おいしいのは当たり前。目指すのは、プロが作るプロのための野菜!
南あわじ市の人口4万5747人(令和4年1月末時点)のうち、「倭文長田地域」に暮らすのは136世帯・321人。農業に携わる方がほとんどですが、少子高齢化の影響で離農者も多く、耕作放棄地が増えています。
今回の研修先で、親方農家となるTop Field代表の堤直也(つつみなおや)さんは、自動車整備士として就職したものの、生まれ育った集落の農業が廃れていくのを見過ごせないと2013年に就農を決意。子どものころから兼業農家の両親を手伝っていた経験を生かし、2015年にTop Fieldを設立しました。
レタス3ha、たまねぎ60aからのスタートでしたが、すぐにレタス、たまねぎともに倍以上の作付面積となり、2018年からは水稲も手掛けるようになりました。現在はレタス12ha、たまねぎ3ha、水稲10haの圃場を10数名のスタッフとともに切り盛りしています。
「おいしいのは当たり前。私たちがこだわっているのは、野菜を作るプロとしてどうあるべきか…。それを追求するために自らに高いハードルを課し、 “誰にもできることを誰にもできないレベルで追求すること”を経営理念として常に成長することを意識しています」と話す堤さん。
〈土づくり〉では圃場ごとに土壌診断を毎年行い、栽培する作物に合った土づくりを実践。ミネラルが豊富で飲んでもおいしい〈湧き水〉や〈地域の堆肥〉を使用することで化学肥料の使用を最小限に抑えています。
独自の販売ルートを展開する親方農家。顧客のニーズが学べるのも魅力!
野菜作りへの情熱はもちろん、Top Fieldを語る上で外せないのが、独自の販売ルートを確立していること。堤さんは自ら販売会社(合同会社アークス)を立ち上げ、契約販売に取り組んでいます。
「当日収穫・当日出荷を基本に圃場で選果作業を行うので、コストを削減できるのがメリットです。当日収穫だから急な発注にも対応ができ、同じ志を持つ島内の生産者と連携することで欠品リスクも防げます。また、販売先とダイレクトにつながることで、最新のニーズにリアルタイムでお応えできるのも強みです。例えばレタスのラッピング、生産者側は欠かせない作業だと考えていましたが、販売先の加工会社にとってはラッピングをはがす作業が手間になるとの声を受け、すぐにやめました。こうした生の声が聞けるのも独自の販売ルートのおかげでしょうね」と笑います。
雇用型で3年間の基礎研修と2年間の実践を経て、6年目に独立!
そんなTop Fieldでは、独立・自営就農に向けた〈生産スキル〉と〈経営スキル〉を従業員として5年間雇用されながら身につける『就農・定着応援プラン』を準備しています。
1年目は基礎となる手作業での鍬作業や排水作業、小型農機の基礎知識、種まきから収穫までの流れを学ぶとともに、Top Fieldの経営計画や農業にまつわるお金の流れ、一反あたりの歩留りや収益などの理解を深めます。また、トラクターやフォークリフトなど農業経営に不可欠な機械の免許も1年目から順次取得していきます。
2年目、3年目は1年目で経験した〈生産スキル〉のブラッシュアップを図るとともに、後輩の育成やマネジメントも経験。〈経営スキル〉では農業経営セミナーへの参加や独立に向けた作付・資金計画の策定など、営農に必要な実践的な研修に注力していきます。
最初の3年間は親方や先輩従業員の指導のもとで基礎的な経験を積み重ね、4年目、5年目は自己管理の圃場運営へ。この間に生み出した利益は、独立資金に充てることが可能です。
「最初から農業を仕事にすると決めつけなくても大丈夫です。週1回の農業体験からのスタートも大歓迎ですし、できそうだと思えば体験日数を増やしていけばいい。その積み重ねの中で農業を仕事にするかどうかを決め、独立・自営就農を目指すのか、当社の社員になるか、さまざまな選択肢からベストを選べばいいと思っています」と語る堤さん。実際、研修を受けた人材が独立している実績もあり、その方は今ではおいしいレタスを育てる協力農家に名を連ね、アークスにも出荷していると教えてくれました。
お話を伺うなかで特に魅力に感じたのは、技術だけでなく作付や資金計画、経営改善ノウハウを教えてもらえ、研修期間中にそれを実践する機会を与えてもらえること。新規就農の際に必要になる就農計画書の作成に欠かせない知識や考え方を、Top Fieldの経営を通じてリアルに体験できるのは非常に意義のあることだと思いました。
南あわじ市は就農前も就農後も手厚いサポートで、あなたを応援します!
就農希望者を支えるのは親方農家だけではありません。農政の情報提供や農家との連絡調整などを行う〈南あわじ市農林振興課〉、親方農家への指導や就農後の研修支援を担う〈南淡路農業改良普及センター〉や販売面や資材面の支援を行う〈あわじ島農業協同組合〉がタッグを組む「南あわじ市就農支援連絡協議会」のみなさんが全面的にバックアップしてくれるのも心強いところです。
最後に、どんな方がTop Fieldの農業に向いているかを堤さんに尋ねたところ、「毎日同じことを繰り返す仕事はつまらないと感じる方は農業に向いています。生き物や自然を相手にする農業は昨日と同じ今日はなく、日々考えるのが仕事です。それを面白いと思える方であれば、きっと農業を楽しめると思います。後は、仲間と一緒にゴールを目指すチームワークや地域とのつながりを大切にする姿勢があれば嬉しいですね。うちはスタッフのほとんどが20代、30代なので若い方は特になじみやすいと思いますよ」とエールを送ります。
初対面のマイナビ農業取材班にも屈託のない笑顔で気さくに接してくれた堤さんやスタッフのみなさんはとても魅力的。こんな方々と取り組む農業はきっと楽しいだろうなと感じました。
この記事を読んで、南あわじ市の「倭文長田地域」での農業に興味を持った方は、ぜひ、〈南あわじ市農林振興課〉までお問い合わせください。
◆お問い合わせ
南あわじ市 農林振興課
〒656-0492兵庫県南あわじ市市善光寺22番地1
TEL:0799-43-5223
お問い合わせフォームはこちら