台風がきてもビクともしない! 頑丈なピーマン棚
今年の夏に開かれた直売所現地圃場(ほじょう)見学会での一幕。
「しっかりしとる」「こりゃええわ、うちもやってみよ」「これなら台風でも飛ばされへんはずや」直売所メンバーの先輩方が、中川増一(なかがわ・ますいち)さん(68歳)のピーマンの棚を揺すりながら口々に褒める。
私も触ってみると確かに頑丈。いろんな方向に強めに揺すってみてもほとんど動かない。
中川さんは20アールの畑で毎年約25品目の野菜をつくって直売所に出荷している人だ。そのうち30メートルのウネ3本分でつくるピーマンは、毎日1500円ほどを、5月から11月まで長く稼いでくれる。売り上げの目標が1日3000円以上の中川さんにとって売り上げの基本となる品目だ。
「直売所に通うための毎日のガソリン代くらいは確保できとるやろう」と中川さんは冗談めかして笑うが、「長期的に見たら、同じ面積でトマトをつくるよりも稼げると思うとる」が本心に違いない。ピーマンは収穫後最低3日間は新鮮なままなので売れるまで出し続けられるうえ、病気や害虫の被害にあいにくく無農薬でつくりやすいそう。
そんないいとこずくめのピーマンだが、初冬まで長くとろうとすると台風の季節を乗り越えないといけない。大風で棚が揺れて落果したり、枝が折れてしまっては大損をする。だから、棚は丈夫に、というわけだ。
「今年の8月に来た台風10号でキュウリやゴーヤのアーチパイプは倒れてしもたけど、このピーマンの棚はビクともせんかった。作るのも難しくない」と、中川さん。
そんな自慢のピーマン棚。作り方と、使い方を教えてもらった。
必要な材料
中川さんの棚に使う主な材料は、以下のとおり。
- コの字型パイプ(直管パイプで自作。作り方はあとで紹介)
- 直管パイプ(16ミリ径・長)
- 直管パイプ(16ミリ径・短)
- パイプ用バンド(セッターとも呼ばれる)
- マイカ線(黒いビニールバンド)
直管パイプはホームセンターで6メートル約500円、パイプ用バンドは10本約300円、マイカ線は200メートル約1500円。ネット通販でも購入できる。
組み立て方法
下図のように組み立てる。
コの字型パイプは約2メートルおきに設置し、上には棟木(むなぎ)のように直管パイプ(長)を渡して、地際から約50センチのところに梁(はり)のように直管パイプ(短)を取り付ける。マイカ線を上に2本、下に4本結んで完成。パイプ同士はパイプ用バンドで固定する。
この棚の最大のポイントは、コの字型パイプ。3本のパイプを鳥居型に組んでも同じような形にはなるが、コの字型パイプは一体になっているので、より揺れに強く、棚自体も頑丈になる。
また、このやり方では誘引もしない。主枝は、上下に合計6本張ったマイカ線に枝を乗せていくだけ。果実が地面につかないように、枝がなるべく重ならないように、枝をさばいていく。
初心者にもおすすめ! パイプを曲げる便利道具「パイプベンダー」
「コの字型パイプ」は直管パイプを使って作る。
「直管パイプを曲げ加工してくれるところもあるけど、高くつくんや」(中川さん)。そこで、ホームセンターに売っている直径16ミリの直管パイプを、グラインダーなどで好みの長さに切り分けて、パイプベンダーなる道具で曲げて作っている。
中川さんのパイプベンダーは、油圧式なので力は必要ない。直径16ミリの直管パイプも、それ以上に太いパイプだって、ラクに曲げられる。これがあれば、好みの太さのキュウリ用アーチパイプやトンネルアーチ、頑張れば簡単なハウスだって作れる優れもの。中川さんが使う油圧式は2万円ほどするが、油圧式でないものなら1000円台からネットで売っている。
パイプをコの字型にしたら、先っぽを石頭(せっとう)ハンマーや金づちで叩いて平たくし、地面に刺さりやすいように加工する。
ナスやダイズにもコの字型パイプが活躍
こうして作ったコの字型パイプは、ピーマンのほかにも、同じような方法でパプリカや、ナスの棚や、枝豆の倒伏防止にも活躍中。いずれも台風の被害を受けることなく順調に育っている。
今年もそろそろ台風シーズンが到来。昨年のような台風はまっぴらごめんだが、まだ間に合うダイズなど、中川さんのやり方をまねして、万全に備えたい!