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放置竹林は資源の宝庫! 名人に学ぶ賢い竹の使い道

伊藤 雄大

ライター:

連載企画:凄い!農家のアイデア集

放置竹林は資源の宝庫! 名人に学ぶ賢い竹の使い道

食べきれないくらいのタケノコをとったとしても、年を経るごとに増えていく竹。ご近所さんに「野菜栽培の支柱にするので竹を切らせてくれませんか」とお願いしても誰も断らない。それどころか、逆に感謝されるくらい。荒れた竹林にはみんな困っているようだ。裏を返せば、竹林は無尽蔵の資源。もっといろんなことに使えないだろうか。兵庫県篠山(ささやま)市で竹をじゃんじゃん使う活動をする岸田万穂(きしだ・まほ)さんに竹を扱うノウハウについて伺った。

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竹を使ってバス停を制作

竹林といえば暗くて陰うつなイメージがあったが、篠山市福住(ふくすみ)地区にある岸田さんたちが整備する竹林に入ると、竹のあいだから優しく差し込む光がじつに気持ちいい。光が当たるようになった地面からはチャノキやツバキが生えてきた。
「まだ上のほうは手付かずなんですが、ここは整備していい感じになりましたね」と岸田さんが言う。

岸田さんたちが伐採をして、整備した竹林は明るく、爽やか

地域おこし協力隊の隊員となり篠山市に木工作家として移住してきた神奈川県生まれの岸田さん。
近年、各地で荒れた竹林が問題となっているが、困っているのは篠山市も同じだった。そんな放置竹林を有効活用するプロジェクトを行っていくうちに、すっかり「竹の人」と認識され、「竹活動」を中心に、家具の修繕や、木工作品制作に、忙しい毎日を送っているところだ。

竹活動の一環として、岸田さんたちがつくった篠山市福住地区のバス停(写真提供:岸田万穂)

名人に学ぶ竹の基礎知識

一緒に竹林を歩いていると「この竹すごく大きいですけど、去年伸びたものですね」と岸田さん。
なんでわかるんですか!?
「節が白い粉を吹いてますよね。これが1年目の証拠」
去年タケノコだったなんて思えないほど立派な孟宗竹(もうそうちく)の足元には、その名残であるタケノコの皮があった。あらためてすさまじい生命力だ。

上の節が黒いのが2年以上たったもので、下が1年目。どちらも節にある輪が1つなので孟宗竹

「1年生の竹よりも、節が茶色い、2年以上たったもののほうが硬くて、丈夫なんです。竹を扱ううえでのコツです」
竹を上手に扱うには、竹について知っておいた方がいいことがいろいろありそうだ。

竹の種類と見分け方

竹にもいくつかの品種がある。有名どころは、孟宗竹、真竹(まだけ)、淡竹(はちく)の3種類。

・孟宗竹:日本でもっとも太くなる竹で、大きく立派なタケノコがとれる。見分け方は、竹の節にある輪が1つ。
・真竹:孟宗竹よりも細くて小ぶりで、竹の節にある輪が2つある。よくしなるうえ、青々と美しいことから、竹細工によく使われる。
・淡竹:真竹と似ており、節の輪も2つ。表面に粉をふき、白く見える。

このうち岸田さんの住む地域には孟宗竹がもっとも多く、次に真竹。淡竹はあまりないそう。
岸田さんの場合、丈夫さを求められる部分には孟宗竹を使い、繊細な加工や装飾的に使う場合は真竹を使う。

竹は冬こそ“切り旬”!?

「それから、竹は休眠している冬のあいだが“切り旬” だと言われています」と岸田さん。
木材用語でいうと木が成長を休み、水分が少なくなる「伐採にふさわしい時期」を「切り旬」というらしい。竹の場合は冬。冬に切った乾いた竹は割れにくいうえに、材がよくしまっていて使い勝手がよいのだそう。
最も避けた方がいいのが、竹が旺盛に水を吸い上げている春〜夏。
「あとでお見せする“竹で作ったハウス”ですが、そのうちの1つは夏切りの孟宗竹を使ったために潰れてしまいました……」
切り旬というのは、それだけ大事なことらしい。

ちなみに、竹の数を減らしたい場合は、切り旬に、次の写真の手前の竹のようにあえて1メートルほどの高さで切るといいそうだ。春になって目覚めた竹は、すでに切られていることに気づかず、てっぺんまで水を行き渡らせようと水分と栄養を勢いよく吸い上げる。ところが、吸い上げた水分によって竹が腐り、いずれは手で抜けるくらいに枯れてしまうという仕組み。また、春に出てくるタケノコの数も少なくなり、竹が減っていくそうだ。

手前の白くなった竹が、冬のあいだに1メートルに切ったことによって枯れたもの

実践! トンネルアーチパイプを竹で作る

竹に詳しくなったところで、いよいよ竹を扱う実践。
私、夏の葉物で一稼ぎしようと、葉物を害虫から守るために防虫ネットのトンネルを作ろうと思っていたところだった。トンネル用のアーチパイプの値段はまとめ買いしても1本50円以上してバカにならないが、近所の畑で割竹をアーチパイプにしているのを見かけた。竹でできるなら、材料費はタダ。
岸田さん、ケチな私の思いをくんでくれて、竹の割り方を実演してくださった。
必要な道具は金づちと、ホームセンターなどで売っている竹割り器。竹割り器は鋳物と真ちゅう製があるが、岸田さんによるとより丈夫で長持ちするのは真ちゅう製のほうらしい。
短い竹で早速やってもらった。

まずは、竹割り器を竹にあてがい、金づちでたたく。何度かたたけば、竹割り器が食い込む

ある程度食い込んだら、竹割り器の持ち手を持って、竹を地面にたたきつける。地面は硬い方がいいので、畑でやる場合は平べったい石などを敷く

割れた竹。もう少し長ければ、そのままアーチパイプに使える。もっと細くしたい場合は、ナタなどで割る

竹製ハウス、その名も「バンブーグリーンハウス」

「竹割りを応用すると、ハウスだって作れるんですよ」と岸田さん。
じつは、農家と一緒に竹で育苗用のハウスを作ったこともある。長い割り竹を使えばハウスのアーチパイプだって作ることもできるし、骨組みだって丈夫な孟宗竹で組める。
この竹ハウスは小林広英氏(京都大学大学院地球環境学堂教授)が研究、設計したもので「バンブーグリーンハウス(通称BGH)」と名付けられている。
本来なら何十万もするハウスが、孟宗竹約100本、骨組みの建設費用はたったの1万8600円。ビニールやそれを張るための金具代は別途かかるが、それでも安い!
じつはちょうどこの冬、1坪のパイプハウスで育てた花壇苗が思いのほか売れて、大きなハウスを作って稼ぎたいと思っていた私には朗報!

岸田さんたちが作ったバンブーグリーンハウス。骨材もアーチパイプも孟宗竹でできている(写真提供:岸田万穂)

資材代もめちゃくちゃ安いうえに竹のハウスは丈夫。パイプと違って、竹はしなりやすく、風の力を受け流す。強い浜風が吹く渥美半島の農家もちょっとしたハウスなら「パイプよりも竹のほうが丈夫」というくらいだ。

建設中の竹ハウスの骨組み。長さ9メートルほどのハウスなら、3人で3日いっぱいかければ組み立てられるそう

アーチパイプの代わりになる割竹

竹のハウスは「いい雰囲気」

しかし、そんな岸田さんのバンブーグリーンハウスも、昨年のすさまじい台風にはさすがに参ったようで、周囲のパイプハウスと同じく倒壊してしまったそうだ。
現在は春頃の再建に向けて頑張っているところだ。
竹のハウスは育苗ハウスとしての機能もパイプハウスに引けを取らないし、竹製ならではの「いい雰囲気」が人を呼び寄せ、バーベキューなどのイベントにも活用できるという。

取材の翌日。さっそく、近所の人に「竹を切らせてほしい」と頼むと「ありがたい。どうせなら全部切ってほしいくらいや」とお礼を言われ、さらに伐採がはかどるようにと栄養ドリンクまで持たせてくれたのだった。
竹を上手に活用すれば私のような零細農家でもお金をほとんどかけずに、トンネル栽培や、冬の育苗など、できることの幅が広がり、当然、お金も稼げる。そして、なぜか近所の人もすごく喜んでくれる。仲良くなれる。この無尽蔵の資源を使って、じゃんじゃん稼ぐぞ!
 

バンブーグリーンハウスの作り方は下記HPにあるマニュアルに詳しく載っています
BambooGreen-HouseProject

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