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自分たちの食料は自分たちで作る! 農地を守るための大規模営農

林 ぶんこ

ライター:

自分たちの食料は自分たちで作る! 農地を守るための大規模営農

岩手県北上市で870ヘクタールもの農地を耕作する国内有数の大規模農場、株式会社西部開発農産。郷土の農業を守るため、離農者が耕作をやめた農地を引き受け続けている。その中には条件の悪い農地もあり、課題は山積みだ。社長の照井勝也(てるい・かつや)さんに、地域の農業への思いと大規模化への展望について聞いた。

自分たちの食料は自分たちで作る

「農業はなくてはならない産業です。人間の生きる力の源を生産しているわけですから、自分たちの食料は自分たちで作っていきたいのです」と開口一番、照井さんはそう言った。

照井勝也さん。1993年入社、2012年より代表取締役社長。北上市農政審議会委員、北上雇用対策協議会委員も務める

「農林水産省によれば2020年度の日本の食料自給率は37%(カロリーベース)であり、輸入が継続可能ならこの数字も別段問題ではないでしょう。しかし、何かの理由で輸入が止まった場合どうするのか? そこを考えておかなければ。自分たちの食料を自分たちで作るためには、農地を保全し、農業を守っていくことが必要です。そのために何をすべきか、自分には何ができるのか、知恵を絞り取り組んでいます」(照井さん)

ユニフォームには「Earth to Table(大地から食卓へ)」の企業コンセプト

西部開発農産の成り立ち

西部開発農産は1986年、照井さんの父である先代が北上市西部の和賀地区で、米の生産調整による転作の受託組織として法人化をした。設立時の受託面積は小麦50ヘクタール、大豆3ヘクタールだった。初期の頃は生産技術が乏しくなかなか生産性も上がらなかったという。

作業方法を工夫し、質の良い作物が収穫できるようになるにつれ、「西部開発農産に管理を任せたい」という農家が増え、圃場(ほじょう)が増えていった。照井さんが入社した1993年には150ヘクタール前後にまで増えていた。

現在、同社が管理する圃場は870ヘクタール。大規模化を考えていたわけではないが、離農する農家の圃場を引き受け続けるうちに大規模化していったとのこと。また近年、周辺の農家の高齢化による離農がいっそう進み、毎年約20ヘクタールずつ管理する圃場は増えている。

北上の豊かな自然があるからこそ、西部開発農産がここまで大きくなれた。周囲に感謝し、どんな土地でも引き受けなさい、との先代の教えを忠実に守り、照井さんはなるべく断らずにどんな圃場でも受けているそうだ。

奥羽山脈を望む西部開発農産の小麦畑。ここだけで150ヘクタールある

大規模化で見えてきた課題

大規模化に伴って、社員も増え、人材の課題も感じるようになってきた照井さん。同社には現在、社員とパート含め110人の従業員がいる。「農業は組織力。それぞれが知恵を出し合って、いかに生産効率を上げていけるかに会社の未来がかかっています」と力がこもる。

会社の組織力を上げていくためには、優秀な社員が定着できる魅力ある職場環境に整えていくことが必要だ。

西部開発農産では、新しいアイデアを生まれやすくするために、社員のやる気を引き出す成果主義の評価制度を採用。日々の仕事は栽培品目ごとに担当を固定する従来のやり方と、時期によって仕事内容も人数も臨機応変に組み替える作業班制にしている。社員がさまざまな現場を経験することで、チームとしてのスキルアップを図るなど、組織力を上げるためのさまざまな取り組みが行われている。

若い社員の人材育成に注力するほか、高齢者を雇用し地域の活性化も図っている。「一法人としての利益を追求するだけでなく、北上市をけん引する大規模農業法人としての社会的役割も果たしていかなければならない」という照井さんの思いからだ。

社会見学で同社を訪れ、トラクターやコンバインの大きさに驚く小学生(画像提供:西部開発農産)

「圃場は年々増える。人も雇わなきゃならない。日々課題は積み上がっていきます。しかしそこを考えていかない限り、明日はないんです。現状維持は衰退の入口だと思っていますから、常にどうやって効率的に生産を上げていくかを考えています。行政制度、科学、化学、ITなど常に新しいものを研究し、最善の方法を編み出していかないと。毎日が情報収集、勉強、そして実践の繰り返しですね」(照井さん)

さらなる高収益化・効率化に向けて

西部開発農産では870ヘクタールの圃場のうち、田で米を330ヘクタール、畑で大豆330ヘクタール・小麦とソバ160ヘクタールずつの3品目を3年4毛作で作付けし、作付延べ面積980ヘクタールでここ数年は利用してきた。だがコロナ禍で外食産業が打撃を受け、米やソバの価格が低迷していると照井さんは言う。

「大規模農家は価格交渉に有利で、ある程度はこちらの希望する価格で売買ができます。ですが、それにしても今のコロナ禍の影響はひどい。うちも一つの品目に偏らないように、基幹作物は米・大豆・小麦・ソバの4本柱にして、野菜や畜産、加工に直販、直営焼肉レストランまで事業の多角化をしていますが、米価の下落を受けて、第5の柱となる作物の栽培を考えています」

収益化や効率化が一企業にとって重要なのは言うまでもないが、照井さんは地域農業にとっての重要性についてもこのように語る。

「米価の下落が続けば、離農がまた進むでしょう。条件の悪い土地でもなるべく引き受け、ふるさとの農地を守っていくためには、農地の集約化と基盤整備に注力し、いっそうの効率化に励むしかありません。国もこういうところをバックアップして、もっと農業政策に予算を回してくれればいいんですけどね」

さらなる効率化を目指し、照井さんはさまざまな方法を試している。実際にどんなことを行っているのか、次回は同社が実践しているスマート農業を紹介する。

画面中央の建物群が西部開発農産。防風林の奥には機械車庫など倉庫群が続く

西部開発農産のスマート農業とは
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