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農業の島だから持続可能! 国際人が考えるエコビレッジ構想とは?

農業の島だから持続可能! 国際人が考えるエコビレッジ構想とは?

全国の農場を渡り歩いているフリーランス農家のコバマツです。今回は鹿児島県、沖永良部(おきのえらぶ)島にやってきています。この島で、世界70カ国を渡り歩いた末に、日本に食料もエネルギーも自給できるエコビレッジを作りたいという男性と出会いました。そのエコビレッジを作るために選んだのは農業が基幹産業の沖永良部島。持続可能なコミュニティーを作るために必要な農業の役割とは? 食料供給以外の農業の可能性とは? いろいろと聞いてきました。

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島の農業の課題解決に挑戦!

今回も引き続き、沖永良部島に滞在しています。
沖永良部島は鹿児島県の離島で、鹿児島市から550キロほど南にあります。島には和泊(わどまり)町と知名(ちな)町があり、 2町合わせて広さは約94平方キロ、人口約1万2000人が暮らしています。基幹産業は、夏は観光業、そして冬は農業です。

沖永良部の海もめちゃきれい

沖永良部島では農業など島の産業の担い手不足解消のために「特定地域づくり事業協同組合制度」を活用しています。前回の記事ではえらぶ島づくり事業協同組合の事務局長を務める金城真幸(きんじょう・まさゆき)さんに事業についてお話を聞きました。

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そのタダモノではない雰囲気に、思わず根掘り葉掘り聞いてみたところ、実は金城さん自身も移住者で、島に来るまでは世界中を飛び回る仕事をしていたそうです。

世界中を見てきた金城さんが、地域のさまざまな課題解決の方法としてたどり着いた一つの構想が、持続可能なコミュニティー「エコビレッジ」を作るということ。

なぜ、世界から日本の島に目を向けたのか。金城さんが思い描くエコビレッジって? 詳しく聞いてみました。

■金城真幸さんプロフィール

金城真幸さんプロフィール写真 えらぶ島づくり事業協同組合事務局長。神奈川県出身。学校卒業後20年間、旅行会社、自衛隊の後方支援事業などの仕事で世界70カ国を渡り歩き、社会人生活はほぼ海外。2017年5月より総務省の地域おこし協力隊制度を活用し、沖永良部島に移住。2020年3月まで和泊町役場で集落支援、古民家改修、移住者支援、観光による地域活性化や農家支援に取り組んできた。現在は島の人材不足の事業者に対して必要な時期に人材確保ができる特定地域づくり事業協同組合制度を活用し、事業者と働き手のマッチングを行っている。

地域おこし協力隊を経て、気づいた島の農業の課題

コバマツ

金城さん、元は地域おこし協力隊だったんですよね! 任期中はどんなことをしていたんですか?
任期中は、空き家改修プロジェクトの支援や、移住体験ツアー、サップ体験、洞窟ツアーなどを企画していましたね。農業とはあまり接点がなかったんです。

金城さん

海のアクティビティーを考えたり

洞窟ツアーを企画。前職の旅行会社の経験を生かして島の魅力を伝える活動を多くしてきたそうです

地域の空き家改修もしていました

コバマツ

幅広く活躍していたんですね!
農業はどんなきっかけで、関心を持つようになっていったのでしょうか?
きっかけは2018年に、ネットニュースで「農家に働きに来る外国人実習生が逃げてしまう島」と取り上げられたことですね。それから、農家にどんな課題があるのか、自分の足で訪問して実際にヒアリングし始めたんです。

金城さん

コバマツ

沖永良部には、農繁期は100人近い外国人実習生が来るそうですね! でも失踪しちゃうという問題があったとは……。
実際に農家を訪問してみると、「実習生とのコミュニケーションがきちんと取れていない」とか、「失踪してしまわないか心配だ」という思いを抱えながら、実習生を受け入れていたんです。そこで、フィリピンやベトナムの大学と、インターンシップ制度を活用して、人材不足解消につながる取り組みができないかと考えていたんですが、うまく進まなくて……。そんな中で、別な方法はないかと探していたときに、特定地域づくり事業協同組合制度を見つけて、導入に至りました。

金城さん

日々、農家とのコミュニケーションを大切にする金城さん

コバマツ

実際に農家を訪問することで、リアルな課題が浮き彫りになってきたんですね。
この制度を導入するからこそ解決できると感じる課題はありますか?
島の農繁期は10月から4月の間で、スポットで人手が必要になるんですが、夏になると今度はホテルや観光業に人手が必要になります。農業だけではなく、他の産業の人手不足解消にもつながるんです。そして、それぞれの繁忙期を掛け合わせたら、通年仕事がある仕組みが作れるだけではなく、働きに来る人も、農業だけではなくいろいろな仕事をここで経験できるので、リフレッシュにもなる働き方にもつながると思うんです。

金城さん

コバマツ

農業のスポットの仕事だけだったら一定期間しか滞在できないけど、通年で仕事があったら地域に人が定着しますし、農業以外の二次産業、三次産業も支える仕組みになりますね!
この島だけではなくて、今後この制度を活用して農業の人手不足解消に取り組む地域も増えてくると思っています。

金城さん

世界70カ国を巡り、たどり着いたエコビレッジの構想

課題先進地の日本で、沖永良部島を選んだワケ

コバマツ

今は島の課題解決に向けて挑戦中ですが、20年近く海外でお仕事をしていたんですよね!
もともと、日本の社会が苦手で……。旅行会社や自衛隊の後方支援の仕事をしていて世界70カ国、いろんな国を訪れました。社会人になってからはほとんど海外で過ごしていましたね。

金城さん

スリランカでは要人との仕事も担当

アラブでのお仕事の様子

コバマツ

そこからどうして苦手だと感じていた日本、しかも沖永良部島にたどりついたんですか?
自分の安住の地を探し求めていたんですけど、そんなものはどこにもなくて。どこの地域に行っても地域ごとに何かしらの課題はあると感じていたんです。
課題がある中でも、東南アジアの発展途上国の人たちの暮らしが、自分の目にはすごく豊かな暮らしに映りました。お金がなくても物を分け合ったり、助け合う暮らしをしていて、すごく人間らしい暮らしだなって。逆に、文化が成熟している先進国の方が、競争意識が高く、殺伐とした生活をしているように感じて……。そんな、自分が世界を巡って「良いと思った暮らし」を実現できるようなエコビレッジを作ることができればと思い、沖永良部島にやってきました。

金城さん

コバマツ

いろいろ見てきて、自分が豊かだと感じる暮らしができる場所を作ろうと思って帰ってきたんですね! そのまま海外でやろうとは思わなかったんですか?
最初はタイとか、東南アジアの地域を考えていたんですけど、日本の方が課題先進地だなと感じたんです。日本は世界の中でも少子高齢化率1位だし、地方も人口減少で産業の担い手不足など課題が山積みなので、日本を選びました。
長く海外で生活していて逆に日本のことを知らなかったので、日本の現状を肌で感じながら活動したいとも思い、エコビレッジを作りたいと思い立ったタイミングで帰ってきました。

金城さん

コバマツ

沖永良部を選んだ決め手は何だったんですか?
農業が基幹産業であること、観光地化されていないコンパクトな島であること、あとは、島の人たちの気質が真面目というのも選ぶきっかけかな。

金城さん

コバマツ

コバマツもこの島を訪れて感じたのが、チェーン店がほとんどなくて、島の商店や事業所で物やサービスが回っているなということです。小さなコミュニティーで経済が回っている点もエコビレッジを作るには適していそうですね。

持続可能なコミュニティー、エコビレッジの構想とは?

コバマツ

いよいよ聞いちゃいますが、金城さんが思い描くエコビレッジってどんなものですか?
食料もエネルギーも島で自給するような、持続可能な暮らしができる地域づくりをしたいと考えています。お金のいらないコミュニティーを作れたらなって。皆がやりたいことをやって、物と物、物とサービスを交換できるような……。

金城さん

コバマツ

金城さんが発展途上国で見た、分け与える生活を実現できるコミュニティーですね。
人の暮らしの身近に自然がある小さい島だからこそできることだなと思っています。そのためには、一次産業である農業が基幹産業として安定している必要があると考えています。
例えば、農業がない地域でなんらかの理由で食料が入ってこないという状況になったらどうなると思いますか?

金城さん

コバマツ

そうですね……。
食料がないと、当然食べるものがなくて困りますよね。商店は売るものがなくなるし、飲食店もサービスが提供できないし。
農業以外の仕事にも影響して、それに関わる人も暮らしていけなくなりますよね。
深く考えると、農業って本当に大切な産業だなぁ……。
沖永良部島の基幹産業は農業だけど、ほとんど島外に出荷する作物ばかりを作っています。逆に、いろんな地域から野菜が入ってきている。今後は、島でいろんな種類の作物が作れるような取り組みもしていけたらいいなと考えています。

金城さん

コバマツ

今、燃料費が高くなっていますし、食料も値上げ続き。生産者も世界情勢の影響で資材や生産コストが上がるということもありますから、島外から仕入れる野菜が高くなる可能性がありますよね。島で食料やエネルギーを自給できるエコビレッジの構想は今後必要になってくるかもしれませんね。
ただ、それをやるにしても、人が必要。だから、特定地域づくり事業で、多様な人材に島に来てもらって、島の農業を含めた産業を支えてもらえる仕組みづくりをしているんです。

金城さん

コバマツ

そこにつながってくるんですね! 「お金が必要ない暮らし」というのは難しいかもしれませんが、組合の事業を活用していろいろな仕事に挑戦したり、自分の得意なことを生かしてなりわいを生み出したりしていくことで、金城さんの構想が実現していきそう! なにより、農業を含めた、島の産業を守ることができますね!
コンパクトな地方の島だからこそ、僕自身いろんなことに挑戦できるし、来てくれた人にも挑戦できる機会を作ることができると思っています。今後は、そんなエコビレッジがこの島をモデルに、日本に、そして世界中にできていったらいいなと考えています。

金城さん

コンパクトな地域だからこそ、生活に必要なあらゆるモノやサービスもその島で自給自足できる。それが実現できる場所が安住の地になるのではないかと感じました。
そのためにも島の農業や他の産業を守ることが必要。えらぶ島づくり事業協同組合の事業を活用してマルチワークで農業に関わるなど、いろんな形で農業に関わることで島の産業を守ることにつながるのではないでしょうか。

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