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電気代の値上げはまだまだ続く!? 高騰の理由と対策を解説

電気代の値上げはまだまだ続く!? 高騰の理由と対策を解説

2022年4月から、固定価格買取(FIT)制度に代わる市場変動制のFIP制度が日本でも導入されるなど、新たな収入源の一つとして農家からの期待の声も上がる太陽光発電。実際問題、今からシステムを導入して営農型太陽光発電などを始めるという経営判断は得策なのでしょうか。再生可能エネルギー(以下、再エネ)の活用や導入コストに関するコンサルなどを行っている株式会社Value(バリュー)の落合敬臣(おちあい・たかおみ)さんに意見を伺いました。

■落合敬臣さんプロフィール

2006年に環境系企業へ入社し、常務取締役などを歴任。その後IT企業にて、執行役員として脱炭素事業のBPOなどに取り組む。2021年、株式会社Value取締役に就任。同社新規事業部にて、企業のSDGsや脱炭素への取り組みを支援している。

太陽光の売電で元は取れるのか

──2012年にFIT制度が施行されて以来、加速度的に普及が広がってきた再エネですが、今年4月からは新たな売電制度(FIP制度)が導入されました。農業でも休耕地などを活用した営農型太陽光発電が再注目されていますが、今から始めたとして、十分に利益を上げていくことは可能なのでしょうか。

すでに農地やご自宅に太陽光パネルがあり、FIT制度での売電期間が満了した方や、これから太陽光発電を始めようとしている方に休耕地を貸し出すような形であれば意義はあるかもしれません。ただ、今から売電収入を目的に太陽光発電を始めるというのは、得策ではないと考えています。

太陽光発電システムをイチから導入したとしても、売電価格がおおよそ18円はないと10%程度の投資リターンも望めない。導入費用自体は、太陽光発電が普及した10年前に比べて平均2分の1ほどと安価になってはいますが、売電の単価も3分の1程度まで落ちており、利回りを得ることは非常に難しいのが実情です。そこで我々がおすすめしているのが、電力の自家消費を前提とした太陽光発電です。ローンを組むなどして先行投資をかけてでも、これを始めるメリットは大きいと思います。

参考記事:FIP制度が2022年4月スタート(経済産業省資源エネルギー庁) 

農業経営に重くのしかかる、燃料費調整額と再エネ賦課金の高騰

──太陽光発電と聞いて、真っ先に想起したのが「売電」でしたので、自家消費の方がメリットは大きいというのは意外でした。その理由が気になるところです。

主な理由は、電気料金の値上がりと、今後も高止まりする可能性が高いことです。
実際に電力を使った量に対して課される「電力量料金」の値上がりは昨今の報道にもある通りですが、特に問題なのが、これとは別に課される「燃料費調整額(※1)」と「再生可能エネルギー発電促進賦課金(※2)」(以下、再エネ賦課金)の著しい値上がりです。

電力会社からの利用明細をよく見るとわかるのですが、電気代の内訳は「基本料金+電力量料金+燃料費調整額+再エネ賦課金」の4項目からなっており、今年に入ってからの電気代値上がりは、このうち「燃料費調整額」「再エネ賦課金」の価格が高騰していることが大きな要因というわけです。電気をたくさん使う農家さんにとってはこれから先、ここでの負担が経営課題として重くのしかかってくる懸念があります。

※1 市場や為替など、外部要因によって変動する燃料費に応じて電気料金を調整する制度により課される金額。
※2 電力会社が再生可能エネルギーの買い取りにかかった費用の一部を、再エネ賦課金として消費者が負担しているもの。コストの高い再生可能エネルギーを導入しやすくなるメリットがある。


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「燃料費調整額」と「再エネ賦課金」の単価の推移。2022年6月以降の単価は予測値(同社調べ)

──なぜ今年に入って「燃料費調整額」や「再エネ賦課金」が値上がりしているのでしょう。

特に燃料費調整額の値上がりが著しく、今年2月以降急激に上昇を続けています。ちまたでは、ロシアのウクライナ侵攻に伴う経済制裁の影響と言われていますが、こうした経済情勢が燃料費調整額に反映されるのにはタイムラグがあり、有事の約3カ月後と言われています。このため、今年7月にさらなる値上げが想定されます。

我々の見立てでは7月の単価予測は3.5円ですが、さらに値上げ幅は大きくなる可能性があります。現に、5月の燃料調整単価は今年2月時点に算出した金額を大きく上回る結果となりました。火力発電に頼り切りの現状を踏まえると、燃料費調整額は今後も長期的に高止まりする可能性が高く、単価が下がる要素はないと言えるでしょう。

──昨今は燃料費や資材費の高騰に苦心する農家さんが多いですが、電気料金の負担も無視できませんね。こうした現状を受け、最近ではどんな農家さんが太陽光パネルを導入しているのでしょうか。

例えば、東北地方のあるトマト農家さんでは、未利用地22アールに太陽光発電システムを導入し、パネル下でバレイショを栽培する営農型太陽光発電を始めました。結果、200キロワットの発電出力で年間600万円ほどの電気代削減を実現したそうです。

当社が太陽光発電システムを施工させてもらった畜産農家さんでは、牛舎の屋根に太陽光パネルを取り付け、全量を自家消費に回しています。災害時のリスク対策として蓄電池も備えており、地震などによる停電が起きた場合でも搾乳機などを稼働して営農を続けられるようにもしています。

このような自家消費の場合は電力購入によって生じる「燃料費調整額」や「再エネ賦課金」を支払う必要がないというメリットが大きく、今後の値上がりに備える形で導入を決める事業者さんが増えています。

活用できる補助金や税制優遇制度

──営農型太陽光発電で自家消費することのメリットは多岐にわたりますね。ところで、これをイチから始めるとなると設置費用が心配です。

現在は太陽光発電の普及に伴い、高品質な太陽光パネルなどが安価で導入できるようになりました。それでも、日本製パネルの相場は個人宅で1枚当たり平均20万円ほどですので、仮に20アールの圃場(ほじょう)に300枚のパネルを設けるのであれば数千万円かかるのが一般的です。ただ、太陽光発電や蓄電池の導入にあたっては、審査さえ通ればソーラーローンの融資を頭金なしで受けられるほか、自治体によってさまざまな補助金もあります。

参考記事:再エネに利用できる助成金・補助金(株式会社Value) 

──低金利かつ返済期間の長いローンや各種補助金があるのも魅力ですね。このほかに、太陽光発電を始める上でのポイントがありましたら教えてください。

税制的な優遇も受けられます。太陽光発電を導入する際に有効な節税となるのが「中小企業等経営強化法」という税制優遇制度で、資本金1億円以下の法人または個人事業主は、設置にかかった費用を全額経費として申告することが可能な「即時償却」か、太陽光発電を開始した年度から導入費用の10%を差し引くことができる「節税控除」のどちらかを選ぶことができます。

脱炭素に向けた国や自治体の後押しが進む今こそ、再エネの自家消費を始めるに最適な時期だと考えています。まさに、エネルギーを買う時代から作る時代に。それによって、今後の農業経営はかなり楽になってくると思います。

参考サイト:経営サポート「経営強化法による支援」(中小企業庁) 

太陽光発電の導入に関するご相談、問い合わせはこちら(株式会社Value)

※ 記事は執筆者及び取材対象者の見解であり、マイナビ農業の公式見解を示すものではありません。

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