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続く燃料の高騰、肥料の値上がり。難局をどう乗り切るか【現役農家の緊急座談会#1】

西田 栄喜

ライター:

続く燃料の高騰、肥料の値上がり。難局をどう乗り切るか【現役農家の緊急座談会#1】

依然として高止まりが続く、肥料や燃料。農家を取り巻く状況が厳しさを増す中、これから生き残っていくためにはどうするべきなのでしょうか。今回は、こうした逆境との向き合い方をテーマに、大規模稲作農家、施設園芸野菜農家、都市型農家、小規模野菜農家がそれぞれの立場からクロストーク。大変と嘆くだけではなく、これを機会に自分たちができることなどについて意見を交わしました。

参加メンバーはこちら

たけもと農場代表 竹本彰吾(たけもと・しょうご)さん
39歳。石川県能美市在住。
大型稲作農家(50ヘクタール)。JA出荷のほか、ネット販売にも力を入れる。イタリア米、スペイン米などの変わった品種も育てている。

山ノ上農園代表 山ノ上慎吾(やまのうえ・しんご)さん
37歳。宮崎県宮崎市在住。
JA出荷を主とするキュウリ農家。家族経営。自らロジカルファーミングゴリラと語るスマート農業の先駆者。

鴨志田農園代表 鴨志田純(かもしだ・じゅん)さん
36歳。東京都三鷹市在住。
都市型農業を営み、主に野菜セットを直売。コンポストアドバイザーとして教室も開催している。

筆者:菜園生活風来(ふうらい)代表 西田栄喜(にした・えいき)
53歳。石川県能美市在住。
自称日本一小さい農家。家族経営の少量多品種栽培で直売を行っている。

高騰している実感と実情

西田(筆者)

今回のテーマは「燃料、資材費高騰に対し、農家としてどう向き合うか」です。まず、それぞれ感じている影響について聞いていきたいと思います。
米作りは秋に燃料をいっぱい使いますが、今シーズンはまださほどではありませんでした。ただ今後、燃料の高止まりが続けば、今年の秋には打撃を食らうなって印象はあります。肥料価格は感覚的に昨対比15%以上は上がっています。年間全体で肥料代が500万円ぐらいなので、かなり大きな負担になります。

竹本さん

たけもと農場HP

たけもと農場ホームページ

うちでは全て、地域の資源をペアリングして作った堆肥(たいひ)を使っているので、肥料価格の高騰についてはそこまで大きな影響は出てないです。ただ輸送コストがどんどん高くなってきました。またパーライトやバーミキュライトなど購入するものがあるのですが、その価格も2割ほど上がってきた実感があります。

鴨志田さん

燃料費が高騰している話の前に、コロナ禍の影響で前作から販売量が伸びず、キュウリの買い取り単価も下がっているというのがあります。例年、全国的に供給が少なくなる12月が一番利益を出せる月なんですが、昨年はまさかの赤字でした。そんな中、10アールあたり年間100万円ぐらいだった燃料費が、昨年は130万円ぐらいに膨らみました。そんなこともあり、なんとか燃料費を抑えようとギリギリを攻めた結果、1カ所で病気を出してしまいました。

山ノ上さん

西田

すでに影響が出ていることや、これから懸念されることはさまざまですが、ほとんどの地域、作物で打撃を受けることは間違いないですね。サービス業出身の私としては原価計算は大切だと思っています。原価率が低ければ材料費高騰の影響も少ないし、原価率が高ければ影響が大きいので。ただ農業の場合は生産量も一定ではないし、買い取り価格も相場で変わる。また転作奨励金や補助金などもあって、他産業にはない算出の難しさもありますね。このあたりも資材、燃料費高騰の問題が見えにくい原因の一つではないかと思ってます。ここからは、それぞれの対策について伺っていきましょう。

実践している対策

たけもと農場ではスマート農業の実験もしています。現在はスマート田植え機と呼ばれる可変施肥田植え機を使っていて、これには田植えしながら土壌診断をして、施肥量を調整する機能が搭載されています。
肥料代が2割上がったからといって軒並み肥料を2割減らしたら、減収はまぬがれないと考えるでしょう。ですが、この可変施肥田植え機で施肥量が2割減っても収量は例年と同じでした。こういった技術の導入は効果的だと実感しています。

竹本さん

うちではCSA(※)的な取り組みをしていて、年間3万円と6万円の野菜セットのコースを前払いで販売しています。これにより年度初めに120万ほどの資金が集まり、資材購入の場面でも助かっています。また、圃場(ほじょう)が都市の中にあるので、栽培教室やイベント、生ゴミ堆肥の活動など体験型コンテンツで付加価値を付けて販売するよう心がけています。そこからリピーターになってもらうこともあります。都市型で農地面積は増やせないので、これから一層、ここに力を入れたいと思っています。

※「Community Supported Agriculture」の略称で、日本では「地域支援型農業」と訳される。

鴨志田さん

鴨志田農園インスタ

鴨志田農園インスタグラム

農業の場合、販売が好調だからって急に50%増産するなんてことができない世界。なのである意味あきらめが肝心で、今ある環境でどう生き残るかという思いは、みんなデフォルトで持ってるような感じはしますよね。

竹本さん

うちでは環境制御に力を入れています。ハウスに設置した環境測定器を利用して、温度、湿度、CO2濃度、日射量、外気温から地温までデータを細かく分析してるんですが、それを応用することで肥料を減らしたり、燃料を減らしたりすることができるのではないかと考えてます。また野菜の買い取り価格が安い時期は逆に収量を減らすなど、コントロールの精度を上げていきたいと思っています。

山ノ上さん

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未来への展望

西田

これまで頼りきりだった輸入肥料、燃料、資材の高騰は手痛いですが、考えようによっては、これまでコスト的に合わないからと目が向けられてこなかった国内の資源が注目されるチャンスかも、とも思ってます。それでは最後に未来の展望について皆さんはどのように考えていますか?
今、家で勃発してるのが親子間闘争。これまで親父がいろいろな肥料を試してて、その年すごく当たって収量が取れたり、品質が良くなったりしたら、その肥料で固定になるんですよ。ただ、たまたまその年の気候が良かったりすることもあります。なのにその肥料を変えたりやめたりしようとすると「経験がないお前が何を言う」と頭ごなしにやられる。でも肥料高騰の中、成分は同じで安いものを選んでもいいんじゃないかという話ができるようになったりしているので、これまでの慣例を見直すキッカケになると実感しています。

また、稲刈り後に土にすき込んだ稲わらの分解には窒素分が必要なので、窒素が不足して稲の初期成長が阻害され、なおさら肥料をあげないといけないという悪循環も分かってきました。その対策をすることで肥料代を減らせたりします。そういったことも土壌分析して数値化することで説得力も出てきますので、スマート化を進めていきたいとも思います。

竹本さん

竹本さんの話と同じで、私もピンチをチャンスに捉えられないかと。
最近、とある事情でコンポストの材料となる落ち葉が手に入らなくなってしまったんですが、「助けてください」って情報をインスタで発信したところ、近くのNPOで落ち葉が大量に余っているということでもらってきました。こういった情報を出すこと一つでも、資材の入手先や費用など見直せる部分がまだあるんだと気づきました。

あと、生ゴミコンポストも推進していきたいです。現在日本では、生ゴミを焼却処分するのに莫大な燃料費がかかっています。今回のことをキッカケに、人々の目が少しでも向けられればと思ってます。

鴨志田さん

個人的にはとことん勉強するしかないなっていうのが正直なところです。物理の基礎の勉強をこの1年やってきて、一つ一つの物事を理解していくと、いかに無駄な事をやってきたかが徐々に見えてきたんです。肥料や燃料を使わなくていいところにも使ってきたんだと。

今、施設園芸はコントロールしやすいということで、ロックウールやココピートを使った養液栽培が主流になりつつあるんです。ただ僕達みたいな規模だとコスト的に難しいので、土耕栽培なんですよね。そんな土耕栽培のリスクやメリットを数値化することで最大限にポテンシャルを引き出していきたいです。

また、SNSなどで情報発信することも立派なスマート農業だと思っています。農家だからこそできる情報発信をしていきたいです。

山ノ上さん

アグリミュージックレディオ

山ノ上さんがプロデューサーをつとめるポッドキャスト番組

西田

実践者の言葉、それぞれ重みがありました。国の対策も必要だと思いますが、個人的にできることをやるのが大切ですね。コンポストとスマート農業のコラボなど、数値的裏付けがあれば広がり方もまた違ってくると感じました。ピンチをチャンスにと軽々しくは言えませんが、今回話を聞いてとても心強く感じました。

たけもと農場ホームページ

鴨志田農園インスタグラム

山ノ上慎吾さんが中心となり配信しているポッドキャスト・アグリミュージックレディオ

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