少量多品目農家は「一人農業」を目指すべき? 土地を広げず人を雇わない農業のメリット

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少量多品目農家は「一人農業」を目指すべき? 土地を広げず人を雇わない農業のメリット

少量多品目農家は「一人農業」を目指すべき? 土地を広げず人を雇わない農業のメリット
最終更新日:2021年03月22日

農業を始めて一度の営業もせずに、現在は栽培した野菜の95%をレストランへ直接販売しているタケイファーム代表、武井敏信(たけい・としのぶ)です。このシリーズでは売り上げを伸ばすためのちょっとした工夫をお伝えします。

農業で売り上げをアップするには、出荷量を上げる方法が一般的。そのため、生産量を増やす→圃場(ほじょう)を広げる→人を増やすという図式が成立します。しかし、広い土地でたくさん作るだけが農業ではありません。少量多品目だからこそできる、人を雇わない農業の選択も考えてみませんか。

一人農業に限界はあるか

私の営農スタイルは基本「一人農業」です。絶対にやりたくなかった仕事が農業で、この職業に憧れや期待するものなどは全くなく、人生をあきらめて農業を始めた私。これからは、ひっそりと生きていくものと思っていましたので、就農当初から一人でできる農業を考えていました。

農業を始めて9年ほど経った頃、知り合いから紹介され見習いを入れたことがありました。前職の自動車販売では店長をしていましたので、人を教育することは決して苦手ではなく嫌いでもありません。しかし、その人は目に持病があったため砂ぼこりで結膜炎になりやすく畑には向いていないと気づき、半年でタケイファームを辞めました。
他人と一緒に農業をやったこの半年間で、私は2つのことに気づきました。

1. レストランへ出荷するために収穫する野菜のクオリティーについて、私のガイドラインを他人に伝えるのが難しいこと。

2. 人を雇っている場合は雨などで畑仕事ができないときも無理やり仕事を作らなければならず、自分の時間の有効活用ができないこと。

元々、一人でやれる農業を考えていたせいもあり、人が入ったことで自分のペースが乱され、効率が上がらないと感じてしまったのです。人を雇うのにはその人に仕事を与えなければならない責任があるとも気づきました。それ以来、何人かタケイファームで研修を希望する人はいたのですが、全てお断りしています。

ルバーブの収穫は切るだけ、効率が良い

気ままな一人農業

まずは自分が求める農業を見極める

一人での農業は大変と思う人も多いかもしれません。私も就農したばかりの頃はそう思っていました。お金を稼ぐために野菜を作っているけれども思うように利益が上がらず、「やり方がいけないのでは」「野菜がいけないのでは」といろいろと模索していた時期。当時の労働時間は休憩もとらず食事もとらず、毎日12~15時間。マルシェに出店する前日は夜中の12時まで袋詰めをしていた時もありました。しかも休みは雨の日だけ。今のタケイファームでは考えられないことです。
実際、複数でやるべき農業を一人でやるとこうなってしまいます。残ったのは、自分に投げかける「今日もお疲れ」というねぎらいの言葉と僅かな売り上げ。一人でやる農業はやり方を考えなければこのような結果となります。
薄利多売の農業を求める場合、一人では無理です。しかし、一人でもできることはたくさんあり、クオリティーの高い野菜を作ることもできます。むしろ、それをうまくプロモーションできれば大きな武器となります。
結局は、自分がどこのステージで勝負するか、しっかりと決めて取り組むことが大事なのです。

売り上げを上げるためには土地を広げ、人を雇うという一つのやり方がありますが、別の方法もあります。それは、単価を上げることです。一人での農業は、時間と労力に限りがあるため、市場出荷などには向いていませんが、単価を上げても売れる販売先を見つけ、栽培する品目をしぼれば、一人でも農業は可能になります。

畑トラクター

無心でトラクターを走らせる

一人で農業をするのに必要な3つのこと

その1 効率よくやる

言いかえれば、勇気を出してやらないことを決めてしまうことです。調整作業に時間がかかる品目、思った金額で売れない販売先など、労力の割に売り上げが上がらないことはやめてしまいましょう。1万円売り上げるのにどのくらいの野菜が必要か、それを作るのにどのくらいの時間が必要か。あらためて考えてみることが大切です。

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その2 作業を外注する

最初は、知識と経験を増やすために自分でやることは重要です。しかし、ある程度できるようになったら、自分でやる必要があるか、もっと効率を上げるために便利な方法はないかと考えてみましょう。
例えば苗作りですが、以前は自分で作っていました。一から作ることが大切なことだと思っていましたし、それが普通で、それが農業だと思っていました。ある時から、効率的な売り上げが望める品目は、苗を外注に委託しても確実に利益が上がるという計算ができてからは、全て外注にお願いしています。これによって、その時間と労力を別のところに使うことができ、さらに売り上げを上げることができるようになりました。

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その3 戦うステージを決める

限られた労働力と時間で単価を上げるステージとして、私が選んだのはレストランです。前から西洋野菜や珍しい野菜を栽培していたことで、それがきっかけとなり、一般消費者よりもシェフに必要とされました。もちろん、スーパーで販売されているような普通の野菜も栽培しています。今では、プロに自分の野菜を評価してもらうことは、プレッシャーがある反面、おもしろさもあります。

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ステージはレストラン

勝負すると決めたステージはレストラン

限界を決めるのはいつも自分

一人だからできない、一人だからもうからないということはありません。一人農業でできることは限られていますが、「農業はやり方次第」とよく言われているように、工夫をして一人でもできることを探すのも農業の魅力であり、醍醐味(だいごみ)だと思います。
一人での農業はある意味限界がないと言えるのではないでしょうか。

一人畑を歩く

一人農業には限界がない

おまけの虎の巻

売り上げを上げるために、圃場を広げるという一つのやり方。今までの人数では足りないので人を入れ、作業効率を上げるために機械を投入。それらの経費を回収するための苦労は計り知れません。私は、大金を得たいという目的はなく、自分が楽しめる生活費が得られれば満足です。農業で求める指標は皆違いますが、一人での農業は気楽でおもしろい農業であることも確かです。

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