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農業いいかも! 2人の若者が“お手伝い”で知った職業としての魅力

連載企画:若者の農業回帰

農業いいかも! 2人の若者が“お手伝い”で知った職業としての魅力

見知らぬ土地での農業体験を通じて、職業としての魅力を伝える試みが全国各地で始まりました。東京・大阪から若者2人がやって来たのは、石川県の米農家「たけもと農場」(能美市)。4月18日から1週間、住み込みで農作業や商品の梱包を手伝いました。職業としての農業の魅力を発見してもらおうと、農業バイトと旅を掛け合わせたマッチングサービス「おてつたび」と産直通販サイト「食べチョク」とのコラボによって実現した企画「食べチョクおてつたび」。滞在最終日を迎えた現場を直撃しました。

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米農家の10代目、農業をなりたい職業のナンバーワンに

さわやかな青いTシャツがトレードマーク。たけもと農場代表の竹本彰吾(たけもと・しょうご)さんは、石川県能美市で江戸時代から続く米農家の10代目です。白山のふもとに広がる50ヘクタールの圃場(ほじょう)で、家族4人と社員4人が、米、大麦、大豆の生産に従事。祖父の代から継続する土づくりで地力を高めて多品種の米を栽培し、自らの代からは国産イタリア米の生産も開始しました。

「農業をなりたい職業ナンバーワンに」をスローガンに掲げる竹本さんは、若手生産者のロールモデルとしても注目される存在です。おてつたびのサービスが始まる以前から農業体験を受け入れており、今回の企画でも県外からの若者が初めて農作業を体験する場をつくってくれました。

「潜在的に農業に興味がある人はたくさんいると思います。農業研修を受ける自信がなくても、収穫体験よりは一歩深い農作業のお手伝いを通して職業としてありかもと思ってもらえたらいいですね」と竹本さん。今回の体験では、あえて田植えや稲刈りなどのメジャーな農作業ではなく、田植えに向けた育苗、直販品の出荷・梱包作業を手伝ってもらうことにしました。まいた種から芽を出す稲の力を特等席で体感してほしいとの願いからです。

観光を学ぶ大学生「地域との関わりが深い農業をよく知りたい」

吉田開(よしだ・かい)さん(21歳)は、東京在住の大学3年生。地域の人とふれ合える「おてつたび」は、学生の間で人気のある旅のスタイル。将来的に地域振興の仕事につきたいと考えていることもあり、農業体験に参加しました。
「農業は地域との関わりが深い職業だと思います。今回は身近だけれどよく知らないお米の生産現場を見たくて、たけもと農場に応募しました」と吉田さん。この1週間で、育苗、ハウスの設営、田植え、出荷する米の袋詰め作業などを体験しました。

「農業は朝が早いとか、体力的にきついとか、大変さを聞かされることが多かったけど、外で体を動かすと無限に力が湧いてくるし、楽しく働ける環境があると思いました」(吉田さん)

従業員の仕事ぶりにも刺激を受けたと言います。「ノルマがあるわけではないのに、一人ひとりが仕事をきっちりこなして、大きな農場を少数精鋭でまわしているのはすごい」と話してくれました。

人生の転機 ぼんやりと興味のあった職業を確かめに

もう一人の参加者・松林貴大(まつばやし・たかひろ)さん(30歳)は、大阪に住む休職中の社会人。これからの人生を考え始めたとき、心のどこかでやりたいと思っていた農業が目に留まりました。
「旅が好きなので、住み込みでお手伝いさせてもらいながら、地域、家族、従業員の方と交流できることが魅力でした。観光では味わえない体験です」(松林さん)

出身地の佐賀県も米どころとして有名ですが、せっかくなら別の地域で農業を見てみたいと、石川県のたけもと農場を希望したそう。「この1週間は、すべてが新鮮でした。田植えはよく見る光景ですが、それ以外の仕事を知ることができましたし、産地や品種、作る人による味の違いもわかるようになった気がします」

そう話す松林さんに特に印象的だったことを聞いてみると、「従業員のみなさんが、他の人の動きも見ながら、自ら判断して動いていること。こういうチームワークの形があることも勉強になりました」と語ってくれました。

農業を体験したことは、これからの人生の糧になる

多品種の米を直販するたけもと農場には、全国から多様な内容の注文が入ります。農業体験最終日の4月25日には、出荷する直前の精米、計量、袋詰め作業を行いました。2人は竹本さんの手さばきを参考にしながら、真剣な面持ちで梱包作業を進めていました。

一連の作業を終え、竹本さんは「2人とも熱量が高くて積極的なので、だんだん作業の手が慣れて頼もしい感じになってきました」と総評。

農業体験を振り返り、「苗を満杯に積んだ軽トラを運転するのが楽しかった。苗の成長は本当にかわいいの一言です」と吉田さん。一方の松林さんは「どれも楽しくて一番はつけられないけど、一つ上げるなら袋詰め作業に慣れてスピードに乗ってきたとき。農業の大変さと楽しさのバランスは、働いてみないとわからない感覚です」と語ってくれました。

吉田さんは今後について、大学卒業後に地元の福島県へ戻り、地域創生に携わりたいと考えています。そのためには、地域の基盤である農業の知識や経験が必要。大学を1年間休学して、全国各地の農業現場をめぐるそうです。

松林さんは、今回の農業体験をきっかけに、就農も視野に入れて、人とのつながりを大事にしながら次のステップを模索していくとのこと。

竹本さんは、それぞれの道を歩んでいく2人へ、こうエールを送りました。「21歳と30歳は人生の曲がり道です。僕の経験上でも、心がぐらぐらしたり、この後どうなるのかと考える時期。ぜひ、さまざまな場所を訪れていろいろな人と交流して、自分の考えを構築してもらえたらと思います」

2人が参加した農業体験は、農林水産省の補助事業を活用した「農業の魅力発信コンソーシアム」の一環。今年4月から1年間、「食べチョク」生産者と地域・農業に関心を寄せる若者をマッチングする農業体験「食べチョクおてつたび」を実施します。このほか、同コンソーシアムでは、マイナビ農業を含む民間7社が集結し、皆さまに職業としての農業の魅力を捉えていただける機会を創出しています。

次回の連載「若者の農業回帰」では、農業をビジネスとしてとらえて成功している方や野心を抱いて他業種から農家に転身を遂げた方など、就農を検討している皆さまの参考になる先輩生産者らのサクセスストーリーをお届けする予定です。

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