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「耕さない畑」は本当に可能なのか、不耕起栽培の方法を聞いた

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

「耕さない畑」は本当に可能なのか、不耕起栽培の方法を聞いた

農耕文明という言葉があるように、農業にとって「耕す」ことはずっと当たり前のことと考えられてきた。ところが最近、地球環境問題などを背景に「耕さない」農業が注目を集めている。耕運しなくても作物は育つのか。不耕起栽培に挑戦している農業法人、なないろ畑(神奈川県大和市)を取材した。

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炭素の放出を抑える不耕起栽培

なないろ畑は大和市と神奈川県座間市、長野県辰野町で合わせて3ヘクタール強の農場を運営している。栽培品目はさまざまな野菜やコメ、ブルーベリーなど。農薬や化学肥料を使わない有機栽培で育てている。

収入には三つの柱がある。一つは「サポート会員」が払う1万円の年会費。彼らは憩いや学びの場として農場に集い、栽培や出荷などの作業を手伝う。もう一つは「野菜会員」が毎月払う農産物の購入代金だ。

サポート会員と野菜会員は、いずれも主に地域住民で構成されている。CSA(コミュニティー・サポーテッド・アグリカルチャー、地域支援型農業)と呼ばれ、欧米などで盛んになっている都市型の営農スタイルだ。

収入の三つ目の柱は、一般の消費者に野菜を販売して得る売り上げだ。大和市の畑の傍らで直売所を運営しているほか、東急田園都市線のたまプラーザ駅(横浜市)の近くで開かれるマルシェなどにも出店している。

サポート会員

サポート会員たちの作業の様子(神奈川県座間市)

不耕起栽培は、大和市にある約0.2ヘクタールの畑で2021年に始めた。栽培している品目はトマトやナス、ケール、ピーマン、ブロッコリー、ルッコラ、ニンジン、パクチーなど多種多様。座間市の畑はふつうに耕しており、収量や品質で違いが出るかどうかを確かめるのを当面の目標にしている。

同社の取締役で、農場を運営している畑中達生(はたなか・みちお)さんは「不耕起栽培に前々から興味があった。耕さないことで微生物を殺さず、より環境に調和した形で作物を育てることができる」と意義を強調する。

不耕起栽培は農家にとって、いくつかの利点がある。まず耕さないので、トラクターを走らせる燃料代が要らなくなり、コストの低減につながる。耕運に費やす作業時間を省くこともできる。土を掘り返さないので、肥沃(ひよく)な表土が風雨で失われるのを防ぐこともできると指摘されている。

とくに最近注目を集めているのが、大気中への炭素の放出を抑制する効果だ。微生物やその死骸、腐植、植物の根など土の中にある有機物は、土をかき混ぜることで分解が進み、炭素を放出する。不耕起栽培はそれを回避できるため、脱炭素を進める国際的な潮流に沿う農法と言われている。

一方、日本を含め、多くの国で田畑を耕すのがいまも一般的であることが示すように、耕運にももちろん意義がある。最もイメージしやすいのは、硬い土を粉砕することで、作物の根が張りやすい環境をつくる点だろう。雑草ごと土をかき混ぜることで、雑草が繁茂するのを防ぐのにも役立つ。

日本ではまだ珍しい不耕起栽培を、なないろ畑はどのように実践しているのか。雑草との向き合い方を軸に栽培方法を見てみよう。

ケール

なないろ畑が不耕起の畑で育てたケール(神奈川県大和市)

不耕起栽培の方法

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