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なぜ中国野菜から他にシフトするのか、農家が話す農業のリアル

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

なぜ中国野菜から他にシフトするのか、農家が話す農業のリアル

農家を取材するとき、たいてい「特別な何か」を期待して農場に向かう。珍しい作物や独自の栽培方法、ユニークな販売手法、あるいは急速な規模拡大などだ。だがそういう取材を重ねるだけで、農業の本当の姿を理解し、伝えることができるのだろうか。千葉県柏市の野菜農家、西川裕幸(にしかわ・ひろゆき)さんへの取材は、そのことを考えるきっかけになった。

「ふつうのチンゲンサイ」がなぜか消費者をひきつけた

JR柏駅の近くにある食品スーパーを、1カ月ほど前にのぞいてみたことが、取材のきっかけになった。ちょっと高級だったり、珍しかったりする農産物が並んでいるので、取材テーマを探してよく立ち寄るスーパーだ。

その日、目に留まったのは「西川ファーム」と印刷した袋に入ったチンゲンサイとターサイだった。興味を持ち、スマホで検索してみると、「中国野菜を広めている」「3代目が活躍」といった記事を見つけることができた。

取材してみたくなったので、知人の農家のつてで連絡先を教えてもらった。インタビューを申し込むにあたり、なぜ話を聞きたいと思ったのかを相手に伝える必要があると考え、「棚に並んだチンゲンサイがとてもいい感じに見えた」と伝えた。すると、西川さんから意外な言葉が返ってきた。

「いや、ほかと同じふつうのチンゲンサイですよ」

とくに誇張してチンゲンサイをほめたつもりはなかった。ただし正直に言えば、中国野菜に力を入れているという情報が頭にあったため、品種や栽培方法が一般と違うのではないかとの思い込みがあったのも事実だ。ところが予想に反し、西川さんの口から出たのは「ほかと同じ」という言葉だった。

画像1)中国野菜

西川ファームが育ててきた中国野菜

確かめたほうがいいと思い、取材の前に家で炒めて食べてみた。結論は西川さんが指摘した通り。新鮮でおいしいが、ふつうのチンゲンサイだった。なぜ魅力的に見えたのかを考え、改めて店に行って気付いたのは陳列方法だった。他のスーパーと比べ、とりわけ野菜を丁寧に棚に並べているのだ。

陳列の仕方で、こうも印象が違うのだろうか。だがより心に残ったのは、西川さんの率直な反応だ。「中国野菜農家の3代目」という枠の中だけで、質問しないほうがいいのではないか。そう考えながら、取材に向かった。

西川さんは現在、32歳。7ヘクタール弱の畑で、さまざまな野菜を育てている。中華料理店の要望に応え、祖父の時代に中国野菜を育て始め、それが農場の代名詞にもなっていた。西川さんを中心に農場を切り盛りするようになったのが5年前。取材でわかったのは、イメージとは違う営農の姿だった。

画像2)西川裕幸さん

西川裕幸さん

ふつうの野菜に栽培品目をシフト

西川ファームが育てている中国野菜は、チンゲンサイやミニチンゲンサイ、チンゲンサイと似た品種の広東白菜苗など。ほかにニンジンやブロッコリー、コマツナなど一般的な野菜も幅広く栽培している。

中国野菜と一般的な野菜の栽培比率はどうなっているのだろうか。その点をたずねると、西川さんは「ふつうの野菜が6~7割」と答えた。

父親の時代は違った。栽培品目のほとんどは中華料理に使う野菜で、売り先は中華料理店か、中華料理店を主な販路に持つ野菜の卸会社などだった。だが西川さんが大学を卒業し、種苗会社での1年間の研修を経て就農したころから、育てる野菜の種類と売り先が少しずつ変化していった。

きっかけの一つは、西川さんの就農と前後して、中国野菜の重要な販路だった卸会社が経営破綻したことにある。卸が取引していた中華料理店とじかに契約できた例もあるが、すべてをカバーするのは難しかった。

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