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熱狂的に応援してくれるリピーターをつくるには 「愛」がキーワードのブランディング

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

熱狂的に応援してくれるリピーターをつくるには 「愛」がキーワードのブランディング

スマート農業の技術開発など、農業関連のビジネスが盛んになっている。彼らを取材していてときに感じるのは、「厳しい状況にある農業に貢献したい」という思いだ。だが農家のブランディングを手がけるTUMMY(タミー、東京都渋谷区)代表の阿部成美(あべ・なるみ)さんは「農家を助けたいと思ってやっているわけではない」と話す。この言葉の真意はどこにあるのだろう。

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なぜ京大卒広告代理店勤務から農業関連サービス立ち上げにいたったのか

最初に触れておくと、阿部さんは農家を大切に思っていないわけではない。むしろ逆。だがそれを「助ける」という言葉で表現したくないのだ。

タミーは設立が2019年。農家との意見交換を通して営農のコンセプトを明確にし、農産物を購入する顧客へのアピール方法やホームページづくりを提案するなど、ブランディング全般を手がけている。このとき重視しているのは、たんに農産物を売るのではなく、顧客に「体験」を届けるという点だ。

原点は学生時代の経験にある。フードシステムに興味を持ち、京大農学部に進んだ阿部さんは、農家との交流を通して二つの気づきを得る。

一つは、食品ロスの原因になる規格外の野菜に抱いた印象だ。先が二股になった大根を見て、「かわいい」と感じたのだ。スーパーに並んでいる形のそろった野菜よりも、阿部さんの目にはこちらのほうが魅力的に映った。ものごとに新たな意味を見いだそうとする姿勢を得るきっかけになった。

農家を訪ねる阿部成美さん

もう一つは、農家の人間的な魅力への気づきだ。都会で既存の枠組みの中で暮らしている人びとと比べ、農家はよほど自分の力で生きているように見える。にもかかわらず、阿部さんが出会った農家は「とても謙虚で、自分が何ものかに生かされているというスタンスの人たちだった」のだ。

なぜ彼らは謙虚なのだろう。その疑問を突き詰めるうち、阿部さんは「思い通りにならない大自然と対峙(たいじ)していると、自分は地球に生きているちっぽけな存在だと思うようになるのではないか」との考えにいたる。

「経済合理性を追求した結果、必ずしも幸せに生きていない都会の生活者に、農業の埋もれた魅力を伝えたい」。この思いが、起業の出発点になった。それが「都会人が心の豊かさを得るきっかけになる」と考えたのだ。

大学を卒業すると、まず大手広告代理店に就職した。事象を多面的にとらえ、独自の解釈をほどこすスキルを身につけたかったからだ。期待していた通り、広告代理店での仕事は農家をブランディングしたいという目標に真っすぐに結びついた。4年半の勤務を経て独立し、満を持してタミーを設立した。

買う人に「ときめく感情」を提供

では実例を通してブランディングの意味を考えてみよう。取り上げるのは、上野養豚(長崎県大村市)の依頼で阿部さんが手がけた仕事だ。

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