい時期に壊れてしまうことのないようにメンテナンスをすることが重要です。
トラクターや管理機、刈払機などは、自動車と同じように消耗する部品が多く、トラクターのタイヤなどは、自分で交換するというのは大変です。メンテナンスが好きな人は自分でできてしまう作業もあるかもしれませんが、いざという時のために、農機具屋と仲良くなっておくのもよいかと思います。私がお願いしている農機具屋は出張修理に来てくれますし、トラックで引き取りにも来てくれます。
必要な作業がある時期に万が一農機具が壊れてしまうと農作業の段取りも遅れ、結果、作物の失敗につながるケースもあります。人手が少ない少量多品目農家にとって農機具は大切なパートナー、日ごろからしっかりケアしてあげましょう。
農機具の故障の具合がひどくなってから修理に出すと、修理代金も高くついてしまいます。人間の体と同じで、早めの対処をすることで故障も軽く済みますし、修理代も節約できます。そして、修理やメンテナンスを依頼する時は、必ず見積もりを取ることも大切です。
ちなみに、知り合いから借りたハンマーナイフモアのベルト交換は4万円ほどでした。修理代としては少し高めですが、1日あたりのレンタル料が1万円のハンマーナイフモアを2週間借りると14万円になりますので、比較すると圧倒的に安く、知り合いの農家との関係を続けていくには決して高くはなかったと思います。