多くの企業が撤退してしまう「農業参入」
太陽グリーンエナジーは東証1部上場の化学メーカー、太陽ホールディングスの子会社で、事業の柱は太陽光発電。2015年に人工光型の植物工場によるベビーリーフの栽培をスタートさせ、ハウスでのイチゴやメロンの生産、さらにワイン用ブドウの栽培に進出してきた。
ここで太陽グリーンエナジーの農業事業について詳細に立ち入る前に、企業参入に関する過去の取材について触れておこう。筆者はこれまでさまざまな企業の農業関連ビジネスの失敗例を取材してきた。
ある大手メーカーはトマトの大型の栽培ハウスを建てたものの、栽培を安定させることができずに撤退した。野菜やコメの栽培に挑んだ外食チェーンは、利益を出せずに事業を大幅に縮小した。農業法人と組んで野菜の加工を始めたが、やはり黒字化に成功せず、断念したメーカーもある。
さまざまな例を取材して感じたのは、本業でどれだけ優れたノウハウを持っていても、農業に生かして利益を出すのは簡単ではないということだ。

太陽グリーンエナジーが栽培したイチゴ
では同社はなぜ農業を始めたのか。荒神さんによると「食料問題が国際的に大きなテーマになるという問題意識があった」という。背景にあるのは地球温暖化などによる農産物生産の不安定化や、世界人口の増加による需要の増大だ。その結果、農業分野のビジネスチャンスが拡大すると考えた。
第1弾として植物工場を選んだのは、企業の間で当時、植物工場を手がけるのが盛んになっていたからだ。太陽ホールディングスの取引先のメーカーがそのための設備を販売していたことも、事業を始めるきっかけになった。
参入から7年が過ぎたいま、農業のことをどう考えているのだろうか。荒神さんにたずねると「農業は本当に難しい。結果が出るのに6~7年かかることもある」という答えが返ってきた。最初に始めた植物工場に関して最近、ようやく収益の改善に手応えを感じるようになってきたという。
これはとても大事なポイントだ。農業で失敗した企業の中には、栽培や販売のノウハウをじっくり高めようとせず、早々と撤退を決めた例が少なくない。太陽グリーンエナジーはその点、何が収益向上の要になるかを時間をかけて探ってきた。農業に関わる企業にとって大切な姿勢だろう。

ワイン用に育てているブドウの木
栽培技術の向上が収益を改善したわけ
では太陽グリーンエナジーの農業事業の中身を詳しく見てみよう。