輸出目標3000億円。ドン・キホーテが仕掛ける、JAPANブランドの大攻勢!【大企業は農業を変えるか?第4回】|マイナビ農業

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輸出目標3000億円。ドン・キホーテが仕掛ける、JAPANブランドの大攻勢!【大企業は農業を変えるか?第4回】

輸出目標3000億円。ドン・キホーテが仕掛ける、JAPANブランドの大攻勢!【大企業は農業を変えるか?第4回】

「日本の農産物の輸出額が1兆円を超えた」。そんなニュースが農業界をにぎわせたばかりだが、なんと1社だけで3000億円の輸出を目指す企業があった。「ドン・キホーテ」で有名な小売大手パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)だ。日本産に特化した小売店「DON DON DONKI」を展開するなど、アジアで積極攻勢をかけている。そこでは日本の農産物が売れに売れていた! 連載「大企業は農業を変えるか?」の第4回。

PPIHは海外への積極的な店舗展開も行っているが、アジアにある店舗のコンセプトは「JAPAN」だ。その真相を知るべく、海外向けの農産物調達を担当している海外事業MDサポート本部のPPIC事務局運営責任者、押寛子(おさえ・ひろこ)さんを訪ねた。

海外店舗は独特のコンセプト!

──アジアに展開する「DON DON DONKI(ドンドンドンキ)」。この店舗は、日本にある「ドン・キホーテ」とは異なるコンセプトだそうですね。

そうなんです。日本の方がイメージする“ドンキ”とはまったく異なります。商品構成はほとんどが食品で、「ジャパンブランド・スペシャリティストア」をコンセプトに、日本ならではの商品に特化しています。青果や肉類など農産物の多くも、日本から輸出したものです。
昨年、台湾、マレーシア、マカオに出店しましたが、香港、シンガポール、タイにも展開し、アジア全体で30店舗あります。今後も積極的に展開していく計画です。

──海外に進出する日本の小売業大手は、ローカルの商品も調達しているのが一般的だと思います。そんな中、現地の商品をほとんど調達せず日本産に特化するのはかなり珍しい戦略ですね。アジアではJAPANブランドは強いのですか?

はい。日本の食品の品質がトップクラスだということは、間違いありません。現地の方のイメージとしても、日本のものは高品質だと広く受け入れられています。安心・安全というイメージもあるようです。売り場にもあえて日本語のPOPを設置したりして、日本に来たかのようなワクワク感を演出しています。現地のスーパーに並んでいる農産物に比べれば高い価格ですが、日本の農産物は大変人気があります。もっとも、以前は日本の農産物はもっと高い価格でしか手に入らなかったのですが、DON DON DONKIでは、富裕層に限らず多くのローカルの方々にご来店いただける価格帯になっています。

香港の売り場。あえて日本語が書いてあるPOPやちょうちんを配している

──お店の写真を拝見すると、ワクワク感があふれる売り場作りは、日本国内の店舗と共通しているようですね。具体的には、どんなものが売れているのでしょうか。

野菜、果物、肉類、どれも本当に人気です。ナンバーワン商品は焼き芋ですね。サツマイモは主に鹿児島産で、焼き芋だけで年間600トン近くを販売します。
イチゴやキノコもよく動きます。そのほか、農産加工品も人気で、たとえば青森県産リンゴジュースは、1年で12万点を売りました。

──この日本産に特化するというコンセプトはどのように生まれたのですか?

会長の安田隆夫(やすだ・たかお)がシンガポールに移住した際、現地で日本産食品が高値で販売されているのを見て、これでは高所得者しか手が出ないだろう、と気づいたのがきっかけです。もっと手頃な価格で日本産食品を販売できれば、マーケットが大きく広がると見込んで開発した新業態の店舗が「DON DON DONKI」です。2017年にシンガポールに1号店をオープンしました。

最初は苦労した生鮮品の輸出

──しかし、生鮮を含む農林水産物の輸出というと、苦労も多いのではないでしょうか。

たとえばシンガポールだと、生産地から店頭に並ぶまで約1週間かかります。その間の鮮度保持は本当に大変です。開業当初は、現地に商品を送ってはみたものの、かなり歩留まりが悪く、苦労しました。今では、コールドチェーン(低温流通)の徹底はもちろんのこと、品質劣化の原因となるエチレンが出ないような梱包材を使用したり、なるべく生産地に近い港を利用したりするなど、工夫を重ねてきたので、品質を保持したまま現地に届けることができています。
また、検疫の課題もあり、輸出が不可能な品目もあります。ですが、一部の品目については、農林水産省をはじめとする省庁の方々と日ごろからご相談させていただき、輸出が可能になったものも出てきています。

当時の苦労について話す押さん

──販売促進の上での苦労もありますか?

現地の方は食べ方を知らなかったりします。たとえば、お茶漬けをふりかけと間違えてご飯にかけてそのまま食べてしまったということもありました。なので、おいしい食べ方の動画を作成し、周知に努めています。
ちなみにマレーシアは、イスラム教徒の方が多いのでハラル認証のものもそろえていますが、まだまだ日本産で認証を取っている商品は少ないので、これからの課題ですね。

また、お米も重要な商材になってくると思いますが、いきなり日本のお米を家庭で楽しんでもらうのはハードルが高い。そこでシンガポールでは、昨年10月に回転寿司の店をオープンし、日本のお米の良さを伝えています。お米は北海道産「ななつぼし」で、すし酢は北海道産利尻昆布と鹿児島県産かつおぶしを使っています。

昨年開業の香港の回転寿司店は、「日本の魚市場×海中」をテーマにした内装になっている

熊本のメロンが人気!

──日本の農産物はどのように調達しているのですか?

ルートはいくつかありますが、JA全農さんとの提携によって、全国のJAからさまざまな商品を紹介していただくこともあります。たとえば、熊本県内の6つのJAから出荷していただいて「熊本メロンフェア」を開催し、2021年には約50トンを販売しました。売り場では「くまモン」も活躍していましたよ。

さらに、当社独自の取り組みとして、会員制組織パン・パシフィック・インターナショナルクラブ(PPIC)を組織しています。これは、PPIHの海外の店舗への農畜水産物の輸出を希望する法人・個人事業主であれば、無料で入会できる組織です。当社との取引契約の締結のほか、定期的な商談の機会や、海外店舗の情報などを提供しています。
また、自治体や金融機関にもPPICの会員になっていただいて、輸出を希望する生産者とのマッチングを行っていただいています。

生産者のみなさんにとっては、輸出をするというとハードルが高く感じられるかもしれません。しかし、PPICがしっかりサポートしていくので、ぜひ気軽に問い合わせていただけたらうれしいですね。

──それにしても、2024年に海外店舗の売上高3000億円、そして2030年には売上高を1兆円とし、輸出額3000億円を目標としているということですが、大変大きな数字です。日本の農産物の輸出額が1兆円を超えたばかりです。

まず、2024年の海外店舗売り上げは十分に可能な数字だと見込んでいます。それほどに、海外で日本産食品は求められています。
生産者さんにとっても、当社を通じて輸出に取り組んでいただくことで、「安定出荷先の確保」「出荷価格の安定」が可能になってきます。ひいては、日本の農業の課題解決の一助になるのではないかと考えています。

取材後記

最初にPPIHについて調べていて思ったことは、目標3000億円のダイナミックさ、である。
農業というものは、その性格上、指数関数的な(倍々ゲーム的な)拡大が難しい。農地の広さや植物の生育スピードにより制約される。だから、とてつもなく大きな目標を掲げるという思考にはなりにくい。

だが、PPIHは、1989年に東京都府中市で「ドン・キホーテ」1号店を開業したあと、瞬く間に成長し、2000年には東証1部上場を果たしている。この間、11年しかない。
スピーディーでパワフルな事業展開は、企業風土となっている。
そこには、ビジネスの時間感覚をめぐる建設的な役割分担があるといえるだろう。

(もちろん、スピードが速いだけではない。小売業として地道な努力もある。たとえば、食べ方の紹介動画も数多く作成し、売り場で展開している。)

ここで考えなくてはいけないことは、日本農業の課題解決には、さほど時間的余裕がない、ということだ。
野菜や果樹を生産するというビジネスを行う人の時間感覚がゆっくりとした地道なものになることは、決して悪いことではないし、不合理でもない。ただ、日本農業のピンチ拡大は、こちらの都合を待っていてはくれない。たとえば、耕作放棄地の問題を考えても、一度荒れ地になってしまったら、農地に戻すのは大変なコストがかかる。

そのように考えると、「日本の農産物の品質は素晴らしい」と言い切る小売業、それもスピーディーな事業展開を得意とする企業があるということは、とんでもなく心強いことだ。

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