資源を有効活用し、サスティナブルな社会の実現を目指す 建築資材メーカーの新たな挑戦とは
大建工業株式会社は1945年の創業以来、77年にわたって建築資材メーカーとして機能性の高い素材や建材で日本の住宅や公共・商業施設を支えてきました。木質の床やドア、収納といった内装や建材だけでなく、いままで利用されていなかった資源を有効活用した素材の開発・製造にも力を入れています。
なかでも建築解体木材を主原料にするインシュレーションボードは、発売から約65年と歴史ある製品。解体した家屋から出た木材や使われなかった端材を繊維状にほぐした後、板状に固めて作るインシュレーションボードは、建築現場の養生材や畳の芯材などとして使われています。資源を余すことなく有効に使い、終戦直後から日本の復興や高度経済成長を支えてきた製品といえるでしょう。
サスティナブルな社会の実現のために生みだされたこのような製品を、大建工業では数多く開発・製造しています。
このような環境に配慮した製品に注力する理由は、その企業理念にあります。大建工業は、ビジョンを「私たちは、豊かな社会と環境の調和を第一に考え、期待を超える新たな価値を提供し、あらゆる人に愛される企業であり続けます」と掲げています。また2025年を目標に見据えた長期ビジョン「GP25(Grow/Glow Plan 25)」では「サスティナブルな社会の実現」「木材の総合活用」 などをテーマとしてさらなる挑戦を続けています。
今回ご紹介する「グロウアース」もまた、GP25の取り組み、そして大建工業の想いから生まれた製品なのです。
多彩な魅力と可能性を秘めたグロウアースに、大手企業も熱視線
「大建工業が培ってきた木質ファイバーの技術を活かし、緑化・土壌改良のために開発したのが『DWファイバー』、この技術を農業・園芸に活かすため発展させ開発したのが『グロウアース』です。大建工業の創業時にあった、木材を資源として有効活用し社会に貢献するという想いを、まさに体現している製品といえます」。
そう話すのは、秋葉裕太(あきば・ゆうた)さん。開発営業部で、菜園事業の担当をしています。秋葉さんは、入社以来ずっと素材事業に関わってきました。
素材事業は、インシュレーションボードのように木材を活用した製品や、鉱物資源を有効活用したダイライトなどの製品を開発・提供しています。その技術を発展させ国土防災技術(株)と大建工業(株)の秋葉さんが開発したのが、2017 年に発売された『DWファイバー』。木材を粉砕処理した繊維を土の代わりに栽培用培地として使える製品です。農業や土木・造園工事に使えるほか、塩害を受けた防災林の土壌改良・再生にも役立てることができ、東日本大震災で津波被害に遭った土壌の改良にも効果があると期待されています。
そのDWファイバーで培った加工技術を応用して、新たに生まれた木質培地が『グロウアース』です。つまり、土の代わりとして使える木材でできた栽培用培地です。グロウアースと水、肥料があれば、土と同じく農業・園芸に最適な栽培環境を整えることができるのです。
「グロウアースは、当社のR&Dセンターで開発された新素材です。木材チップの形状を変えることで、植物に合わせて水はけ・水もちを変更するがことができます。親水性が高いのも特長ですね。品質も安定しており、安全性の確認も実施済みです。国産の木材チップを使っているためトレーサビリティが確保されており、原材料の出材元や加工経路も明確です。食用の作物を育てる上で大きな安心材料となりますね」と秋葉さん。
国産の木材が原料なので、安定供給も可能。海外産の農業資材のように、輸送の遅延や社会情勢などの影響を受け、必要な時に手に入らないということもありません。
「グロウアースを土の代わりに使うことで様々なメリットがある」と秋葉さんは話します。
「大建工業が目指す持続可能な社会の実現に貢献できる製品といえます。ただ弊社は、土木や農業、造園・園芸分野に進出するのは初めてで、グロウアースの展開は大きな挑戦でした。しかしさまざまな特長を理解いただき、今では農家様のみならず大手企業にも採用していただくことができました」。
「たとえば、サントリーグループが行っている全国の「天然水の森」活動から生まれた「育林材」を一部使用したグロウアースが、『本気野菜 Ready To Harvest』というテーブルハーブに採用されました。また、大和ハウス工業のミニ胡蝶蘭『COCOLAN』の培地にも採用されています。「トレーサビリティを確保した安全性」「国産木材の有効活用」といったグロウアースならではの特長はSDGsの達成にも貢献でき、CSR(企業の社会的責任)を追求する企業にとっても魅力ある製品と考えています」。
都市のすべてのオープンスペースが緑あふれる場所に変わる未来がやって来る!?
現在、秋葉さんが次のステップとして挑戦しているのは「より多くの人にグロウアースを使ってもらい、農業や園芸の楽しさを経験してもらう」ということ。実はこれこそが、秋葉さんが大建工業の新規事業であるグロウアースに精力的に関わる理由でもあるのです。
「私は地方出身で、実家から送られてくる野菜が大好きでした。東京でもおいしい野菜を食べてみたいと、自らベランダ菜園にも挑戦しましたが、都内の狭くて日当たりの悪い住宅ではうまく育たてることができませんでした。市民農園も探しましたが、都心では土地が狭く料金も高い・・・。そんなときにグロウアースが完成し『これがあれば手軽に栽培を楽しめる!』と考えました。実際、自宅で使っていますが、野菜がスクスクと育っています」。
手応えを感じた秋葉さんは、個人提案型社内ベンチャー制度に応募。見事、大建工業初となる事業化検討案として採択され、グロウアースを活用した新規事業開発に挑戦するチャンスをつかんだのです。
「グロウアースには、先ほど挙げたメリット以外にもたくさんの特長があります。土と違い手が汚れにくく、お手入れが簡単です。熱処理しているため培地からの虫の発生のリスクも低減できます。また、土は普通ゴミとして捨てることはできませんが、グロウアースは燃えるゴミとして捨てられます。なにより、土より軽い。失敗してしまっても、片付けや再チャレンジのハードルが低いのです。マンションや家庭、あるいはオフィスビルなどで野菜や植物を育てるのにこれらの特長はとても大きいと考えています」。
メリットの多いグロウアースですが、販路の拡大は容易ではありませんでした。
秋葉さんは初めに、都心のオフィスビルや学校などへぜひ使ってもらいたいと声をかけたそうです。しかし、屋上やベランダにグロウアースを使って菜園や花壇を作るのは、安全性や設計仕様の問題で実現が難しく、ことごとく断られてしまいます。
“場所の制約”という壁にぶつかった秋葉さん。そこで考え付いたのが、グロウアースという『モノ』を売り込むのではなく、園芸や栽培の楽しさという『コト』そのものを提供することでした。
「商品を提案する方向から、みんなのエコ菜園を提案する方向にシフトしました。これは、グロウアースとプランターや棚・什器、道具や苗などをセットにしたシステムで、置くだけで栽培を始められます。場所の制約をほとんど受けることがないので、導入するハードルがぐっと下がると考えました」。
実際に、その簡便さや体験の楽しさが魅力として映り、東京・⿇布のシェアオフィスビル「SNUG MINAMI-AZABU」の屋上に「ルーフトップファーム」としてシステムを設置することができました。普段なかなか緑と触れあうことのない⼈たちが⼿軽に楽しさを実感し、違う会社の⼈同⼠でこの空間を介して会話や交流が⽣まれるケースを期待しているそうです。今後は1階ベーカリーで、屋上で収穫した野菜を使用したパンの製造・販売を予定しています。街なか菜園システムで目指した「人が集い緑あふれる楽しい空間」の創出が少しずつ実現していると笑顔で秋葉さんは話します。
今後は、オフィスビル内外の緑化などにもこのシステムを提案していく予定で、さらに栽培のアドバイスやサポートといった保守つきのトータルパッケージも計画中だそうです。そこにも秋葉さんの「緑にふれて、楽しさを知ってほしい」という想いが込められています。
「世界では都市農園が注目されています。それを日本でも実現できるのが、グロウアースとみんなのエコ菜園。オフィスや建物の屋上などのオープンスペースが菜園・農園に変えられるのです。そしてグロウアースが使われることで、間伐材などの問題が解消され、資源が有効活用される。持続可能な社会の実現につながります。そんな大きな可能性を秘めているグロウアースとみんなのエコ菜園をより広め、豊かな社会になってほしいと考えています」と力強く話してくれました。
農場の畑の土の代わりとしてはもちろん、ゆくゆくはオフィスやショッピングモール、また教育の現場や介護施設、そして家庭と、様々な場所にグロウアースが広がっていくことでしょう。それと共に農業や栽培の楽しさを知る人が増えていくはず。
これからの農業、野菜作りの姿を変えるかも知れないグロウアース。興味を持った方は大建工業までお問い合わせください。
お問い合わせ先
大建工業株式会社
開発営業部 菜園事業担当
メールアドレス:info-saien@daiken.co.jp
URL:https://www.daiken.jp/eco-farm/