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「竹害」を「竹財」に! SDGsの優等生、竹を地域資源にする方法

林 ぶんこ

ライター:

「竹害」を「竹財」に! SDGsの優等生、竹を地域資源にする方法

厄介者扱いされる放置竹林を地域資源へと生まれ変わらせ、伐採した竹をさまざまな方法で利用することを試みる熊本市北区の株式会社竹組。代表の園田光祥(そのだ・みつよし)さんに、循環する資源としての竹の利用法を伺いました。

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コロナ禍で主力としていた竹炭の売り上げを失う

竹のついた名前を息子に命名してしまうほど竹好きな園田さんが、ミカン農家を営む傍ら、竹林整備の仕事に乗り出したのは2017年。熊本地震のボランティアとして被災地区の竹林整備を手伝ったことがきっかけでした。

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2019年に熊本市北区に株式会社竹組を設立し、竹林整備事業を開始したミカン農家の園田光祥(そのだ・みつよし)さん。今や「竹害」とまで言われ、全国で厄介者扱いされる放置竹林の現状とその対策について、園田さんに話を伺いました。

竹に携わる仕事を本格的に立ち上げたいと2019年に株式会社竹組を設立。法人組織にした理由は、伐採した竹を竹炭加工した商品を年間120トン買い取ってくれていた大口取引先の存在があったからなのだそう。

ところがコロナ禍でその取引先が事業を縮小することになり、竹炭を買い取ってもらえない運びになります。「法人化したとたん120トン、売り上げにして約9000万円のお得意さんを失ってしまったんです」と園田さんは苦笑い。

しかし、捨てる神あれば拾う神あり。竹炭の代わりに竹の発酵肥料をやってみないかという話が新たな取引先とともに持ち上がり、ピンチの園田さんを救うことになります。

竹の発酵肥料生産を開始

竹の発酵肥料とは、粉状に粉砕した竹を密封し発酵させたもの。発酵することで竹が持つ乳酸菌がパワーアップし、それを土に混ぜることで土中の栄養分が植物に吸収されやすくなるとされています。窒素やリン酸などの成分はなく、肥料というよりは有機土壌改良剤ですが、園田さんは竹の発酵肥料と呼んでいます。

県内にある肥料メーカーからの依頼を受け、園田さんは2022年の春から竹の発酵肥料作りを開始。取材時には1袋1立方メートル、約250キロの竹の発酵肥料がたくさん竹組の敷地内に積み上げられていました。

1カ月発酵させた竹の発酵肥料の状態を確認する園田さん。発酵物にありがちなイヤなにおいは全くしません

土壌改良に効果があるとされ、畑にまけば作物の生育がよくなるという竹の発酵肥料は、有機・無農薬栽培の農家から人気があり、最近その需要が高まっているとのこと。園田さん自身も今年から自分のミカン栽培に使用し、その効果を実証する予定でいます。

1カ月発酵させたという竹の発酵肥料からは、発酵物にありがちなキツイにおいは全くせず、こうじのような甘いにおいがします。竹には消臭効果があり、生ゴミを肥料化する時に気になるにおいなども和らげてくれる効果があるともいわれています。

1カ月発酵させた状態の竹の発酵肥料

竹酢液と竹炭

昨年までは年間120トンの竹炭を製造していた竹組の敷地内には、炭の製造工程で発生する煙を冷却することでできる竹酢(ちくさく)液も貯蔵されています。竹酢液には動物が嫌がる独特のにおいがあり、害獣対策に効果があるのだとか。

防除にも効果があり、園田さんも防除剤として自分の畑で使い、毎回その効果を実感しているのだそう。他にも肌に塗って虫よけにしたり、入浴剤として使用したり、農作物以外にもさまざまな用途で使える竹酢液。竹炭とともに今後は竹酢液の販売にも力を入れていきたいと園田さんは計画しています。

竹炭も以前のように竹炭として販売するだけでなく、食べる竹炭として「デトックスサプリメント」などの商品化へ向けた研究を現在外部機関とともに行っているとのこと。「大口取引先を失ったからといって竹炭で失敗したとは思っていません。逆に新しい取引先が増え、デトックスサプリメントなどになり得る竹炭の可能性にも気付かせてもらいました。これからが本番です」と園田さん。

製造途中の竹酢液

竹チップとタケノコ産業

細かく砕いてチップ状にすれば、地面にまくことでイノシシなどがひづめの間にささくれが入るのを嫌がり、動物よけにも効果があるとされる竹。

園田さんのところではタケノコをイノシシから守るために、管理を任された竹林には竹チップをまいています。「それに防草効果もあるので、竹チップをまいておけば草刈りの手間も省けますしね」と園田さん。

竹チップ

管理を任された竹林では春になれば竹組でタケノコ掘りを行い、市場に出荷したり食品に加工したりすることで収益化しています。ゆくゆくはタケノコ加工を軸とした食品加工業務ラインを整備し、雇用を生み出し、地域の資源としていきたいと園田さんは考えています。

竹組で収穫したタケノコ(画像提供:園田光祥)

持続可能な素材としての「竹」

園田さんが管理を任されている竹林は現在約8万坪。そのうちの立地のよい1万2000坪余りを竹の遊具を設置したキャンプ場にしようと園田さんは今動いています。

「近頃は建築資材としても竹は注目を浴びています。ウッドデッキ代わりに竹を使い、竹で作ったジャングルジムやブランコなども設置したい。純粋に竹の資材としてのよさが実感できるキャンプ場を作りたいと思っています」(園田さん)

竹のすべり台(画像提供:園田光祥)

竹のブランコ(画像提供:園田光祥)

資材として役目を終えた後は、竹炭に加工することもできます。園田さんいわく「使ってよし、後処理にも困らない」竹は循環する資源として、とても貴重な存在。写真のような竹のすべり台やブランコも、大人3人ほどで半日もあれば組み立てられるのだとか。

「何もしなくても1年で15メートル以上に育つ竹は資源として最強です。タケノコはおいしいし、紙や布も作れるし、建築資材にだってなります。こんなに万能でサステイナブルな資源が他にあるでしょうか? なのに多数の竹林保有者さんは、お金を払って竹を切ってもらいたいと思っていますから、大きくやりすぎない限りまず赤字にはならないはずです。竹林整備はお金も稼げて竹材も手に入る、一石二鳥の仕事だと僕は思っています」(園田さん)

放置すれば害、生かせば資源。SDGsの優等生の竹は、手をかければかけるほどに資源としての利用法が増していきます。「今後も竹害ではなく竹財として竹に向き合っていきたい!」と力強く語る園田さんです。

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